漫画を描く時の基本「描き文字」で印象を操作する方法&表現力を高めるあしらいの技術を解説!【漫画のプロが全力で教える「描き文字」の基本】

「描き文字」を使って、文字だけで印象は操作できる

ここでは文字の形や色による印象の違いを学んでいきます。ここの内容も『音の大小、強弱を描き分けるコツ』同様に、漫画を描く人にとっては一般的なことですが、復習を兼ねて読んでみてください。ついて解説します。どれも描き文字を学ぶうえでは基本となることですが、とても重要なことなのでここで改めて確認していきましょう。

ひらがな、カタカナ

ひらがなは曲線で構成されているものが多いため、読者に柔らかい、やさしいといった印象を与えます。一方カタカナは直線的で角が立っている文字も多いため、鋭い、尖った印象を与えます。そのため同じ言葉でもひらがなとカタカナで描き分けることによって、伝わるニュアンスを変えることができます。こうした点を踏まえたうえで、自分が表現したいシーンにはどのような文字がふさわしいのかを考えていきましょう。

【ひらがなの印象】丸い、柔らかい、コミカル、ユーモラス、深刻さがないなど。

【カタカナの印象】尖っている、鋭い、強い、硬質、シリアスなど。

黒い文字、白い文字

描き文字が黒い場合は画面全体に重い印象を与え、白い場合は軽い印象を与えます。白い文字でもフチを太くしてギザギザにすることで、軽さのなかに強いイメージや圧のある印象を与えます。また文字内に流線を描き入れることで、動きを加えることもできます。

なお大きくて黒い文字が画面を支配してしまうと、キャラクターなどの本来目立たせたい絵の印象が弱くなってしまう場合があります。文字を黒くするのか白くするのかは、画面全体のバランスも考えながら決めていきましょう。

【黒い文字の印象】重い、強い、圧があるなど。

【白い文字の印象】軽い、突き抜けている、澄んでいるなど。

太い文字、細い文字

文字の太さによっても印象は変わります。

【太い文字の印象】存在感がある、大げさ、どっしりとしている、ボリューム感がある、大きい、強い、低音、まろやか、丸みがある、頼りがいがあるなど。

【細い文字の印象】存在感がない、さりげない、小さい、弱い、高音、尖っている、鋭い、(ギザギザさせることで)耳障り・耳をつんざく、頼りないなど。

丸い文字、角張った文字、尖った文字

丸い文字、角張った文字、尖った文字の印象は、それぞれ図形の円、三角形、四角形の印象に近いものがあります。

【角張った文字の印象】力強い、どっしりとしている、存在感があるなど。

【丸い文字の印象】やさしい、親しみがある、まろやか、おかしみがあるなど。

【尖った文字の印象】きつい、耳障り、鋭いなど。

グラデーションの文字

グラデーションを入れると文字の中に動きや流れ、強弱がつきます。これによって、音がどの方向に向かっているか、どの方向に集中もしくは広がっているのかといったことも表現できます。

グラデーションは薄い部分から濃い部分に向かって存在感が増していきます。これをうまく利用することで流れの方向を示しましょう。

表現力を高めるあしらいの技術

基礎知識を駆使しつつ、さらにひと工夫を加えることで、これまで描いてきた描き文字をより効果的なものにしていきましょう。

質感を加える

文字内にさまざまな質感を加えることで、伝えたい印象をさらに高めることができます。ここでは3種類を例に挙げます。みなさんも自由に工夫して、オリジナリティあふれる描き文字を発明しましょう。

【弾力の質感を加えた描き文字】曲線を多用し、柔らかで弾力のある感じを演出する。

【テカリの質感を加えた描き文字】テカリによってゼリーのような質感を表現。

【水っぽさの質感を加えた描き文字】水はねやしずくのイメージを盛り込む。

ブレやかすれ、勢い線を足す

震動・振動や車の走行音、激突・衝突音、アクションシーンで剣と剣がぶつかったときの音などを描き文字で表現する場合、ブレやかすれ、勢い線を足すことで画面全体に揺れやスピード感を与えることができます。

音が飛び出すイメージで扇形に広がる形にして、ブレ、かすれ、勢い線もその流れに合わせて入れる。

流線・集中線をかぶせる、スパッタリングを加える

人間が走る音やなにかが爆発する音の描き文字、またはなにかが光っているときの描き文字に、流線・集中線を加えたりスパッタリング(しぶきを加えること)を行えば、画面全体に勢いが増し、動きを与えることもできます。

流線をかぶせた『ドカーン』

集中線をかぶせた『ダッ』

スパッタリングを加えた『ドシュッ』

『漫画のプロが全力で教える「描き文字」の基本』はこんな人におすすめ!

・描き文字を上手にかきたい! ・描き文字のレパートリーを増やしたい! ・シチュエーション別のかき分け方法を知りたい
と感じている方には大変おすすめな本です。

文字の大きさや、字体、レイアウトなど作風やシチュエーションに合わせてえがく描き文字は、イラストではなく文字なので単純そうにみえますが、奥が深いため苦手意識を持つ方も多くいます。本書では、基本的な描き文字のかき方が分からない初心者の方、ある程度はかけるけど場面ごとのかき分けが得意ではない方、効果音のレパートリーが少なくて悩んでいる方、文字の配置やレイアウトが苦手な方などに向け、描き文字に対するさまざまなお悩みポイントをおさえた一冊です。

漫画や同人誌をかく上で、必要不可欠なものが「描き文字」

描き文字は、キャラクターの心情や効果音などストーリーをより効果的に演出するために必要ですが、SNSなどでは描くのが難しいと言われています。そんな描き文字を東京デザイン専門学校さん協力のもと、本当に使える描き文字だけをわかりやすく丁寧に解説します!

気になる中身を少しだけご紹介!さまざまなシチュエーションがある食事のシーン!描き文字を組み合わせるだけで伝わり方が大きく変わる!?

擬音語、擬態語の多い食事シーンはひと工夫でよりリアル感を演出

食事についてはさまざまな擬音語、擬態語があります。メインビジュアルは「がつがつ」「パクパク」と、ものすごい勢いで食べている女の子の絵。この絵は一見「がつがつ」だけで成立しそうですが、「パクパク」を入れることにより、ものすごい勢いで口に食べ物を放っていることが伝わる絵になっています。また描き文字が前面に出ており人物の顔周りに置かれていますが、これにより動きの激しさが表現されています。食事はおもに口で行う動作なので、描き文字は息づかい同様、顔や口の周りに描くようにしましょう。

下の図は食べる状況に合わせて黒文字、白文字を描き分けています。「ゴクン」は液体を飲み込む音ですが、食べたい気持ちを表現する際にも使えます。「ゴ」の濁点や「ン」の一部が円形になっており、これにより読者にポジティブな印象を与えています。「チュルルルー」「ズズー」などは麺類を食べている音。「パクパク」のようにただ口に入れるのとは違い、時間的な幅のある動作なので、音引きを長めに伸ばすことでそれを表現しています。

静かなシチュエーションも「描き文字」をプラスしてもっと伝わる表現に!

描き文字をどの部分に描くかで読者が状況を理解できる

静かな状況のとき、実際は音がないわけですが、マンガではそれも描き文字で表現します。無音の状態を表す表現法のなかでも有名なのが、メインビジュアルの「シーン」ではないでしょうか。この「シーン」は静かな状況ですが、かなり大きく描かれています。それはこの絵がギャグシーンであり、そのば全体が静まりかえっていることを明確に示したいから。またこの描き文字を画面上部に描くことで、この教室に教師以外誰もいないことを読者が瞬時に理解できるようになっています。

下の図には、静寂のなかで聞こえる小さな音も掲載。小さな音を文字でも小さく描くことで、その音がわずかに聞こえるくらい静かであることを読者に伝えることができます。時計の音「カチコチカチコチ」、足音「カツーン コツーン」などが代表的な例ですが、ほかにもいろいろあると思います。また緊張して言葉が出ない状態の「カチン コチン」などは、キャラクターの緊張度に合わせた大きさで描くようにしましょう。

★文字だけで印象は操作できる!? ★デジタルツールとアナログ道具で描く描き文字 ★漫画でよく見る「ときめく」の描き文字の種類とは ★音を奏でる時に使う描き文字とは?
などなど気になるタイトルが目白押し!

本書は文字例の多さはもちろんのこと、描き文字を漫画に当て込んだ例も豊富に取り入れて解説しています。実際どのくらい描き文字は漫画の表現力を高めるのか、ストーリーの印象が変化するのかを確認しながら、読者の皆さまが自分の作品にも取り入れていただけると嬉しく思います。

【書誌情報】
『漫画のプロが全力で教える「描き文字」の基本』
著者:東京デザイン専門学校

漫画や同人誌などをかく上で、キャラクターの心情や効果音などストーリーをより効果的に演出するためには、必要不可欠な「描き文字」。文字の大きさ、字体、レイアウトなど作風やシチュエーションに合わせてえがく描き文字は、文字なのでイラストより単純そうにみえて奥が深いゆえ、苦手意識を持つ人もいます。基本的な描き文字のかき方からわからない人、ある程度はかけるけど場面ごとのかき分けが得意ではない人、効果音のレパートリーが少なくて悩んでいる人、文字の配置やレイアウトが苦手な人など、本書はそのような描き文字に対するさまざまなお悩みポイントをおさえた一冊です。

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