反則級のナイスキャスティング、岡崎体育の熱演に感動の声【どうする家康】

松本潤が徳川家康を演じ、その厳しい選択だらけの人生を描きだす大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。6月4日放送の第21回『長篠を救え!』では、長篠城の危機を救ったと伝わる英雄・鳥居強右衛門の逸話がたっぷりと描かれ、その最期の姿に涙を流す人が続出した(以下、ネタバレあり)。

『どうする家康』第21回より、武田軍に捕らえられ磔に合う鳥居強右衛門(岡崎体育)(C)NHK

■ どうする強右衛門、亀姫を思い出し…

武田と手を切って徳川方に付いた奥平信昌(白洲迅)。彼が守る長篠城は、武田勝頼(眞栄田郷敦)の軍勢に囲まれ、籠城戦を余儀なくされていた。このままでは、落城が確実。そこで、家康に直接助けを乞うために足軽の鳥居強右衛門(とりいすねえもん/岡崎体育)が岡崎に向かうと、家康の長女・亀姫(當真あみ)に偶然発見される。

岡崎までたどり着き、亀姫(當真あみ)と出会った鳥居強右衛門(岡崎体育)(C)NHK

岡崎に入った織田信長(岡田准一)から長篠を助ける約束を取りつけ、急いで城に引きかえす強右衛門だが、途中で武田軍に捕縛。「助けは来ない」と偽情報を伝えるよう命じられるも、亀姫のことを思い出して「徳川さまはすぐ参らせる。持ちこたえろ!」と自軍へ大声で呼びかけた。その後、強右衛門は城の前で磔にされるが、信昌に亀姫の素晴らしさを伝えて刑死するのだった・・・。

■ 岡崎体育は反則級のナイスキャスティング

長篠城の人々を救うために命がけの伝令(往復でなんと130km!)を果たし、武田軍の脅しに乗らずに城内の人々を鼓舞したのと引き換えに処刑された、実在の足軽・鳥居強右衛門。その活躍から「戦国版走れメロス」と呼ばれ、長篠周辺では彼にまつわるキャラクターグッズも多数作られている、郷土の誇りとも言える人物だ。

家康とも縁の深い人物なので、第22回の後半は彼にスポットが当てられた。『どう家』では単なる忠義者ではなく、周囲から「ろくでなし」と言われた男が、人のやさしさに触れたことで大勢の命を救う行動に出るという、このうえなく人間臭いヒーロー像に。このキャラクターに、胡散臭さと人の良さがほどよくミックスされたミュージシャン・岡崎体育を持ってきたのは、反則級のナイスキャスティングだった。

奥平信昌の命を受け岡崎へ送られた鳥居強右衛門(岡崎体育)(C)NHK

SNSでも「岡崎体育さんがお腹をぽてぽてしながらあの笑顔で強右衛門を演じたことで、逆にちょっとダメな男の最後のがんばりの眩しさが際立って、泣けて仕方ない」「岡崎体育という配役はあざといけど、確かに、いかにも脚に覚えがあるというキャラではこの感動はなかった」「磔の体つきも、顔つきも、鳥居強右衛門の絵や像によく似てた」などの感想が並んだ。

■ テーマソングで紅白に出場しないか?

一度は武田に魂を売って嘘を伝えるが、自分にやさしく接してくれた亀姫の手のぬくもりを思い出し、踵を返して真実を伝えた強右衛門。もし亀姫が強右衛門を邪険に扱っていたら(あるいは発見時に大きな石を落としていたら)、長篠城は陥落し、武田方に流れが変わっていた。ほんの小さな好意が、歴史の歯車を回すというバタフライ・エフェクトの面白さを、第14回の「女メロス」阿月(伊東蒼)の話に続いて感じさせた、技ありの脚本だ。

武田勢に銃口を向けられながらも自軍に呼びかける鳥居強右衛門(岡崎体育)(C)NHK

SNSでも、「亀ちゃんのやさしさが強右衛門を正気に戻したんだって思うと泣けてくる」「信玄の最高傑作たる勝頼の調略を、まだあどけない姫の柔らかな手のひらが打ち砕いたと思うと胸熱」「脅しや褒美で人の心は動かせない。忠義と亀の手の温もりを守り抜いた結末に素直にジンと来た」という感動の言葉が相次いだ。

また演じた岡崎に対しても、「今までそんなに好きと思ったことなかったけど、今初めて愛しさを感じている!」「大河ドラマの歴史にとてつもない爪痕を残していきました」「紅白出場の夢を叶えるよりも早く、大河ドラマに出て自分のキャラソン歌うの面白すぎる」「きっと次のライブは鳥居強右衛門のタオルで埋め尽くされる事であろう」などの、イジリ混じりの賞賛が寄せられた。

走って泳いでふんどし一丁になって、しかも本業のミュージシャンらしく、オリジナルテーマソング(公式インタビューいわく、監督と岡崎の共作!)まで付いてくるという、俳優・岡崎体育の代表的な役柄のひとつになることは間違いないだろう。そして酒井忠次(大森南朋)の「えびすくい」とともに、今年の紅白に出場してもらえないかと、割と本気で願っている。

『どうする家康』は、NHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアムでは夕方6時から、BS4Kは昼12時15分からの放送。6月11日の第22回『設楽原の戦い』では、徳川・織田連合軍と武田軍が正面衝突し、日本の戦のスタイルを大きく変えた運命の大戦「設楽原の戦い」が描かれる。

文/吉永美和子

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