穴水に愛され53年 レストランおかざき6月末閉店

看板メニューの特製オムライスを出す岡崎さん。6月末で創業53年の店を閉じる=穴水町大町

 「洋風カツ丼」「特製オムライス」を看板メニューに、地域の人たちに親しまれてきた穴水町大町の「レストランおかざき」が6月末で閉店する。創業から53年、ともに店を切り盛りしてきた夫に先立たれても、1人でカウンターに立ってきた岡崎由紀子さん(75)だが、年齢も考え店じまいを決めた。岡崎さんは「ここが潮時かなと。長い間やってこれたんは皆さんのおかげ」と常連客らに感謝の一皿を出している。

 1970(昭和45)年10月、岡崎さんと夫喜代志さんが大町の別の場所で「グリルおかざき」としてオープン。現住地に移転した81年に現店名に変更した。

 町内に飲食店がまだ少なかった時代、ステーキを食べられるレストランとして店は繁盛し、従業員を3人雇っていたこともあった。

 とりわけ人気だったのは、金沢市役所裏にある洋食店「グリル中村屋」で修業した喜代志さんが作る洋風カツ丼。座敷があったことから、同窓会やクラス会など宴会もたくさん開かれたという。

 20年ほど前に始めた特製オムライスは、太めのナポリタンに、トンカツかエビフライ、鶏の唐揚げのうち一つが付くセット。お得感があるワンプレート(900円)は看板メニューになった。

 町内で開催される食のイベント「穴水まいもんまつり」(北國新聞社共催)にも加盟店として毎回参加し、町特産カキのフルコースなどを提供してきた。

 県外から足を運ぶリピーターもいたが、過疎化が進み利用客は徐々に減った。7年前に喜代志さんが71歳で死去して以降も、店を守ってきた岡崎さん。2人いる子どもには継いでほしいとは言えなかった。

 そろそろ店じまいかと考えていたところに、店の隣接地で介護福祉施設を整備する計画が持ち上がり、敷地を譲ってほしいとの打診もあったことから閉店を決めた。

 開店当初から洋風カツ丼のファンだという吉岡俊宏さん(72)=中居=は「癒やしの店がなくなるのは寂しいが、お疲れさんでしたと言いたい」とねぎらい、岡崎さんは「店に来てくれる人には『ありがとう』と伝えたい。本当に感謝しかない」と話した。

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