『あまちゃん』再放送で三陸鉄道利用者3割増、まめぶ売上倍増、キョンキョン人気も再燃!

「4月の『あまちゃん』再放送開始以来、舞台となった鉄道の利用者が3割増加しています」

そう話すのは、劇中に登場した「袖ヶ浜駅」のシーンで演技指導も務めた、三陸鉄道の運行本部長・金野淳一さんだ。

4月からNHKBSプレミアムで再放送中の連続テレビ小説『あまちゃん』人気が再燃している。本作は脚本家の宮藤官九郎(52)が、故郷の東北を舞台に、小さな田舎町で海女を目指し、挫折を繰り返しながら成長するヒロイン・天野アキ(のん・29)を描いた作品。2013年4月から9月まで放送され、同年末には、同作で度々登場した驚きの方言「じぇじぇじぇ」が流行語大賞を受賞するほど、社会現象となった。

それから10年後の再放送にも関わらず、Twitterでは『#あまちゃん』が連日トレンド入りしSNSも盛り上がっている、舞台となった岩手県久慈市でも、再放送後から観光客が増えて、地域活性にも一役買っている。

「現在、のんさんの海女姿が描かれた『あまちゃん』10周年記念ラッピング列車『三陸元気!GoGo号』が運行中で問い合わせも多いです。これは『あまちゃん』とのんさんのファンたちがクラウドファンディングで資金約790万円を集めて実現した企画で、列車の出発式では、海女姿ののんさんも一緒に一番列車を見送りました。再放送により、初めて見る若い世代の方からも『見てますよ』と声をかけられ、改めて人気を感じています」(前出・金野さん)

久慈市商工観光課の播磨霞さんも言う。

「ラッピング列車に乗り、列車内で写真撮影をして、ロケ地巡りをするお客さまが多いです」

ロケ地マップで人気なのは、やはり三陸鉄道の駅。アキの祖母・夏(宮本信子)ら、海女が集まる「小袖海女センター」も観光客が多い。

また、くるみ入りの小麦粉の団子を入れて煮込んだ郷土料理「まめぶ汁」も再び人気になり、道の駅『白樺の里やまがた』では、注文が2〜3倍に増えている。

「GWには、ドラマにちなんだメニューをドラマのロケ地となった北三陸地域内13店舗で提供しました。まめぶ汁と海鮮丼のセットも大人気でした」(播磨さん)

9月には久慈市と東京で、音楽を担当した大友良英さんとのんが出演する『あまちゃん10周年スペシャルコンサート』も開催される。

「3月31日に、情報解禁をすると、チケット販売当日に、座席の半分が埋まりました。このコンサートのチケットを久慈市のふるさと納税の返礼品にすると、その分は即完売でした」(前出・播磨さん)

座席数は残りわずかだという。

「再放送は、以前も見ていた40〜60代の方と、初めて見るお子さんやお孫さんと一緒に三世代で再放送を楽しんでいるという声も多いです。ドラマの舞台となった場所への家族旅行の問い合わせも多く、久慈市近辺の宿泊施設の予約も増えています」(前出・播磨さん)

■小泉今日子のアイドル性が再評価されている

10年前は「朝ドラに男性視聴者を巻き込んだ」と話題になった『あまちゃん』だがーー。

「今回の再放送で人気が再燃しているのは、10年前はまだ子供で見ていなかった若い世代の男女が新たに注目していることが理由の一つでしょう」

と分析するのは、同志社女子大学教授で、ドラマから社会を読み解く影山貴彦教授。

「10年、20年たっても色あせない名曲と同じように、『あまちゃん』は初めて見た若い世代も感動させる朝ドラの最高傑作の一つです」

影山教授によれば、普段、朝ドラを見ないゼミの学生たちも、『あまちゃん』には魅了されているという。

「ヒロインののんさんはじめ、ベテラン女優陣の確かな演技力も見事ですが、やはり『あまちゃん』は小泉今日子さんがいなければ、成功していなかったと思います」

実際、5月20日の放送回で、アキの母で、アイドル志望だった春子こと小泉今日子(57)が歌った『潮騒のメモリー』はトレンド1位になった。SNSでも熱烈な書き込みが相次いだ。

《久しぶりに聴いて泣いちゃった》
《潮騒のメロディーはやっぱり小泉今日子! 絶対的アイドルだからこその説得力》

小泉がアイドルを目指していた春子を演じたことに大きな意味があり、ドラマの立役者なのだと影山さんは言う。

「キョンキョンは、アイドルの存在を変えたトップアイドルです。その彼女が、アイドルを目指していた春子を演じた。そして劇中で、『潮騒のメモリー』を一曲フルで歌いきったシーンは圧巻です。所作、目線、指先の一つ一つの動きまでアイドル中のアイドルです。

そして、母であり、夫との関係に悩む妻であり、宮本信子さん演じる母と葛藤する娘という“3つの顔”も演じられた。この再放送でキョンキョンの魅力が、再認識されているのでしょう」

この10年の間、小泉は女優業に加え、作家、社長、プロデュースなど幅広く活動するいっぽうで、不倫会見や社会的な発言に注目が集まり、バッシングの標的にされることもあった。

「この10年、メディアも視聴者もコロナ禍を経験し変化しています。そして『あまちゃん』の再放送。

小泉さんは、アイドルであり、女優であり、そして人間味ある一個人として丸ごと“小泉今日子”なんだと、改めて受け止める人が増えているのでしょう。『あまちゃん』再放送で小泉さんの人気が再燃することは、メディアが成熟する契機にもなっていくと思います」(前出・影山さん)

この10年で、のんは所属事務所とのトラブルを乗り越え、これから再放送される東京編には19年に麻薬取締法違反で逮捕されたピエール瀧(56)も登場する。“やらかし”た出演者のなか、小泉が「じぇじぇじぇ」な再ブレイクとなるのかーー。

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