「倉敷市内で好きなラーメンは?」と聞いたとき「ベトコンラーメン」という回答を聞いたことがありませんか。
ベトコンラーメンはモヤシなどの野菜がタップリで、一粒丸ごと揚げたニンニク、ほどよくピリ辛な味わいのスタミナ系ラーメンです。
そんなベトコンラーメンを提供するのが、倉敷市帯高にある「ベトコンラーメン 倉敷新京(しんきょう)」。
県内外から老若男女が大勢やってくる人気店です。
しかし、2020年(令和2年)に火災が発生して営業不能となってしまいました。
とてもショッキングなニュースでしたが、苦難を乗り越えて2022年(令和4年)に、新たな体制でベトコンラーメンが復活!
多くの人を魅了してやまないベトコンラーメンの魅力や、再建までの道のりなどを探っていきましょう。
ベトコンラーメン倉敷新京とは
ベトコンラーメン倉敷新京は1983年(昭和58年)に創業した老舗で、倉敷市東南部・帯高地区にあります。
店名を冠した「ベトコンラーメン」や「国士無双(こくし むそう)」といったラーメンが人気です。
そんなベトコンラーメン倉敷新京は、市内はもちろん、県内外から多くのお客がやってくるほどの人気があります。
たくさんの人を夢中にさせているベトコンラーメンや国士無双は、モヤシなどの野菜が山盛りで、ホクホクのニンニク、ちょっぴりピリ辛な風味などが楽しめるスタミナ満点ラーメンです。
また成人男性の拳よりも大きな鶏のから揚げも、多くの人を虜(トリコ)にしています。
人気の老舗・ベトコンラーメン倉敷新京ですが、2020年5月、ショッキングなニュースがファンのあいだに飛び込んできました。
火災が発生し、店舗が全焼。
営業ができなくなってしまったのです。
そんな苦難のなか、地元企業の株式会社 オーユーシステムが事業承継し、ベトコンラーメン倉敷新京を再建することになりました。
クラウドファンディングなどを実施し、多くの人の支援を得て、前店主の協力のもと2022年2月に新生・ベトコンラーメン倉敷新京が復活、営業を再開したのです。
火災から約1年8か月、見事に復活を果たしました。
さらに2022年11月には、浅口市鴨方の国道2号線沿いに二号店を出店。
帯高の本店はカウンターのみですが、鴨方店はテーブル席メインで小上がりの座敷もあり、家族連れでも訪れやすいのが特徴です。
メニュー紹介
2023年(令和5年)5月時点の情報。価格は消費税込
ベトコンラーメン倉敷新京は、事前に入口にある券売機で食券を購入する方式です。
メインメニューは、店名と同じ「ベトコンラーメン」。
ベトコンラーメンをスケールアップさせたのが、「国士無双」。
メニュー名から”最強”と思わせる凄みを感じます。
どちらのメニューも「ニンニク抜き」「辛み抜き」やミニサイズ(ベトコンラーメン 小、国士無双 ハーフ)なども選択可能です。
ニンニク・辛み以外にも、希望すれば特定の具材を抜きにできます(価格はそのまま)。
またベトコン、国士無双とも基本の醤油味のほかに、味噌味もありました。
さらにどちらも、替玉が可能です。
おもなサイドメニューとして「鶏から揚げ」「ゲソから揚げ」のほか、「ミニとりマヨ丼」「ライス」があります。
鶏から揚げのみ、小さいサイズの「ミニから」があり、1〜3個から選択可能です。
ベトコン、国士無双、各種からあげなど、主要なメニューは持ち帰りができます。
また、ベトコンラーメンの冷凍食品も販売中。
店頭やオンラインショップで買えます。
イチオシ・人気のメニュー
ベトコンラーメン倉敷新京のイチオシメニュー、人気のあるメニューを紹介します。
ベトコンラーメン
ベトコンラーメン倉敷新京の一番人気は、店名にも掲げている「ベトコンラーメン」です。
ベトコンラーメンは醤油スープ(930円)がスタンダードですが、味噌スープ(930円)もあります。
取材時は、定番の醤油を選択。
ベトコンラーメンの特徴は、タップリ山盛りの炒めモヤシ・ニラ。
そしてインパクトあるニンニクです。
ほかに具材として豚バラ肉も入っており、一味トウガラシも入っているのでほどよいピリ辛さもあります。
揚げニンニクを食べると、香ばしさとともにニンニクの風味が広がります。
そしてジャガイモのようなホクホク感とともに、少しトロッとしたような舌触りで、非常にクセになる味です。
タップリのモヤシやニラは、シャキシャキとした食感を楽しみながら、香ばしさと甘辛い味わい、豚肉の甘味、ニンニクの風味、ほんのりと感じるピリ辛さで、食が進みます。
スープは、甘辛い醤油の味わいが広がります。
そして、アッサリとした口当たりです。
そこに野菜の甘味や炒めた香ばしさ、ニンニクの風味、トウガラシの辛さなどがほどよく混じってきて、クセになる味わいに。
麺は中細で、緩やかな縮れがあります。
麺にスープがよく絡み、モッチリとした食感が野菜のシャキシャキ感などと対照的で相性が抜群!
福山市のクラタ食品製の麺です。
先代店主がさまざまな製麺所を使用した結果、たどりついたのがクラタ食品の麺だったそう。
ちなみにベトコンとは「ベスト・コンディション」の略。
ベトコンラーメンにはタップリのモヤシ・ニラとニンニク、トウガラシが入っています。
食べると元気になるようなスタミナ満点のラーメンなのが、名前の理由です。
ベトコンラーメンは具材タップリですが、メインが野菜で香ばしい味わいなので食が進み、スープもアッサリしたものなので、ペロリと平らげました。
食後は体がポカポカした感じがあり、スタミナが増強したような印象です。
国士無双
「国士無双(こくし むそう)」は、ベトコンラーメンに次ぐ人気のメニューです。
ベトコンラーメン同様に、スタンダードな醤油スープ(1,100円)と、味噌スープ(1,100円)がラインナップしています。
取材時は醤油を選択しました。
国士無双は、ベトコンラーメンより具材の量が多いのが特徴です。
ベトコンラーメンも具材が山盛りでしたが、国士無双はまさに山岳といえるほどのボリューム!
初めて注文したときは、運ばれてきて度肝を抜かしてしまいました。
ベトコンラーメンの具材は、一粒丸ごとの揚げニンニクにスライスニンニク、一味トウガラシ、豚バラ肉、モヤシ、ニラです。
いっぽう、国士無双の具材は以下のとおり。
- 一粒丸ごとの揚げニンニク
- スライスニンニク
- 一味トウガラシ
- 豚バラ肉
- モヤシ
- ニラ
- シロネギ
- キャベツ
- ハクサイ
- タケノコ
- タカノツメ
野菜の種類がとても豊富で、ヘルシーですね!
ベトコンラーメンと同じく、これらの具材が自家製醤油ダレで香ばしく炒められています。
香ばしさと甘辛い味わい、ニンニクの風味、ピリ辛感などで食が進む味です。
さらにキャベツや白菜など野菜が多いためか、野菜の甘さもベトコンラーメンより感じられておいしく感じます。
これらが醤油スープと一体になって、なんともいえない絶妙なおいしさに!
麺もベトコンラーメンと同じで、緩やかな縮れがある中細麺です。
ベトコンラーメンよりも具材の量が多いですが、国士無双も野菜がメインなので意外とスムーズに完食してしまいました。
なお国士無双もニンニク抜き(1,100円)、辛み抜き(1,100円)、ニンニク・辛み抜き(1,100円)といったメニューや、具材の量が半分のハーフサイズ(980円)をラインナップしています。
希望の具材を抜いたり減らしたりも可能(料金はそのまま)です。
鶏から揚げ
ベトコンラーメンや国士無双といったラーメンと並ぶ倉敷新京の人気名物メニューが、「鶏から揚げ」(950円)です。
鶏から揚げもベトコンラーメン、国士無双と同様に、驚くようなビジュアル。
皿には、巨大な鶏から揚げが3つも盛りつけられているのです!
とにかくインパクトは抜群!
から揚げは1個が、大人の拳より大きいほどのサイズ感。
1個でも、十分お腹が満たされそうです。
食べると、衣はサクッと軽快な食感で、とても香ばしいです。
まるで揚げおかきのような味わいで、衣だけでもおいしいと感じます。
専用スパイスを付けると、さらにおいしいです。
中のモモ肉は、プリッとしていてほどよくジューシー。
なお店舗再開後に新たに登場した「ミニから」は、名前のとおりミニサイズの鶏から揚げです。
1〜3個までを選べます(1個 100円、2個 200円、3個 300円)。
持ち帰りも可能で、持ち帰りの場合は3〜5個での販売です(3個 300円、4個 400円、5個 500円)。
ちなみに鶏のから揚げを使った新メニューとして、「ミニとりマヨ丼」(550円)もあります。
ゲソから揚げ
ベトコンラーメン倉敷新京では、鶏から揚げのほかに「ゲソから揚げ」(850円)もあります。
ゲソから揚げも、なかなか大きなサイズです。
ゲソ(イカ足)を適度なサイズにカットし、から揚げにしています。
ゲソのから揚げといえば、細長い足をそのまま揚げているイメージがありましたが、倉敷新京ではカットされているので食べやすいです。
衣は鶏から揚げと同じく、サクッと軽やかで香ばしく、揚げおかきのようなおいしさ。
ゲソは、プリプリとした弾力ある食感です。
ゲソなので鶏のから揚げよりも食べやすく、ラーメンとともに完食できました。
なお、ゲソから揚げをラーメンのスープに浸して食べてみましたが、それもおいしかったです。
ベトコンラーメンや国士無双、巨大な鶏から揚げなどで、多くのお客を熱狂させるベトコンラーメン倉敷新京。
店長の福山剛正(ふくやま たかまさ)さんへインタビューをしました。
ベトコンラーメン倉敷新京の店長・福山剛正さんへインタビュー
ベトコンラーメンや国士無双、巨大な鶏から揚げなどで、多くのお客を熱狂させるベトコンラーメン 倉敷新京(しんきょう)。
店長の福山剛正(ふくやま たかまさ)さんに話を聞きました。
1983年に愛知のベトコンラーメンの本家・新京からのれん分け
──開業の経緯について知りたい。
福山(敬称略)──
もともと創業者である赤木永三郎(あかぎ えいさぶろう)さんが、1983年(昭和58年)に創業しました。
愛知県にある「新京」の本店で修業し、のれん分けしたものです。
新京は「ベトコンラーメン」の元祖として知られています。
その後、息子の赤木奉久(あかぎ ことひさ)さんが二代目となって営業していました。
しかし2020年(令和2年)5月、火災が発生して店舗が全焼。
閉鎖を余儀なくされました。
その後、岡山市のシステム会社・株式会社 オーユーシステムが事業承継し、店舗の再建をすることになったのです。
そしてオーユーシステムが承継した新生・ベトコンラーメン倉敷新京が、2022年(令和4年)2月に営業を開始しました。
再開当初は、オーユーシステムの本社から異動してきた立石望(たていし のぞみ)が中心になって運営していました。
2022年5月に私が加わり、立石とともに店舗運営をがんばっています。
──愛知県の元祖新京とは、メニューは違う?
福山──
メインメニューのベトコンラーメンや国士無双、鶏から揚げ、ゲソから揚げなどは、愛知県の新京と同じです。
ただし愛知の新京を食べた社員に聞くと、メニュー自体は同じなんですが、味や特徴はけっこう違うようですね。
大元となるベースは同じですが、それぞれが店独自の工夫をしているようです。
地域に根付いた味を守るために先代より事業承継し店舗を再建
──なぜ、オーユーシステムが事業承継することに?
福山──
オーユーシステム代表の南石拓哉(なんせき たくや)の出身地がベトコンラーメン倉敷新京の近くで、幼少のころからずっと親しんでいた思い出深い店でした。
また社員にも、ベトコンラーメンの常連が多数いたんです。
「多くの人に愛され、地域に根付いた店と味をなくしたくない」という一心で、自分たちで再建のお手伝いができないかと考えた代表が、ベトコンラーメン前店主の赤木さんへ申し出ました。
私は再開直後に入店しましたが、私自身もベトコンラーメン倉敷新京の近くの出身で、小さなころから知っています。
私の場合、幼少のころはベトコンラーメンは舌に合わなかったのですが、大人になって食べてみたらすごくおいしいと感じ、はまりましたね。
とくに火災が起きる前の一年ほどは、かなりの頻度で通っていました。
だから火災の一報を聞いたときは、愕然(がくぜん)としたのを覚えています。
──再建に向けたクラウドファンディングを実施していたが、手応えは?
福山──
想像以上の反響で、驚きだったと聞いています。
店舗を再建するといっても、建物の撤去、土地の整備、新しい建物の建設、その他さまざまな設備の準備など、多額の資金が必要です。
そこでクラウドファンディングで広く皆様からご支援をしてもらおうということで、クラウドファンディングを実施しました。
想定よりも速いスピードで支援をいただき、最終的に570人以上の支援をいただきました。
目標金額の倍以上の金額が集まり、感謝しかありません。
個人はもちろん、団体からもたくさん資金をいただいたのは驚きました。
ご支援をいただいた個人・団体のお名前は、店内に掲示させてもらっています。
とくに厚い支援をいただいたかたには、スタッフ用シャツにロゴや名称を入れさせてもらいました。
先代の熱い指導で味を受け継ぐ
──福山店長は店舗が再開したあとに入店とのことだが、経緯について教えてほしい。
福山──
もともと私はラーメン店どころか、外食産業とはまったくの別業種で働いていました。
オーユーシステム代表の南石とはもともと知り合いで、転職の相談をしていたんです。
そのタイミングでベトコンラーメン倉敷新京の事業承継の話があり、南石が私に白羽の矢を立て「挑戦してみないか」と誘われました。
好きな店といえど、飲食店や料理の経験は一切なかったので不安しかありません。
しかし地域に愛されている店、自分の思い入れのある店を守りたいという気持ちが大きくなり、挑戦することに決めました。
──味や調理方法は、どのように受け継いだ?
福山──
店の再開前から再開後の数か月間、先代の赤木さんにスタッフとして働いてもらいながら、直接指導をしていただきました。
私も立石も、飲食店の経験はもちろん、プライベートでも調理経験はほとんどありません。
調理だけでなく、接客など飲食店運営全般についてていねいに指導を受けました。
とにかくすべてが初めての経験で、非常に大変でしたね。
ひとつずつ、少しずつできることを増やしていました。
やがて赤木さんに「安心してお客様に提供できる!」といわれたときは、うれしかったですね!
無事、赤木さんからお墨付きをいただきました。
とはいえ、今も毎日勉強の日々ですね。
──赤木さんからは、どんなアドバイスをもらった?
福山──
赤木さんからは「基本は変えるな、基本はずっと守れ」と教わり、今もそれを維持しています。
今も基本を大事に守りつつ、新たなことを取り入れたり、新しい挑戦をしたりするのがモットーです。
もうひとつは、もしお客様が食べ残しをした場合、その食べ残した中に今後のヒントがあるということですね。
先代から受け継いだ基礎を守りつつ新たな挑戦を
──再開後、鴨方に二号店も出店した。
福山──
ベトコンラーメン倉敷新京と聞いたとき、人気店だけど行列ができる店というイメージが多くのかたにありました。
だから「行列で待つのは避けたいから、今日は行くのをやめておこう」という声もあったんです。
ベトコンラーメン倉敷新京は倉敷周辺だけでなく、福山など広島県東部、兵庫県西部など遠方からも多くのお客様が来ていました。
そこで県西部に支店を設けることで、お客様を分散し
て混雑を緩和しようという考えで鴨方店を出したんです。
結果として、本店の混雑が緩和され、以前より訪れやすくなったのではないかと感じています。
今後は、岡山東部方面への出店も計画中です。
また今年(2023年)からは、キッチンカーも始めました。
キッチンカーでは当店オリジナルの「ベトコン焼ソバ」など、店舗にはないようなメニューを提供していますので、一度お試しください!
ベトコン焼ソバはまかないから生まれたメニューで、鴨方店でも食べられます。
このように先代から受け継いだ基礎は守りつつ、お客様が足を運びやすくなるような工夫を考えていますね。
倉敷の名物ラーメンとして、より多くのかたにベトコンラーメン倉敷新京を広めていきたい
──今後の展望や課題などがあれば、教えてほしい。
福山──
本店以外に鴨方店ができ、さらなる支店の出店も考えています。
多店舗展開となると、いかに味やサービスを安定的に提供できるかというのが、今後の課題です。
今、そのための仕組みづくりを考えており、うまく仕組みを回していくようにするのが当面の目標ですね。
またおかげさまで、ベトコンラーメン倉敷新京は多くのかたに支持されています。
ベトコンラーメン倉敷新京を知っているかたはもちろん、まだ行ったことのないかたなど、より多くのお客様に足を運んでもらえるようにしていきたいですね。
多店舗展開もそのひとつですし、「ミニから」やミニサイズのラーメン、冷凍ラーメンなどのような新メニューの考案、キッチンカーのような新サービスも必要だと思います。
もちろん、先代の築いた基本部分は守りながら。
さらにラーメンのニンニク抜きや辛み抜き以外にも、苦手な具材を抜いたり、量を減らしたりするなど、可能な限りお客様の要望には応えるようにしています。
ボリュームがあってコッテリしたイメージのあるベトコンラーメンですが、具材は野菜がメインで、スープはアッサリ風味なので、実は意外と食べやすいんです。
若い男性向けの印象があるかもしれませんが、実際はそんなことはなく、ご年配のかたや女性のお一人様、お子様連れなど、客層は非常に多岐にわたっています。
来店しやすいお店づくりを心がけていますので、ぜひ足を運んでいただけると幸いです。
倉敷の名物ラーメンとして、もっと多くのかたにスタミナ抜群のベトコンラーメンを広めていきたいですね!
地域に愛されるベトコンラーメンを食べてベスト・コンディションに!
ガッツリ系の好きなお客が多いのかなというイメージがありましたが、実際に取材をしていると、思っていた以上に女性のお一人様や年配のかたも多く来店していました。
また親・子・孫の三世代で来店するお客も多いそうです。
苦難を乗り越えて復活して新しい世代に受け継がれた、多くの人に愛されるベトコンラーメン倉敷新京。
ヘルシーなスタミナ満点のベトコンラーメンや国士無双を味わって、ぜひベスト・コンディションになってみてください。