描き文字のレイアウト/配置に関する4つの原則&自分のマンガに思い通りの効果を与えることができる3つのテクニックを解説!【漫画のプロが全力で教える「描き文字」の基本】

描き文字を生かすレイアウト・基礎編

描き文字は描けるけれど、それをどのように配置したらいいのかを悩んでいる人が意外に多いようです。そこでここでは描き文字の配置に関する4つの原則を通して、レイアウトの基礎を学んでいきます。

【原則1】音のするところの近くに描く

基本として、音の発生する場所の近くに描き文字を配置することを意識してください。たとえばテーブルの上にカップを置く絵に対し描き文字を加える場合は、その文字をカップとテーブルの近くに描きます。またその際、音のボリュームに合わせた大きさで描くことも忘れずに。

【原則2】動きや方向に沿って描く

たとえば車が走っている絵に「ブロロロ」という描き文字を描くならまずは、車の動きや進行方向に沿って描いてみましょう。流線に沿うよう描くことで、描き文字の効果を高めることもできます。

【原則3】画面上に散らす

音が大きいことを表現したい場合、または騒音を出している状態や、やかましさを出したい場合は、描き文字を画面上に散らしましょう。そうすることで画面における文字の占める範囲が大きくなり存在感が増すので、音が読者に強く伝わるようになります。

【原則4】白フチをつけて見やすくする

描き文字を絵と重ねてレイアウトする際、絵と文字の色が近いと描き文字の効果が薄れてしまうことがあります。その場合は描き文字にフチをつけましょう。絵と文字の境界が明確になるので、描き文字を強調することができます。なおCLIP STUDIO PAINT の場合はレイヤープロパティの「境界効果」を使うと、そのレイヤー上に描いたものには自動でフチがつきます。

描き文字を生かすレイアウト・応用編

文字を生かすレイアウト・基礎編とあわせてここで紹介する3つのテクニックを使うことで、自分の漫画に思い通りの効果を与えることができます。

見せたいものを描き文字で挟んで注目させる

人間の視線は自然と、黒いものと黒いものに挟まれた箇所へと向かいます。この法則を利用して、見せたいものや強調したいものがある場合は、文字と文字のあいだに配置するようにしましょう。

集中線のように描き文字を使う

集中線が描かれている場合、読者の目線は自然とその消失点へと向かいます。これを利用して文字も集中線に沿って描くことで、消失点に描かれている絵により注目が集まるようになります。

背景の一部として描き文字を使う

たとえばあるキャラクターの登場シーン。「ドン」という擬態語とともに登場させるとします。「ドン」を大きく描きたいけれど、キャラクターの体もちゃんと見せたい。そんな場合は文字を小さくするのではなく、大きさを維持したままキャラクターの背後に文字をレイアウトしましょう。人間は文字であれば70%見えていればその文字を認識できるといわれているので、30%ほど隠れるぶんには問題ありません。

隠れた文字がキャラクターを押し出し、存在感やインパクトを高めてくれますよ!

CLIP STUDIO PAINT で描き文字を背景にする方法

【1】描き文字を人物とは別レイヤーで作成。

【2】人物のレイヤーにて、[自動選択]ツールで人物のまわりを選択。

【3】背景の選択範囲を維持したまま、描き文字のレイヤーを選択し、[レイヤー]パレット→[レイヤーマスクを作成]でレイヤーマスクを作成。

【4】完成。

『漫画のプロが全力で教える「描き文字」の基本』はこんな人におすすめ!

・描き文字を上手にかきたい! ・描き文字のレパートリーを増やしたい! ・シチュエーション別のかき分け方法を知りたい
と感じている方には大変おすすめな本です。

文字の大きさや、字体、レイアウトなど作風やシチュエーションに合わせてえがく描き文字は、イラストではなく文字なので単純そうにみえますが、奥が深いため苦手意識を持つ方も多くいます。本書では、基本的な描き文字のかき方が分からない初心者の方、ある程度はかけるけど場面ごとのかき分けが得意ではない方、効果音のレパートリーが少なくて悩んでいる方、文字の配置やレイアウトが苦手な方などに向け、描き文字に対するさまざまなお悩みポイントをおさえた一冊です。

漫画や同人誌をかく上で、必要不可欠なものが「描き文字」

描き文字は、キャラクターの心情や効果音などストーリーをより効果的に演出するために必要ですが、SNSなどでは描くのが難しいと言われています。そんな描き文字を東京デザイン専門学校さん協力のもと、本当に使える描き文字だけをわかりやすく丁寧に解説します!

気になる中身を少しだけご紹介!さまざまなシチュエーションがある食事のシーン!描き文字を組み合わせるだけで伝わり方が大きく変わる!?

擬音語、擬態語の多い食事シーンはひと工夫でよりリアル感を演出

食事についてはさまざまな擬音語、擬態語があります。メインビジュアルは「がつがつ」「パクパク」と、ものすごい勢いで食べている女の子の絵。この絵は一見「がつがつ」だけで成立しそうですが、「パクパク」を入れることにより、ものすごい勢いで口に食べ物を放っていることが伝わる絵になっています。また描き文字が前面に出ており人物の顔周りに置かれていますが、これにより動きの激しさが表現されています。食事はおもに口で行う動作なので、描き文字は息づかい同様、顔や口の周りに描くようにしましょう。

下の図は食べる状況に合わせて黒文字、白文字を描き分けています。「ゴクン」は液体を飲み込む音ですが、食べたい気持ちを表現する際にも使えます。「ゴ」の濁点や「ン」の一部が円形になっており、これにより読者にポジティブな印象を与えています。「チュルルルー」「ズズー」などは麺類を食べている音。「パクパク」のようにただ口に入れるのとは違い、時間的な幅のある動作なので、音引きを長めに伸ばすことでそれを表現しています。

静かなシチュエーションも「描き文字」をプラスしてもっと伝わる表現に!

描き文字をどの部分に描くかで読者が状況を理解できる

静かな状況のとき、実際は音がないわけですが、マンガではそれも描き文字で表現します。無音の状態を表す表現法のなかでも有名なのが、メインビジュアルの「シーン」ではないでしょうか。この「シーン」は静かな状況ですが、かなり大きく描かれています。それはこの絵がギャグシーンであり、そのば全体が静まりかえっていることを明確に示したいから。またこの描き文字を画面上部に描くことで、この教室に教師以外誰もいないことを読者が瞬時に理解できるようになっています。

下の図には、静寂のなかで聞こえる小さな音も掲載。小さな音を文字でも小さく描くことで、その音がわずかに聞こえるくらい静かであることを読者に伝えることができます。時計の音「カチコチカチコチ」、足音「カツーン コツーン」などが代表的な例ですが、ほかにもいろいろあると思います。また緊張して言葉が出ない状態の「カチン コチン」などは、キャラクターの緊張度に合わせた大きさで描くようにしましょう。

★文字だけで印象は操作できる!? ★デジタルツールとアナログ道具で描く描き文字 ★漫画でよく見る「ときめく」の描き文字の種類とは ★音を奏でる時に使う描き文字とは?
などなど気になるタイトルが目白押し!

本書は文字例の多さはもちろんのこと、描き文字を漫画に当て込んだ例も豊富に取り入れて解説しています。実際どのくらい描き文字は漫画の表現力を高めるのか、ストーリーの印象が変化するのかを確認しながら、読者の皆さまが自分の作品にも取り入れていただけると嬉しく思います。

【書誌情報】
『漫画のプロが全力で教える「描き文字」の基本』
著者:東京デザイン専門学校

漫画や同人誌などをかく上で、キャラクターの心情や効果音などストーリーをより効果的に演出するためには、必要不可欠な「描き文字」。文字の大きさ、字体、レイアウトなど作風やシチュエーションに合わせてえがく描き文字は、文字なのでイラストより単純そうにみえて奥が深いゆえ、苦手意識を持つ人もいます。基本的な描き文字のかき方からわからない人、ある程度はかけるけど場面ごとのかき分けが得意ではない人、効果音のレパートリーが少なくて悩んでいる人、文字の配置やレイアウトが苦手な人など、本書はそのような描き文字に対するさまざまなお悩みポイントをおさえた一冊です。

© 株式会社日本文芸社