【SNS特報班】住宅街にイノシシ 行政対応してもらえる?

わな、流れ弾 捕獲にリスク 挑発避け「まず自衛を」

3頭のイノシシが現れた場所を説明する高森智奈美さん(右)と優道君

 広島市安佐北区の住宅街に3月中旬の夕方、3頭のイノシシが出没した。住宅からの距離は10メートルほど。「小さい子どもがいる。行政に対策をしてもらえるのだろうか」と不安の声が編集局に寄せられた。調べてみると、住宅街ならではの駆除の難しさもあり、行政対応は限定的とならざるを得ないことが分かった。

 「驚いた。まさか目の前にいるとは」。自宅に駐車中だった高森智奈美さん(33)は、山の斜面を掘り返す3頭の姿に目を見張った。助手席にいた長男の小学2年優道君(7)も「怖く感じた」。110番すると、安佐北署員が到着する直前、3頭は林の奥へと姿を消した。

■複雑な市窓口

 警察官は住民の安全確保のために出動するが、駆除など鳥獣害対策は自治体の役割になるという。市の窓口を調べてみると、西区や中区など4区は「地域起こし推進課」。安佐北区や佐伯区などの4区は「農林課」で、区民への出没情報の周知などは地域起こし推進課が担う。複雑だ。
 安佐北区農林課の横山裕彦課長を訪ねた。住宅街に近い山では子どもたちが遊びに入る可能性もあり、わなや電気柵などを多く設置できないという。
 同課は猟友会などに捕獲を要請できるが、「流れ弾のリスクや動物愛護などの観点から、団地内での駆除には難しい面が多い」と明かす。

■安全を最優先

 捕獲にも困難さが伴う。今回の目撃場所から山の反対側にある同区口田の公園では2021年12月、イノシシ2頭が警察官ら6人を負傷させる事件が起きた。猟友会や警察官は住民の安全を最優先し、発砲しなかった。結局、約10キロ離れた市安佐動物公園の職員が麻酔銃で弱らせ、捕まえた。
 ただ、このケースはイノシシが捕獲を逃れようと反撃したのが原因で、横山課長は「本来、身を守る以外の理由で人を襲うことはない」とも強調。遭遇した場合も▽追いかけない▽背中を向けて逃げない-などの自衛策を呼びかける。(中国新聞提供)

宮崎県内でも目撃情報 「餌」をなくす対策有効

 宮崎県では人家近くの畑でイノシシが目撃されたことがある。宮崎市佐土原町の岩城次人さん(69)は昨年10月、同町下田島の畑に植えていたサツマイモが掘り返された。サツマイモにはかじられた跡があった。

 畑の周囲には住宅があり日中は車も通る。ただ、岩城さんはすぐにイノシシを疑った。1週間ほど前に水やりをした家族が、畑の近くでイノシシ2頭=写真(岩城さん提供)=を見かけていたからだ。

 翌日も被害に遭ったため慌てて収穫。別の畑でも同様の被害が起きたことや、イノシシを確認した住民の話も聞いた。岩城さんは「8年ほど野菜を作っているが、被害に遭うのは初めて。近くに通学路もあるので、警察や市役所に連絡した」という。

 県鳥獣被害対策支援センターによると、県内の他の地域でも人家近くでイノシシのほか、タヌキやアナグマが確認されている。室屋敦紀主任技師は「生ごみや家庭菜園の野菜を餌にしている。人を恐れなくなれば昼間でも行動する」と説明する。

 食害などを防ぐためには「生ごみを外に置きっ放しにしないなど、餌となる物をなくす対策が有効」と話している。(宮崎日日新聞)


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