蝉川泰果の天国と地獄 プロ初エース直後にプロ初ロストボール

エース達成の記念撮影も表情は今ひとつ?(撮影/高藪望)

◇国内男子◇ASO飯塚チャレンジドゴルフトーナメント 2日目(9日)◇麻生飯塚GC (福岡)◇6809yd(パー72)◇晴れ(観衆1198人)

蝉川泰果が首をひねるのも無理はない。「ホールインワンをして、すぐダボが来るなんて思わないですよね…」。ホールアウト後、うれしいはずのエース達成記念のフォトセッションも乗り気はせず、心の声がこぼれ出た。

プロでは初、学生時代の合宿で1度だけ達成したことのあるホールインワンが後半11番パー3で飛び出した。ピンまで183yd。風は右からフォローが少しだけ。7番アイアンのショットは、蝉川特有の高弾道を描き、ピン手前数十センチにキャリーし、カップに消えた。

「僕、目が悪いんで見えなくて」。ティイングエリアまで「コン!」とカップインする音は聞こえた。グリーン周辺のギャラリーの歓声も聞こえた。同組の石川遼とハイタッチもした。それでも、本人はピンと来ない。不思議そうに「すごい」とつぶやき、クラブをバッグに入れた。その時点で通算11アンダー。残り7ホールでさらなるチャージを予感した。

ショットの切れがプロ初ホールインワンにつながったが…(撮影/高藪望)

直後の12番パー5で“地獄”が待っていた。右ラフからピンまで181ydの第2打はフライヤーを計算して9番アイアンを握った。右からせり出す林越えの2オンへ。「完全にブラインドだったんですけど、自分としては完璧で…」。その打球が消えた。フォアキャディはグリーン右に茂る林付近で「木に当たる音を聞いた」と言う。木になったのか? 右サイドの赤杭エリアに入ったのか? 石川も参加しての捜索むなしく、ボールは見つからなかった。今度はプロ初のロストボール…。ダブルボギーとなり、通算9アンダーに逆戻りした。

エース直後のロストボールで流れが切れた(撮影/高藪望)

当然、流れは悪くなる。ショットが乱れた13、14番はワンパットのパーでしのいだが、15番で2.5mのチャンスを外す。「急にパットが悪くなって。“あれ?”って感じで外してしまって」。16番でバーディを奪ったが、最終18番パー4は絶好の位置から第2打をミスしてボギーフィニッシュになった。

残り2日で8打差逆転に挑む(撮影/高藪望)

伸ばし合いのフィールドで、この日は“平凡”な「69」に終わった。「このところ“守りながら攻める”ことができず、“攻めて攻めて”になっています。それで大きなミスをする」。4月中旬「関西オープン」で優勝したものの、その後は最終日を4打差3位で迎えた「中日クラウンズ」、1打差2位で迎えた「ゴルフパートナー PRO-AM」で勝ち切れなかった。「勝ちたい思いが強くなってしまって…」。意欲と焦りという紙一重の精神状態をコントロールしたい。8打差10位で残り2日。気持ちを立て直し、トップを追いかける。(福岡県桂川町/加藤裕一)

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