膵臓がん専門検診 七尾・恵寿病院、金大協力

膵臓がんの検査で得られたデータを確認する医師=七尾市の恵寿総合病院

  ●早期発見2例実績 21年から

  ●専門家「身近な病院で実施、意義大きい」

 がんの中でも早期発見が極めて難しいとされる膵臓(すいぞう)がんについて、恵寿総合病院(七尾市)が金大附属病院(金沢市)と協力して実施する専門検診が実績を挙げている。膵臓がんに特化した検診は石川県内の医療機関では唯一であり、2021年の開始以来、40症例中2例をがんと診断、うち1例は人間ドックでは見つけるのが困難なごく初期段階で発見した。膵臓がんの治療は早期診断が重要とされ、専門家は「身近な総合病院で検診できる意義は大きい」と指摘している。

 恵寿総合病院消化器内科長の神野正隆理事長補佐によると、21年には9例、22年に22例、23年に9例の検診を行い、膵臓がん疑いの2例を診断した。このほか、がんにつながる恐れがある膵嚢胞(すいのうほう)を数例見つけ、経過を観察している。

 検診に協力するのは、がんを含む膵臓の病気を研究し、画像診断を専門とする金大附属病院放射線科の井上大講師ら。

 井上氏によると、膵臓がんは初期段階では、ほぼ症状がなく、超音波や磁気共鳴画像装置(MRI)といった画像検査での発見が鍵となる。膵臓は大きさが15センチ前後で、重さ60~100グラムと臓器の中では比較的小さく、体の奥にあるため、画像診断には最新設備や高度な技術が求められる。

 恵寿総合病院では、検診に使うMRIは高精度のデータが得られる最新の「3T機器」を導入。MRIや超音波の検査は井上氏から指導を受けた検査技師が担当する。

 検診で得られたデータは井上氏が最終的に分析する。異常があれば、恵寿総合病院の消化器内科のほか、金大附属病院での精密検査や治療、経過観察する態勢が整っている。

 神野氏は「北陸トップレベルといえる膵臓がんに特化した検診であり、早期発見、早期治療に生かしていきたい」と話した。

 消化器内科学が専門の児玉裕三神戸大教授は、恵寿総合病院の専門検診について「精度の高い検診が地域の身近な総合病院で行われることは、早期発見のために大きな意味がある。検診の実績も膵臓がんが身近な病気であることを示す結果といえるのではないか」と評価した。

 

 ★膵臓がん 血糖値を調節するインスリンなどを分泌する膵臓にできるがん。治りにくいがんの代表格とされ、年間3万人以上が死亡する。発症する割合は60歳ごろから増加し、高齢になるほど高い。早い段階では特徴的な症状がない。膵臓は胃や肝臓などに囲まれているため、超音波検査やCTによる診断も難しく、診断された時点で進行していることが多い。近年増加傾向にあり、喫煙や糖尿病などが危険因子とされている。

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