アップル「48万円」Vision Pro、ビジネスユースからヒットの予感

(同社ホームページより)

「一体、誰が買うのか?」米アップルが6月5日に公開したVR/AR(仮想現実/拡張現実)ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の「Vision Pro」。2024年に発売する予定だが、世界を驚かせたのは3499ドル(約49万円)という価格。おいそれと手を出せる価格ではないが、商機はある。法人市場だ。

法人市場でこそ生きる妥協のない高解像度

ハイエンド商品だけに、基本性能に妥協はない。HMDに内蔵されたディスプレイの解像度は約2300万ピクセル。メタが発売している「Quest Pro」(価格15万9500円)の約690万ピクセルの3倍以上、4Kテレビの約830万ピクセルを大幅に超える高解像度を実現する。

もちろん個人ユースでも素晴らしい体験ができるだろうが、法人市場のビジネスユースなら「利益を生む」ツールとしての活用が期待できるだろう。

例えば農業。NECは山梨県でぶどう栽培従事者が装着したHMDのカメラを通じて画像情報を人工知能(AI)で分析し、小さな実を間引く「摘粒」の指示をHMDのディスプレー上に表示する「スマートグラスを活用した熟練農業者技術の『見える化』の実現調査」に取り組んだ。実証実験の結果、未経験者でも熟練農業従事者と同等の作業時間に短縮できることが分かったという。

HMDを利用した農業支援の実証実験(NEC資料より)

製造業での利用も期待できる。航空宇宙関連ビジネスを手がける英BAEシステムズは、製造現場の技術者トレーニングでHMDのディスプレーに3D(3次元立体)の作業ガイドを投影し、手元の機械や作業の操作を画像で指示し、作業効率が30〜40%向上したという。

多くの作業現場では人手不足が深刻化しており、非熟練作業者の訓練や作業手順の指示、エラー検出・回避が急務になっている。高解像度で画像の処理速度が高い「Vision Pro」のようなHMDは、複雑で繊細な作業にも対応できるため、こうした作業支援ツールとしては極めて有用だ。

ビジネスユースでヒットすれば大量生産にもめどがつき、個人でも気軽に手が届く「Vision Pro 」の廉価版が登場する可能性が高まる。ゲームやエンターテインメントで利用できる日も、そう遠くはないだろう。

文:M&A Online

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