浸水被害の茨城・取手の双葉地区 被災者の心と体ケア 看護師・保健師 戸別訪問で対話

戸別訪問で住民の健康状態を確認し、破傷風感染の注意を呼びかける保健師たち=9日午後2時7分、取手市双葉

台風2号や梅雨前線の影響による大雨で約600棟が浸水被害を受けた茨城県取手市双葉地区で、浸水から1週間がたち高齢者の疲労が募る中、看護師や保健師たちが被災住民の体調管理や心のケアに奔走している。復旧活動が続く住民を戸別訪問して健康指導や対話に取り組み、住民から「話を聞いてくれて安心した」「ありがたい」と声が上がっている。

「体調はいかがですか」「どこかに痛みはありませんか」-。9日昼過ぎの同地区。龍ケ崎市から派遣された小島佐知子さん(42)と牛久市から派遣の本橋瞳さん(24)の保健師2人が、地図と名簿を手に地区内を訪ね歩き、対象の住民に健康状況を確認していった。

取手市保健センターによると、戸別訪問は8日、地区内で被害が大きかったエリアからスタート。9日は近隣市町と県竜ケ崎保健所の支援で8人態勢に拡充し、午後1~3時ごろの2時間で約80軒を訪れた。訪問先では、住民に体調が悪くないか、薬の飲み忘れがないかなどを確認したほか、気温上昇による熱中症、菌が傷口から体の中に侵入してかかる破傷風への注意も呼びかけた。

保健師たちの訪問を受けた京崎よつ子さん(56)は「体調は大丈夫。話を聞いてもらうだけで、とても安心」と笑顔。まだ片付け作業で手いっぱいの日々を送るが、「けがをしないようにしたい。消毒もしっかりする」と話した。依田利江さん(81)は「そろそろ片付けの疲れも出てきた。外のお風呂にゆっくり入ってリラックスしたい」と語った。

一方、日本赤十字社県支部は12日まで、同地区の双葉自治会館2階に看護師らスタッフを派遣。住民やボランティアの体調管理や健康について指導するほか、被害を受けた住宅も巡回し、住民の健康管理や悩み事の傾聴にも取り組んだ。

奉仕団看護師の高橋昭子さんは(66)は「少しでも役に立てればと思う。ストレスを抱えている人も多くいるので、住民の声に耳を傾けていきたい」と話した。高橋さんの訪問を受けた主婦(45)は「なぜこんな目に遭うのかと悲しくなったが、話を聞いてもらってほっとした。医療従事者がいてくれると心強い」と顔を上げた。

龍ケ崎薬剤師会は消毒液1200本を準備し、自治会館で1世帯1本を無料配布。会長の石塚博己さん(51)は「感染症予防に使ってもらいたい」と利用を呼びかけた。

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