学校でからかわれても…小4男児「伸ばした髪自由に使って」 祖母のがん治療の話聞き、ヘアドネーション決心

家族に約2年伸ばした髪にはさみを入れてもらう岩崎伸二郎君=加東市社

 医療用ウィッグ(かつら)を提供する「ヘアドネーション」に協力しようと、兵庫県三木小4年の岩崎伸二郎君(9)が、約2年間伸ばした髪を寄付した。がんで亡くなった祖母の話を父親から聞かされたことがきっかけで決心。学校でからかわれたこともあったが、思いを貫いた。「先天的に髪が生えない人もいると聞いた。この髪を自由に使ってもらえたら」と話している。(長沢伸一)

 岩崎君は小学2年の夏からアニメのキャラクターのまねをしたいと髪を伸ばし始めた。髪が肩にかかるぐらいまで伸びたその年の冬、父の善彦さん(42)から、祖母ががんの治療で頭髪を失ったことなどを聞き「せっかく伸ばすなら寄付したい」とヘアドネーションへの挑戦を決めたという。

 「やんちゃ盛りで、長い髪が引っかかってけがをしたり、学校でからかわれたりするんじゃないか」。両親は心配したが、岩崎君は「僕は伸ばす」と信念を貫いた。

 長くなった髪の手入れは30~40分、毎日かかった。しっかり洗った髪は乾かす時間も必要だった。女の子に間違われることは多く、学校でもからかわれた。それでも挑戦をやめたいと言ったことはなかった。

 約2年かけて髪の長さが31センチに達したことを機に、髪を切ることを決めた。

 5月30日。同県加東市の美容室を訪れた岩崎君は、いすに緊張気味に座った。両親や兄にもはさみを入れてもらった。散髪を終えると「さっぱりした。首を振ると髪が当たっていたけど当たらない。さみしい気持ちはない。自由に使ってもらいたい」と笑顔を見せた。

 髪はヘアドネーションに取り組む団体へ贈った。息子の2年間の努力を見てきた善彦さんは「普段は飽きっぽい性格だけど、決めてから、彼なりの信念でよく頑張りました」とたたえた。

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