「返さなきゃ」が口癖だった母…出前の丼、60年ぶりに店へ 秋田市土崎の「まさご食堂」

「まさご」と書かれた丼

秋田市土崎港の「まさご食堂」に、60年ほど前の出前の丼が返ってきた。市内の男性が2011年に他界した母親に代わって食堂に届けた。受け取った代表の佐藤洋さん(67)は「まさか」と驚きながら、「タイムカプセルに入れておいてもらったような気持ちだね」と喜んだ。

 丼が返ってきたのは2月。土崎地区で幼少期を過ごした同市楢山の菅谷司さん(64)が持参した。

1949年創業、当時は「岡持ち片手に自転車で」

 菅谷さん一家は、前回の東京五輪があった1964年ごろ、父親の仕事の都合で土崎地区から県南へ転居することになった。菅谷さんは当時6歳ぐらいで記憶はあまりないが、引っ越しが迫っていた中で両親が出前を取り、何かの事情で丼を返却できずじまいになってしまったのではないかと推測する。

 まさご食堂は1949年に佐藤さんの両親が創業。店がある「山道通り」には寺院や映画館が立ち並んでいたほか、近くに路面電車の終点の停留所もあり、多くの人が行き交っていた。

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