住宅ローン「団体信用生命保険」、保障の上乗せで知っておきたいチェックポイント

住宅ローン契約者の加入が原則義務とされる「団体信用生命保険」。団信は契約者が死亡、または高度障害になった場合に住宅ローン残高を保障する「一般団信」を基本としていますが、最近は金利を上乗せして支払うことで、さまざまな上乗せ保障をつけられるものも登場しています。

最近の団信の上乗せ保障の内容と、知っておきたいチェックポイントについて解説します。


団信の上乗せ保障、2つのタイプ

さまざまなタイプが登場していますが、今回は2つ紹介します。

残高保障タイプ

保険会社があらかじめ定めた要件を満たしたときに、一定の住宅ローン残高が保険会社から支払われるタイプです。一般団信の保障が広がったイメージで、要件はさまざまですが、がんの診断など住宅ローン契約者の特定の疾患による万が一を要件とするものや、地震や自然災害などによる住宅の損害を保障するものなどもあります。

なお補償される残高は、50%や100%など、住宅ローン残高に対する割合で示されるのが一般的です。

月返済保障タイプ

保険会社があらかじめ定めた要件を満たした時に、住宅ローンの月返済額を保障するタイプです。要件は療養などのために「まったく働けない状態」とするものが多いですが、突然の失業による働けない状態をカバーするものなどもあります。

月返済の保障は1年とするものが多く、保障終了後は前述の残高保障に移行するものもあります。

実は厳しい保険金支払い要件

一見すると魅力的な保障内容ですが、保険金の支払われる要件は商品ごとに異なります。

残高保障タイプの要件例

(1)保障開始日から90日経過後にはじめて悪性のがんと診断されたとき
(2)保障開始日以降、急性心筋梗塞を発病し、60日以上所定の就業不能状態が継続したと医師に診断されたとき、または所定の手術を受けたとき
(3)保障開始日以後、脳卒中を発病し、60日以上、言語障害・運動失調・マヒ等の後遺症が継続したと医師によって判断されたとき、または所定の手術を受けたとき
(4)保障開始日以後、4つの生活習慣病(高血圧性疾患・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変)で所定の就業障害が1年30日を超えて継続したとき

月返済保障タイプの要件例

(1)保障開始日以後に生じた4つの生活習慣病(高血圧性疾患・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変)を原因とする就業障害が、30日をこえて継続していると医師によって診断されたとき
(2)保障開始日以後に生じた傷害または疾病を原因とする就業障害が、3カ月をこえて継続していると医師によって診断されたとき
(3)住宅ローン返済日において、保障開始日以後に生じた傷害または疾病を原因とする所定の就業不能状態が、継続していると医師によって診断されたとき

入院や在宅療養などにより、本人の経験や能力に応じたいかなる仕事も、まったくできない状態をボーダーラインとするものは多いです。保険金の支払い要件は厳しい傾向にあると言えるでしょう。

団信上乗せ保障のチェックポイント

団信の上乗せ保障は、万が一を想定すると心強いものではありますが、一般的に金利の上乗せも必要になります。上手に活用するために、知っておきたい3つのチェックポイントを紹介します。

(1)支払い要件
まずは検討されている保障が、どのような時に受けられるものなのか確認しましょう。前述のとおり、保険金の支払い要件は商品ごとに異なります。ご自身が不安に思われているもしもはカバーされているのか、しっかり確認しましょう。

(2)借入計画
団信の上乗せ保障は、保障の広さに応じて年0.1~0.3%程度、金利が上乗せされるのが一般的です。借入残高に合わせた保障を用意できる一方で、借入金額等借入プランに応じてご自身の負担額は変わります。

  • 4,000万円を35年全期間固定金利、元利均等返済、年金利0.7%で借入。年0.3%を上乗せする場合、増える利息負担額はおよそ231万円。
  • 2,000万円を25年全期間固定金利、元利均等返済、年金利0.7%で借入。年0.3%を上乗せする場合、増える利息負担額はおよそ100万円。

大切な保障とは言え、高くついていないでしょうか。すでに加入している保険で代替できるケースもあります、トータルで見て負担を確認しましょう。

(3)中途解約の可否
上乗せ保障を含めた団信には、中途解約できないものも多いですが、できるものもあります。一般的に、住宅ローンの返済は長く続きます。もし中途解約できるのであれば、住宅ローンの残債が減ってきた段階で解約し、負担を減らすことも可能でしょう。もしもの備えはもちろん大切ですが、もしもが起こらなかった場合のご自身のとれる選択肢も、できる限り確保しておきたいところです。


一般的に、住宅ローンは大きな金額を借入れるため、万が一の不安は募りやすいことでしょう。しかし、そもそもの借入計画に無理はないでしょうか?

もし借入計画に無理がある場合は、団信の保障を上乗せするのではなく、ライフプランとともに住宅取得計画を見直すことが先決です。

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