中国で「育成者権侵害」多発 日本の品種流出も 訴訟150件迫る、前年3倍増

中国で植物新品種の育成者権の侵害を巡る訴訟が多発している。2022年の訴訟件数は150件に迫り、2年前の3倍以上に増えた。コロナ禍が収まり、中国への輸出拡大機運が高まる一方、中国ではなお育成者権侵害が横行し、対策が急務であることが改めて浮き彫りになっている。

中国の最高裁に当たる最高人民法院の知的財産権を巡る裁判報告書によると、植物新品種の育成者権訴訟は2020年は41件だった。21年は68件、22年は144件と増える傾向にある。

日本の品種の育成者権侵害も後を絶たない。本紙が現地のインタ―ネットの販売サイトなどを確認したところ、ブドウやイチゴ、サツマイモなど、海外で生産が認められていない多数の日本の品種が確認できた。

この問題に詳しい日本の弁護士によると、中国で日本の品種らしい苗木を買って検査したところ、5、6年前は大半はDNAが異なる偽物だった。しかし、最近の調査では検査したほとんどでDNAが一致するという。

種苗会社のミヨシグループ(東京都)は育成した品種について、中国や韓国など世界の34カ国の生産者に栽培を認め、許諾料を徴収する。許諾料の収益は、同社海外事業の2割に上る。三好正一社長は「(育成者権を)守るだけではプラスにならない。許諾料を徴収する方が、利益を確保し、持続可能な新品種の研究開発にもつながる」と話す。

© 株式会社日本農業新聞