癒やされよう!ホースセラピー

日々、お仕事や家事に追われて過ごしていると、いつの間にか溜まってしまうストレスや体の不調。
生活の中に癒しの時間を持つことはとても大切です。

この記事では、心と体を癒してくれる「ホースセラピー」についてご説明します。

「馬」が「人」を癒す

どんなに忙しくても、家に帰ってかわいい犬や猫とふれあうとホッとしますよね。
「アニマルセラピー」とは「動物とのふれあいによって人に癒しを与えること」で、ストレス解消やリラックス効果だけではなく、心身への良い影響も期待されています。
アニマルセラピーの分類と効果は次のとおりです。

アニマルセラピーの分類

  • 動物介在療法:人の病気の治療を目的として実施する、動物を介在させた補助療法。医療従事者が主導する。欧米のアニマルセラピーはこれを指すことが多い。
  • 動物介在活動:情緒的な安定や生活の質の向上などを目的とするもので、医療従事者は介入しない。日本のアニマルセラピーはこれを指すことが多い。
  • 動物介在教育:動物とのふれあいなどを通じて、動物との正しい接し方や命の大切さ、協調性などを子供たちに学んでもらうための活動。

アニマルセラピーの効果

  • 生理的・身体的効果:副交感神経が優位なリラックスした状態になり、緊張が緩和される
  • 心理的効果:楽しい感情が増えて抑うつ症状の改善につながる
  • 社会的効果:動物を介して人同士の交流が円滑になる

ホースセラピーと他のアニマルセラピーとの違い

ホースセラピーもアニマルセラピーの一つですが、馬が犬や猫と大きく違うのは、乗って運動できるところです。
その歴史は古く、古代ギリシャ時代には負傷した兵士を馬に乗せて、体の機能の回復を試みていたとのこと。
アニマルセラピーの効果に加え、馬に乗ることでバランス感覚の改善や筋肉強化といった身体的効果や、自尊心の向上や達成感といった心理的効果が期待できます。
また、馬を世話するときには様々な動作をする必要があるので、日常生活動作の改善にも効果があるとされています。

「人」が「馬」を癒す

馬が心身ともに健康でないと、人を癒すことはできません。
適切なケアをしてもらえなければ、馬も疲れて背中や腰などが痛くなったり、ストレスが溜まって問題行動を起こしたりします。
高い障碍をジャンプしたり、馬場馬術の高度な動きをこなしたりする競技馬だけではなく、基礎的なレッスンに大活躍する馬や、ホースセラピーで人とふれあう馬にも十分なケアが必要です。

馬の体のケア

一番大切なのは、毎日の健康チェックです。
食べ残し、飲水量、便の状態、体温、元気、立ち方など、馬に異常がないことを確認してから馬房の外に出し、ブラッシングや裏掘り(蹄の裏をきれいにすること)をしながらケガなどがないことを確認します。

運動中は動きに異常がないか注意深く見ます。
運動が終わったらケガをしていないことを確認し、汗や汚れをきれいに落としてから水気を拭き取り、しっかりブラッシングします。
運動をしていない時は、快適な馬房で静かに休めるようにします。

馬の心のケア

ストレスが溜まると、馬は「悪癖」と呼ばれる問題行動を起こすことがあります。
[悪癖の例]

  • さく癖:柵などに歯を引っ掛けて「グッ」と音を鳴らしながら空気を飲み込む癖。別名「ぐいっぽ」。
  • 熊癖(ゆうへき):前躯をゆらゆらと左右に揺らす癖。別名「ふなゆすり」。
  • 蹴癖(しゅうへき):人や馬を後肢で蹴る癖
  • 咬癖(こうへき):人や馬に咬みつく癖

一度癖がついてしまうとやめさせるのは難しく、健康を損ねる原因になったり、周囲に危険を及ぼすことがあったりするので、まずは癖をつけないようにするのが第一です。
また、蹴癖や咬癖がある馬は、セラピーホースとして活動するのは難しいかもしれません。

ストレスには必ず原因があります。
馬が落ち着かない様子やイライラしているようであれば、その原因を見つけて取り除いてあげましょう。
退屈している場合は、おもちゃを与えたり放牧時間を増やしたりするなど、その馬にとって気晴らしになることをしてみるのも良いかもしれません。

馬のマッサージで得られる効果

大事な会議で緊張した後など、肩や背中がガチガチに凝ってしまうことはありませんか?
馬も人と同じように、毎日の緊張や疲れが溜まって筋肉が凝ってしまうことがあります。
明日も元気でいてくれるように、マッサージでケアしてあげましょう。

まず、馬の全身を見て、立ち方に異常がないか確認します。
次に、馬の反応を見ながら、全身に軽く触れていきます。痛がったり嫌がったりするところはありませんか?
マッサージの回数を重ねると、ちょっとした違和感を敏感に感じとることができるようになっていきます。「おかしいかな」と思ったら、スタッフに伝えましょう。
全身を確認した後は、頚、肩、背中、腰から肢先まで、ゴムブラシなどを使うとしっかりマッサージできます。

マッサージすると、馬は「あー、そこそこ」「気持ちいいねー」という表情をします。
たまに鼻先で人の背中にモソモソお返ししてくれる子もいて、癒しているつもりが逆に癒やされるという効果もあるのかも。
馬との信頼関係もぐっと深まります。

ケガや病気でマッサージをしない方が良い場合もあります。
また、マッサージが好きではない馬にとっては却ってストレスになってしまうこともありますので、その馬に適したケアをしてあげましょう。

ホースセラピーの資格

現在、日本には「ホースセラピスト」の統一された資格はありませんが、様々な団体や動物関係の専門学校でホースセラピスト養成講座や養成コースを運営しています。

また、ホースセラピーを行なっている乗馬クラブでは、ホースセラピーの基礎を学びたい方やホースセラピーを行いたい方、ボランティアをしたい方などを対象に講習会を開催することがあります。
(公社)全国乗馬倶楽部振興協会の講習会お知らせページに掲載されるものもありますので、ご興味がある方は一度覗いてみてはいかがでしょうか。(※2023年6月9日現在、参加募集中の講習会はありません)

まとめ

今回は、ホースセラピーについてご説明しました。

馬が人を癒すホースセラピーにはたくさんの効果がありますが、それには馬が心身ともに健康であることが重要です。
馬のケアをしながら、さらに癒やされてくださいね。

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