【岡林裕二インタビュー】衝撃の「無期限休業宣言」、本人が明かす引退視野と向き合う決断

大日本プロレスのストロングBJの象徴である”力こそパワー”の岡林裕二が6月7日、引退も視野に入れた衝撃の無期限休業を発表した。

7月以降から休業となるが、その反響は凄かったと語る。 その岡林に発表の翌日、一夜明けた心境や何度も話し合った登坂栄児社長の涙。そして、先輩で同じくストロングの象徴である関本大介からの言葉やレスラー人生での印象深い出来事などを聞いた。## ◆無期限休業の理由

――昨日(6/7)の会見で、無期限の休業を発表されました。周りの方の反応はいかがでしたか?

そうですね、あの後LINEとかDMとかも凄いきましたね。身内にもあまり伝えてなかったので、結構たくさんの方から「どうしたの?」という連絡があって。昨日返信しきれなかったので、今日明日で返信しようと思っているんですけど、やっぱりみなさんびっくりされてましたね。

――やはりそうですよね。心技体絶好調で今脂が乗りきっている状況での決断ということでびっくりされた方も多いと思います。引退というわけではないので、周りの方から待ってるよという声も多かったのではないでしょうか。

そうですね、引退とは言ってなくて…。休業すると言ったので、休業明けを待ってる、休業明けたら試合しようとレスラーの方からたくさん声をかけていただきましたね。そういうお声がけをいただいて、すごい胸にくるものがありましたね。

――岡林選手の同期レスラー、近い年齢のレスラー方、たくさんいらっしゃいます。

そうですね、(昭和)57年の同期のレスラーからも結構連絡来ましたね。

――まだまだやれるだろ?みたいな感じですか。

はい。そんな感じでやっぱりみんな驚いてましたね。

――やはりそうですよね。現時点では、今後どのような道を歩もうか迷われてる最中ですか?

そうですね。入門してデビュー当時、プロレスは40歳までと自分で考えてたんですよね。それは常々登坂社長にも伝えていて。たぶん40になったら体も動かなくなるんじゃないかなって思ってたんですよ。でもプロレスラーとして歳を重ねていきましたけど、体動くんですよね、全然衰えも感じないし。全然大丈夫だなと思いながら、37くらいにあと3年で40やなあと思ったんですよ。それまでも頭の片隅にはあったんですけどね。一昨年くらいからはそのことについて結構いろいろ考えて…。

――カウントダウンが迫ってきたわけですね。

それでいろいろ考えるようになって、このままプロレスを続けるのかということをすごい考えたんですよね。どういう選択をするのか、プロレスを辞めるのか続けるのか…。それが試合前にも考えちゃうんですよね、試合に集中しなきゃいけないのに。

――頭をよぎってしまうわけですね。

そうすると、なんかほんの少しなんですけど、恐怖心みたいなものも芽生えてきて。怪我のこととかも考えちゃったりして、今まで一切そんなこと考えたことないのに。将来のこととかいろんなことを考えちゃったりしたので、一回社長に相談しようと。

――以前から40歳という話はされていたわけですよね。

ちょっといろんなことを最近考えて、1度プロレスを離れてみてもいいですかというような相談とかをしたんですよね。そしたら社長もじゃあ1回休業という形でと。自分は一応、合わせて引退も考えてますということを伝えたら、それも社長は分かってくれて、今回の休業に至りました。

――本当に衝撃の発表ではありましたけど、一度立ち止まって考えるのが必要な時期ってありますよね。

そうですね、本当にもう…。この前の横浜武道館大会(5月4日)で青木選手に敗れてベルトを落としたというのも、これからどうしようかという気持ちが強くなった部分もありましたね。

――あの試合はすごかったですね。

もう会場中が青木を応援してましたよね(笑)

――それだけ岡林選手が強いチャンピオンだったということですよね。大日本のストロングの象徴でもありますしね。

◆無期限休業発表の会見について

■登坂社長の涙

――会見では、登坂社長が少し涙を浮かべてる部分もありました。それについてはどのように思われましたか?

会見で、社長が感極まったのを自分も感じ取りましたけど、そのときにいろんなことが頭をよぎりましたね。入門からいろんなことをやってきましたけど、本当に若手の頃から手をかけてくれて、他団体とかにもいろいろ行かせてもらったり、そのおかげで他団体のベルトも巻けたりしたので、本当にもう感謝しかないですね。自分もちょっと感極まっちゃいましたけど、繰り返し本当に感謝しかないですね。

■関本大介からもエール

――会見を見ているこちら側も感極まるものがありました。パートナーであり、同じくストロングの象徴と呼ばれる関本大介選手とは何かお話されましたか?

はい、いろいろ話しました。「俺は岡林の人生だから何も言わないけど、岡林がここからいなくなることによって、悲しんだり困る人間もいるから」って言ってくれて。「俺は応援するから。俺は俺で大日本をもっともっと大きくして引っ張っていくから」みたいな話をしましたね。最初は驚いて「えーっ!」て言う感じだったんですけど、最後の方は「頑張れよ」って。

――みなさん、岡林さんがどんな選択をしても応援したいと思ってますよね。

本当に感謝しかないです。選手、スタッフ、他団体の選手もそうだし、ファンの皆さんも…、もう感謝しかないですね。

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◆これまでのレスラー人生について

■印象的な試合:両国国技館での関本大介とのストロング王座戦(2015年)

――まだ休業前に試合は残ってますが、これまでのレスラー人生においてこれは印象的だったみたいなことはありますか?

もういろいろありますね。これが一番というのはないですけど、頭に浮かぶのは1回目(2015年)の両国国技館大会ですかね。初めて関本さんに勝って、初めてストロングのベルトを巻いたという試合。自分すごい緊張しいなんですけど、あの試合はなぜか緊張しなかったんですよね。あれ、今日なんかすごい調子いいなみたいな。いざメインってなっても全然緊張しないんですよ。でもメインで入場した瞬間、いきなり緊張してきちゃって。初めての感覚と光景だったんですよね、初めての会場ですり鉢状にお客さんがいたので圧倒されてしまって、緊張がやばかったですね。

――他の会場とちょっと違いますもんね。

リングで関本さんと対峙したときもまだ緊張していて…。でもものすごい緊張しましたけど、逆にそれがよかったのかなと思いますね。

――普段と違う舞台で、また締めを任せれたという部分でもいつもとは違う緊張があったのかもしれませんね。

でもゴングがカーンと鳴って、ロックアップを組んだ瞬間に鼻血が出て(笑)。で、呼吸が苦しくなって…。入場前は全然緊張がなかったのに、入場とその鼻血でもうぐちゃぐちゃになったんですけど、それが逆によかったと思いますね。

――まさに出鼻をくじかれる…

でもそれで気合が入ったというか、いい緊張感とアクシデントが逆によかったですね。ベルトも取れましたし。

■後輩達とのバチバチの闘い

――岡林選手は上の世代、下の世代問わずバチバチした闘いを繰り広げますけど、アストロノーツ(野村・阿部組)とやり合っているのも見ていて面白かったです。

アストロノーツ…、本当に落ち着けって言われましたからね。別に先輩後輩関係ないですけど、後輩なんだからどっしり構えて受けて立つくらいにって言われるんですけど、俺は別に…。

――でも同じ目線に立ってくれるからこそ、後輩達ともやりがいがあったんじゃないですかね。

やっぱり自分が先輩とやるときって、意識してないんですけどやっぱり構えちゃうんですよ。先輩後輩関係なくいきますけど、やっぱりちょっと構えちゃうというか。そういうのがあるからですかね、関係なしにかかってこいっていうのはありますね。自分の後輩にあたる人みんなそうなんですけど、野村とか青木もそうですけど、全然物おじしないんですよね。関係あるか、ぼけみたいな(笑)

――それは岡林選手が関本選手とやるときを見たりして、そういう風に行かないとって思ったのかもしれないですね。

そうですね。とにかく委縮するような人間いないですね、後輩で。

――岡林選手がうまく後輩選手を育てていったんじゃないかなと思います。

でも闘いなんで思いっきり来てほしいし、萎縮してほしくないっていうのは思ってましたね。でももうガンガンくる後輩ばっかなんて、自分がそんなんしなくてもね(笑)

――ベルトは取られましたけど、青木選手は岡林選手に憧れてプロレスラーになりました。

青木は、初めて会ったときに目が違ったんですよね。真っすぐ目を見てきて、ちゃんと目を見て話すんですよね、絶対そらさないのでこいつはすごいなと。どうしても目線をそらすじゃないですか、でも青木は絶対そらさない。

――すごいですね。

リング上でもそうなんですよ。この前のタイトルマッチでもそうですけど、絶対に目線をずらさない。先輩とやるときって、少しずらしたりしちゃうんですけど、絶対ずらさないので本当にすごいですね。

――岡林選手に影響を受けた選手も今やたくさんいますし、そういう後輩の底上げをしたという部分でも満足されたことは多いんじゃないですか?

ありますね。でもこれからは自分でどうしていくか…、とは言ってもその部分も全然大丈夫だと思っているので。それができる後輩たちばかりなので、青木もそうだし、野村もそうだし、神谷、中之上選手もそうだし、そこについて不安は一切ないですね。

――後を託しても大丈夫だと。

絶対、大丈夫です!

◆メジャー団体のベルトも巻きたかった

――そしてこれはやっておきたかったなということはありますか?

いっぱいありますけどね(笑)。言っていいか分からないですけど、メジャー団体のベルトも巻きたかったですね。こういう言い方がいいか分からないですけど、どうせやるなら日本一にという気持ちがあったので。プロレスをやるならとことんやろう、日本一、世界一を目指すという気持ちで入ってきたので、そういう夢はたくさんありますよね。全団体のベルトを獲ってやるとか、団体のエースどころを倒してベルトを獲ってやるぞとか。

――そういう部分は、いくらでも夢は広がりますよね。でもまだ引退と決めた訳ではないですし、まだまだピーク期間は長いので期待したい部分はあります。そして、休業までの日があと少しではありますが、それまで全力で応援したいと思います。今日はありがとうございました。

今回のインタビューにて、試合では迫力の表情、リングを降りれば笑顔で皆から愛される岡林が神妙な面持ちで、じっくり言葉を選びながら語っていたのが印象的だった。

6月30日の休業前最後の試合までのカウントダウンが迫っている。限られた試合ではあるが、岡林の勇姿を是非とも見届けてほしい。

インタビュアー:山口義徳(プロレスTODAY総監督)

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