犬の個性、人の個性~動物介在教育から学ぶ~

こんにちは。内田友賀です。

今日は「犬の個性」のおはなし。

さて、皆さんは「自己紹介をしてください」と言われたら、何を伝えますか?

年齢や性別、経歴や住まいなどでしょうか。それとも、得意なことや苦手なこと、興味があることなどを話すでしょうか。

マナーニの、小学校での動物介在教育の授業では、最初の「介在犬の自己紹介」をとても大切にしています。それは単に、犬の名前や犬種などを覚えてもらうことではなく、犬にも性格や個性があることを知ってもらうことが目的です。

今日は、動物介在教育をテーマに「個性を知ること」について考えてみたいと思います。

自己紹介で、何を伝える?

マナーニの活動に参加するハンドラーさんには、日々の生活のなかで、愛犬の個性を知り引き出すことを大切にしてもらっています。そのため、参加する介在犬はアクティブな子やゆったりしている子、頭脳派など実にさまざま。

これから一緒に授業を受ける子ども達にも性格を知ってもらうため、ファンコマンド(得意技)を披露するときには、性格や特徴も伝えるようにしています。

例えば、「匂いを嗅ぐことが大好き」なロッキーくんは、りんご・きのこ・うなぎのオモチャの中から子どもが選んだものを、お鼻を使って持って来てくれます♪

ラウエ君は、大きな体なのに狭いところを通るのがとっても得意だよ!と、股下の八の字くぐり。

元気いっぱいで、飼い主さんが大好きなジャーニー君は、離れたところから駆け寄って来て、腕をキャッチする「逮捕」を披露。

こんな風に、犬が「好きなことや得意なこと」を楽しそうにやっている姿を見ることで、子どもたちは介在犬と一緒に一喜一憂しながら、キラキラと輝く個性を知るのです。

誰にでもある、得意なことと苦手なこと。

子どもたちも、これからどの介在犬とグループを組むのだろうと、目を輝かせながら応援してくれます。そんな中、時には介在犬も上手にできない事があります。

すると、子どもたちが自ら「ワンちゃんだって緊張するんだと思うよ! 大丈夫、がんばれー!」とエールを送ってくれます。

人も、国語や体育など得意なことが違うように、犬にだって得意なことや苦手なことがあるし、失敗しちゃうこともある。でもそれは、恥ずかしいことではないしダメなことじゃない。誰にでも得意不得意があることや、一生懸命やることの大切さに気づくのです。

個性を知る目的は?

マナーニの授業は、道徳科や生活科の通常授業として実施しています。そのため、授業では児童が学ぶべき「授業のめあて(学習として目指すところ)」というものを設定しています。

私たちの実施する授業のねらいは「犬のことを知って仲良くなるコツを見つけよう」。

初めて会った、言葉の通じない犬とどうやって仲良くなれるか、授業を通して「コツ」を見つけていくことで、自然と他者理解の気持ちを感じ、学んでいきます。

授業の中で、子どもたちは自発的に「このワンちゃんは、匂いを嗅ぐのが得意だったから、こんなゲームをやってあげたら喜ぶんじゃない?」「この子はおとなしいから、静かに優しく遊んであげよう」など、自分がやりたいことではなく、相手の喜ぶことをやってあげようとします。

これが、とても大切な学び。仲良くなるためには、一方的に自分の希望や感情をぶつけるだけでなく、「相手に興味を持ち、知る」という過程が必要なのです。

子どもたちの感想から

そして最後に、子どもたちが見つけたコツや、仲良くなって感じたことを発表し合います。すると、大人でも気づかなかったような学びが、子どもたちの心には芽吹いているのです。

“優しくしたら、優しくしてくれてうれしかった”

“昔は嫌いだったけど今日好きになって、好きなことが1つ増えてうれしかった”

“犬は匂いで人のことがわかるから、人はもっと犬のことを知ったら仲良くなれると思う”

“人と犬は、友だちになれたり信じあえることを知った”

“わんちゃんの気持ちにつながることが大事”

子どもの心から生まれてくる素直な感想に、思わず涙があふれることもあります。

個性を知ること。個性を伝えることの大切さ。

犬たちは人間より、自分の心に素直な生き物です。

好きなことには体中から喜びがあふれますし、苦手なことはやりたがりません。

しかし、時に飼い主は「優等生(理想的)な犬の姿」を勝手に求め、その枠にはめようとしてしまいます。

まずは飼い主が、愛犬をよく観察し、彼らがさまざまな方法で伝えてくれている「好き!」や「苦手…」のサインをキャッチしながら、好きなことを引き出してあげる努力が必要です。

私たちが小学校で伝えている学習のねらい。これは子どもたちのためだけでなく、私たち大人が動物に対して、まず実践すべきことなのかもしれませんね。

皆さんは、どれだけ愛犬のことを知っていますか?

個性が輝く瞬間を知っていますか?

共に喜び合えていますか?

“愛犬の本当の個性”に触れた時、“あなたの個性”もキラキラと輝いているでしょう♡

この活動が、子どもたちだけのものではなく、犬たちのためのものでもあるように。

そのために、私たちができることを考えて実践していくことが大切だと思っています。

Lots of love.

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