住宅ローンの繰り上げ返済をするべき?事前に確認したい5つのこと

例えばボーナスや、中途退職した際の退職金など、まとまったお金が入ったときに「住宅ローンの繰り上げ返済をしようかな…」と思うことがありませんか?

「今は金利が低いから、あまり効果がないのだろうか」「いや、それでも大きなローンを抱え続けるより、少し軽くなったほうがよいのでは」と迷う人も多いかも。

そこで、繰り上げ返済の検討をする際に、確認したいポイントを5つお伝えします。


1. 「住宅ローン控除」は残っているか

住宅ローンを返済中の人は、住宅ローン控除を受けている人も多いのでは?

条件を満たすと、住宅ローンの年末残高の原則0.7%分の税金が戻るうれしい制度。購入時期などによって、控除を受けられる期間が10年または13年で、「まだ数年残っている」という人もいるでしょう。住宅ローンは大きな金額になるので、0.7%でも大きい金額です。

住宅ローン控除をしっかり受けている場合、住宅ローンを低金利で借りられているうちは、繰り上げ返済はいったん保留にしてもよいと思います。「繰り上げ返済に使えるお金」は、いざというときにすぐ返済に回せるように、他のことに使わずに、別口座でとっておきましょう。

ただし、住宅ローン控除は、納めている税金(所得税、住民税)より多く戻ってくることはないため、例えば収入がダウンしていれば、その分納める税金もダウンするため、ローン残高の0.7%分の税金が確実に戻るとは限りません。実際に金額を確認して、住宅ローン控除の効果を見て判断するのもよいでしょう。

2. 「大きなお金」を使う予定はないか

ボーナスや中途退職時の退職金などまとまったお金が入ったときは、気持ちが大きくなりがちなので、要注意です。この先の数年間で、その大きなお金を使う予定はないでしょうか。例えば、車の買い替え、子どもの教育費、家の水回りのリフォームなど、数百万円単位で支出の予定はないでしょうか。

その際、大きなお金があったはずなのに「繰り上げ返済に使ってしまった…」ということになれば、どうなるでしょうか。カーローンや教育ローンなどを借りることになってしまっては、いずれも住宅ローンよりも高い金利のはずですので、もったいないことです。

少なくても今後5年以内に確実に使う予定がないか、教育資金の準備は進んでいるかを確認して、必要があればその分のお金は繰り上げ返済にまわさずに、金利が少し高めのネット銀行の定期預金などに入れておきましょう。

3. 「完済時期」は仕事の引退後か、前か?

そもそも「繰り上げ返済をすべきか」というポイントを確認することも重要です。住宅ローンの完済時期は、いつでしょうか。

もし65歳以降などで、「すでにその時期は、仕事を引退したい年齢だ」という場合は、要注意です。仕事引退後に、大きなローンが残っていると大きな負担になります。その場合は、現役時代のうちに繰り上げ返済をして、完済時期を前倒しにしたいところです。

すでに住宅ローン控除が終わっていて、この先5年くらい使う予定のないお金で、子どもがいる方は将来的に教育資金として必要がなければ、その一部を使って繰り上げ返済をするのも一案です。

4. 繰り上げ返済により「団信」がなくなってもOKか

住宅ローンを組む際には、一般的に団体信用生命保険(団信)に加入します。団信とは、ローン返済者に万一のことがあれば、条件にあわせてローン返済がなくなる保険の一種です。簡単にいえば、Aさんが2000万円のローンを返済中で、Aさんに万一のことがあれば、2000万円分の返済がなくなって完済状態になります。つまり、2000万円分の保険に入っていることと同じなのです。

団信は保険の一種ですので、「繰り上げ返済をすることで、その分の保障額が減る」ということは頭に入れておきましょう。大げさな話、2000万円の住宅ローンを現金で繰り上げ返済をして、その翌日にAさんに万一のことがあっても、団信の契約はなくなっています。当然ですが保険金として2000万円を受け取ることはできません。

そのため、繰り上げ返済をする場合は、必要に応じて新たに民間の保険に加入したほうがいい場合もあります。ただし、健康状態によっては、民間の保険に入れない場合もありますので、先に民間の保険について確認しておくのも一案です。

5. 金利が低ければ、繰り上げ返済の効果は小さい

超低金利で住宅ローンを借りている場合は、月の返済額のうち、利息部分はそれほど大きな割合にはならないものです。そのため、金利が高かった時代に比べると、同じ金額を繰り上げ返済しても、利息軽減効果は、超低金利の今は小さくなります。金利が高い時代の記憶がある親御さんから「繰り上げ返済をするとお得だよ!少しでも早くしなさい」と言われたとしても、金利によってお得度は異なるわけです。

利息軽減効果がどれだけあるのかを確認して、あまり大きくなければ、手元に現金として持っておくことも一つの手です。「いざとなれば、いつでも繰り上げ返済できるお金がある」と思えば、安心感につながるでしょう。

元本保証の預貯金とも組み合わせながら、金利が低いうちは、一部を積立投資にまわす方法もあります。ただし、投資は確実性があるものではないので、予期せぬ相場の急落なども起こります。「あのとき現金を投資に回さず、繰り上げ返済にあてておけば…」と後悔する可能性もあることは念頭に置いておきましょう。高値掴みや特定の投資対象に偏らないように、購入時期を分散させるために積み立てにしたり、世界中の株に幅広く投資する投資信託を選んだりと、少額から少しずつトライしてみるのもよいでしょう。

そろそろボーナスシーズンです。「繰り上げ返済をしようかなと…」と思っている人は、ぜひ上記の5つを確認してみてください。

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