「バチバチにやりあった」 プロ初Vへの“苦闘”を楽しんだ中島啓太

正規の18番、会心のバーディで金谷に追いついた(撮影/高藪望)

◇国内男子◇ASO飯塚チャレンジドゴルフトーナメント 最終日(11日)◇麻生飯塚GC (福岡)◇6809yd(パー72)◇晴れ時々曇り(観衆2313人)

18番を使ったプレーオフの2ホール目。中島啓太は、修理地の右ラフから、164ydの2打目を9番アイアンでベタピンにつけた。30センチのウィニングパットを沈め、激闘を演じた金谷拓実とハグを交わした。耳元で「すごくいいゴルフだったよ」とささやかれると、涙が止まらなくなった。

2歳上で、日本ゴルフ協会(JGA)のナショナルチームなどを通じ、アマチュア時代から背中を追いかけてきた金谷を、この日も追いかけた。3週連続で同じ最終日最終組。3打差を追って、1番(パー5)でイーグル奪取。15番ではグリーン手前カラーから5mのバーディパットを沈めてこの日2度目の単独首位に立ち、ガッツポーズをした。

そこから苦しんだ。16番でティショットを右林に打ち込み、ナイスパーでしのいだものの、17番(パー5)で今大会71ホール目にして初のボギー。フェアウェイから2オン狙いのショットをグリーン左の林に打ち込み、対する金谷はバーディで逆転を許した。18番のバーディで劇的に追いついたものの、最後まで肝を冷やす展開…と思われた。

プレーオフ2ホール目、ベタピンにつけたセカンドショット(撮影/高藪望)

プロ初優勝の呪縛…ではなかった。「金谷さんとバチバチにやりあって、追いついて、勝てて。“もっと優勝争いをしていたいな”と思ってました」。終盤に連発したミスは、単純に自分のミス。16番のティイングエリアは、元々立ちにくかったという。17番の第2打はアゲンストの中、強めにヒットしないと届かない分、力みが入った。

「ワクワクしていました。どっちに流れが来るかわからない展開。その相手が金谷さんの分、力が入りました。プレーしながら“どっちかが負けて、どっちかが勝つんだ”という気持ちになったりもしたし」。最高の相手と、最高の勝負をとことん楽しんでいた。

目標の人・金谷とハグし、祝福の言葉をもらった(撮影/高藪望)

アマチュア優勝を遂げた2021年9月「パナソニックオープン」から約2年半。22年8月の「セガサミーカップ」では、75キロあった体重が扁桃炎もあって66キロまで落ち込み欠場。プロデビュー戦だった同年9月「パナソニックオープン」と10月「日本オープン」では、同学年の蝉川泰果が史上初のアマチュアでのツアー2勝を達成した。

「でも、焦らなかったです。自分のペースでやっていれば、と」。そんなメンタルの強さの源には、やはり金谷の存在が大きい。「バウンスバックが多かったり、すごく勉強になる」。3週連続の直接対決は、プロ初優勝への試練だったのかもしれない。

21年のアマチュアV同様、プロ初Vもうれし泣き(撮影/高藪望)

アマチュアで勝ち、プロで勝った。今後について「ことしはルーキーシーズンだし、最後まで日本ツアーに専念したい」という。来年には海外へ舵を切る。その理由のひとつは、今季から欧州ツアーなどの世界にフィールドを広げてくれた人がいるから。「金谷さんと同じステージに立ちたいですね」。きょうは勝った先輩の背中を追いかけて、中島はもっと強くなる。(福岡県桂川町/加藤裕一)

© 株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン