ハリー王子の暴露本『スペア』完読した(ただの感想、ネタバレ含む)

By 「ニューヨーク直行便」安部かすみ

(c) Kasumi Abe

今年1月に発売されるや否や、米国でも大きな話題となったハリー(ヘンリー)王子の曝露本『SPARE(スペア)』。米、英、加での売り上げが好調だと報じられた。私は発売と同時に図書館で予約したけど、すでに1200人以上待ちでしばらくお預けだったが、5月に入りようやく私の番がやって来た!

英語の本を読むコツ

英語の本は、私は図書館で借りるようにしている。その理由は、

  • 返却日が決まっているから後回しにせず、否が応でも読む
  • 無料で、読んだ後に場所を取らない

我が家には本屋で買ってまだ読んでいない本が山のようにあるから、特に1番目の理由は大きい。

また外国語の本は知らない単語が含まれるが、いちいち辞書を引く時間はない。言葉の意味を確認するのもたまにはいいけど、大抵はコンテキストで理解できる。辞書を引くとどうしても流れが止まってしまうので、私はおそらくこういう意味だろうと推察しながらどんどん読み進めていく。

さてこの『スペア』。416ページとかなり分厚い。しかし私のほかにも待っている人はいるから3週間後の返却日まで読み切らねばならない。

まず私が最初にするのは、総ページから1日の読書タスクを確認すること。計算すると1日18.6ページだから毎日19ページずつ読み進めると、返却日まで読了となる。

ということで移動中も含め毎日1.5〜2時間をこの本に費やし、そして読み終えた!

読了記念に、忘れないうちに自分なりの感想を書いておく。(以下、ネタバレ含む)

本は3章に分かれている。

  • 1. 幼少期の記憶。母ダイアナ妃の死
  • 2. やんちゃした青年期、アフガニスタンに出兵
  • 3. 妻メーガンさんとの出会い、愛に包まれた新たな家族、そして英王室との確執
  • エピローグ:祖母エリザベス女王の死

感想

「興味深い内容だった」というのが感想。英王室の「内部の内部」の話は漏れてこないから、ハリー王子自らが父親のチャールズ国王や兄のウイリアムス皇太子との会話を公表したのは、外野目線では面白い。

前評判通り、ドラッグやアルコールの乱用、年上女性との初体験や前カノ、北極で性器が凍傷になるトラブル、アフガニスタンで敵兵25人(おそらくという数も含む)殺害などの箇所。

他にも、英王室は他国のロイヤルからの贈り物は不要だが捨てられないのである収納スペース(確か地下)に保存していることとか、ケイト妃に受け継がれたダイアナ妃のサファイヤの指輪は兄弟のものだったが兄夫婦の結婚時にハリーの厚意で「諦めた」とか、パパラッチがハリーをしつこく追いかけたのは当時のハリーの肖像の価値が相当なものだったから(住宅モーゲージにもできる数百万円規模)とか、髭のことで兄と揉めた、メーガンと出会った経緯、初めてのデート、キス、ボツワナ旅行、結婚式直前にこぢんまりと結婚の誓いをしたこと、ティアラの件で側近から無視を決め込まれたなど、内部の話オンパレード。

ただ一方で、自分が彼の身内だったらと考えると、冷や汗ものの暴露ばかり。母国も家族も愛しているのにないがしろにされ、理解も得られず、可哀想な境遇で生きてきた。それは理解できる。例えば、自分は兄のスペアとして育てられた、カミラが原因で両親の中に亀裂が入り、母を失ってしまったこと、それが受け入れられず母はどこかに隠れていると思い込んでいた、カウンセラーに会うまで涙が出なかった、国のために戦った上でパニックアタック、プロトコルとか肩苦しいのが嫌いでハグの文化もない家族より米国の文化、メーガンの方が気が合った。なのにメーガンは失礼な奴と兄から反感を買った(兄は怒りっぽい暴力的な性格)、「pity darling boy」(かわいそうなハリー)感満載。

ただ、本全体はハリーの一方通行の意見だから、話半分に聞いていた方が良さそうとも思った。幼少期の話は記憶も曖昧だし、人の文句は読んでいてちょっと飽き飽きした(人の文句を聞くっていうのは辛抱強さが必要)。ハリーはそもそも記事やSNSをいちいちチェックして反応しすぎであり、彼の人生のトラブルは自らが招いているのもあるかもしれない。

また、ここまで内情を暴露し、父や兄、そしてPalace(宮殿の側近オフィス)から理解は得られないだろう。メーガンと結婚の時にケイトが娘のドレスのサイズでいちゃもんつけ、謝罪カードと花が後で来たとか、ケイトにしたらこれは書かれたくなかっただろう。兄もメーガンの件で弟を殴ったことも書かれている。リユニオン(修復)は無理だろう。

最後に、キッチンに舞い込んだ復活の鳥の象徴、ハミングバードについて「飛べ、自由だ」とある。彼が一番求めていたのはこれなんだろう。人生を台無しにしたのは英パパラッチだから、これからの人生、アメリカで自由に生きられると良いだろうが、今後も問題を抱えそうな性格のようだからどうだろうか。

私の周囲の英米人の反応

電車の中で本を読んでいると切符をチェックしに来た車掌さんに「その本どう?興味深いでしょう?」と話しかけられた。

英国人も米国人も、私が話した人は誰もこの本を読んでいなかったが、共通している意見は「どんな家庭でも問題はある。一方的な暴露は良くない」「もっとひどい境遇の人は世の中たくさんいる。甘えるな」ということだった。また「ハリーはやんちゃ坊主だけどそれが可愛いという受け止め方をされていたのに、メーガンと出会い暴露後は英国を敵に回した」「戦地での殺害の告白は家族を危険に晒した行為だ」と話した英国人の友人もいた。

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