国生みを終え、大八嶋国に住むべき神々を生んだイザナミノミコトに起きた悲劇とは?【古事記】

火の神を生んだイザナミが大火傷を負う

国生みを終えたイザナキノミコトとイザナミノミコトは、次に大八嶋国に住むべき神々を生みました。

はじめに生まれたのはオオコトオシオノカミ(大事忍男の神)です。続けて、住居に関わる六柱の神々、海や水門に関わる三柱の神々が生まれました。

次に、イザナキノミコトとイザナミノミコトは、風の神であるシナツヒコノカミ(志那都比古の神)、木の神であるククノチノカミ(久々能智の神)、山の神であるオオヤマツミノカミ(大山津見の神)、カヤノヒメノカミ(鹿屋野比売の神)の四柱の神々を生みました。

さらに、生産に関わる三柱の神を生みました。船の神であるトリノイワクスフネノカミ(鳥之石楠船の神)、穀物の神であるオオゲツヒメノカミ(大宜都比売の神)、そして火の神ヒノヤギハヤオノカミ(火之夜芸速男の神)です。

しかし、悲劇が起こりました。火の神であるヒノヤギハヤオノカミを生んだとき、イザナミノミコトは女陰に大火傷を負い、それがもとで命を落としてしまったのです。

イザナミノミコトは苦しみながらも神生みを続け、死に至るまでに嘔吐したものと大便、小便から男女各一対、六柱の神が生まれました。

「愛しい妻を、たった一人の子のために失うとは……」

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古事記』
監修:吉田敦彦 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1934年、東京都生まれ。東京大学大学院西洋古典学専攻課程修了。フランス国立科学研究所研究員、成蹊大学文学部教授、学習院大学文学部日本語日本文学科教授を経て、同大学名誉教授。専門は、日本神話とギリシャ神話を中心とした神話の比較研究。主な著書は、『日本神話の源流』(講談社)、『日本の神話』『日本人の女神信仰』(以上、青土社)、『ギリシャ文化の深層』(国文社)など多数。

古典として時代を超え読み継がれている『古事記』。「八岐大蛇」、「因幡の白兎」など誰もが聞いたことがある物語への興味から、また、「国生み」「天孫降臨」「ヤマトタケルの遠征」など、壮大なスケールで繰り広げられると神々の物語の魅力から、最近では若い層にも人気が広まっている。本書は神話・物語を厳選して収録し、豊富な図と魅力的なイラストで名場面や人物像を詳解した、『古事記』の魅力を凝縮した一冊!

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