【保険薬局経営者連合会】「生き残るのは外部委託に頼らない自立した薬局」/山村真一会長講演

【2023.06.12配信】保険薬局経営者連合会(薬経連)は6月11日にスプリングフォーラムを開催した。この中で講演した山村真一会長は、「生き残るのは外部委託に頼らない自立した薬局だ」と述べ、中小規模の薬局が調剤の一部を委託することに関して懸念を示した。スピード、安全性、コストの3つ面から効率化にはつながらない可能性が高いとの考え。これまで薬剤師会関係者からは外部委託に懐疑的な意見は出ていたが、薬剤師会以外の団体からも外部委託のメリットを疑問視する声が出た。

外部委託をめぐっては、中小規模の薬局にも利点があるとの見解が国から示されているが、山村会長はこれに疑問を呈した。企業内委託(インハウス)であればメリットは出やすいと見る一方で、他社への委託では、スピード、安全性、安全性を担保するためのコストなど、さまざまな面で効率が上がるとは言い切れないとの見方を示した。責任の所在も明確であるという点も含め、外部委託はあくまで一定規模のある企業の企業内“内部委託”(インハウス)でのみメリットが生じる仕組みではないかとの懸念を示した。

「これから薬局は意識的に自己革新を行い、未来はこうなるだろうという未来予測ではなくこうありたいという力強い意識を持つべき」とし、「生き残る薬局は保険調剤や外部委託に依存せず、医薬品提供の責任を果たせる自立した薬局だ」と述べた。

フォーラムでは他の役員からも外部委託には懸念の声が出た。

ある役員は「外部委託は必要なのか、再度考える必要がある。当薬局は8年前から機械化、ファクトリー化していて、内部委託もしている。外部委託に対応できる。その当薬局から考えても、“ちょっと違うんじゃないか”と思っている」とし、特に一包化ついては「実は不確定係数がありすぎて個別化業務に入る」と指摘。「患者ごと、処方医ごとに約束事がある。これを効率化することは無理だ。それをやるということは結局、国民のニーズに対してここまでしかできませんよということをすることになる」と懸念を表明。「一番しんどいから、効率化すれば楽になるという考え。チェーン薬局やドラッグストア、在宅専門薬局が内部委託をインハウスでやるというのが基本的にある話なのかなと思っている」と指摘した。
またチェーン薬局やドラッグストア企業が外部委託を推進した場合、受付業務だけする薬局が増加するのではないかと予測した。

加えて自身が東日本大震災の発災10日後に現地に支援に入った経験にも触れ、「当時、医薬品提供は地元の薬局の薬剤師、自らも被災者である薬剤師らが担っていた」と話し、「やっぱりいざという時に市中の薬局の在庫っていうのは絶対に必要。モノである医薬品のない薬局は果たして本当なのかと疑問を持たざるを得ない」と語った。

編集部コメント

外部委託に関しては厚労省の検討会でどのような枠組みであれば実施が可能かの議論が行われ、とりまとめも出ている段階であり、遅かれ早かれ導入は実現する見込みだ。
ただ、責任の所在や安全性を担保するための委受託間の確認方法などの詳細については、厚労省でも実証実験を通して検討が進む見込み。また、外部委託が導入されたとしても採用するかどうかは個々の薬局、薬剤師の判断となる。その意味でもそれぞれの薬局、薬剤師がどのように外部委託を考えるか、賛否両方の議論があることは当然だろう。

その上で、一点だけ気がかりのは、国も地域完結型医療を目指す中で、外部委託に関しては地域内でどのように合意がはかれるのか、はやくも懸念が濃厚な情勢ということだ。地域医療の側面からは、どのような医薬品提供のあり方が効率的なのか、感染症対策、災害対策の側面も含めてどのようにあるべきなのか、地域で話し合われることが結果的に最も効率的な体制構築につながるのではないか。最終的には地域での話し合いが進展することを期待したい。

薬経連では、そういった地域での医薬品提供体制構築のためには、日本薬剤師会や都道府県薬剤師会よりも小さい地域単位である地区薬剤師会の役割が大きくなるとの考えで、今秋には他団体との共同で地区薬剤師会の好事例などを報告し合い、今後の役割拡充について話し合うシンポジウムを企画したい意向も示した。

© 株式会社ドラビズon-line