ライトアップ「統一感必要」 平戸市と市民団体がそれぞれ事業展開 市が年度内にルール策定へ

上から「ほのあかり」事業でライトアップされた町屋=平戸市崎方町、「平戸城下ナイトミュージアム」でライトアップされた亀岡神社境内=平戸市岩の上町

 長崎県平戸市中心部で市と市民団体がそれぞれライトアップ事業を展開している。夜型観光を充実させて観光誘客を目指す点では一致するものの、明かりの印象が極端に違うため、住民からは「統一感が必要」との指摘が出ている。事前に十分な説明や調整を怠った市に対する批判も。このため、市はライトアップに関するルール「夜間景観計画」を年度内に策定しようとしている。
 先に昨秋スタートしたのは市観光課主管の「平戸城下ナイトミュージアム」。平戸城本丸や亀岡神社、平戸オランダ商館をカラフルに彩る。松浦史料博物館と「寺院と教会の見える風景」の通りには単色の照明を設置。宿泊客向けに週末限定で、ライトアップスポットなどを巡回するバスも無料運行している。
 一方、市民団体「平戸まちづくり運営協議会」(谷田美幸会長)は今春から「ほのあかり」と銘打ち開始した。照明は淡いクリーム色だけ。旧平戸城下地区8町の一つ、崎方町で希望する住宅、事業所に設置。説明会も実施し、住民の理解や協力を得ながら2026年度まで順次、他の7町にも広げる計画だ。
    
 複数の色が短時間で変遷する「ナイト-」に対し、近隣住民や神社関係者から「古い町屋を中心に落ち着いた景観の街並み、信仰の場に合わない」などと見直しを求める声が市に寄せられた。「ほのあかり」の準備中、似て非なる「ナイト-」が突然始まり、戸惑いや不満を抱く住民は少なくない。
 「ほのあかり」事業対象地区の自治会役員は「市から『ナイト-』について事前説明がなかった。観光客の案内などは協力できるのに、それもできない」と不満を漏らす。同協議会の谷田会長も「市民の声を聞いて事業を進めてほしい。明かりの性質が違うと観光客から違和感を持たれるのではないか」として、市に「ナイト-」事業の見直しを求める。
 これに対し市観光課は「市民への説明が十分でなかったのは確か」としつつ、「好意的な声だけでなく批判もあったことを踏まえ、本年度の取り組みを詰める」と事業継続の構え。ライトアップスポットを増やして「ほのあかり」との相乗効果を模索する。
     
 もともと「ほのあかり」事業対象地区では、市が19年度まで15年間、現存する古い町屋を参考にするなどして家屋の景観に統一感を持たせる「街並み環境整備事業」を実施。住宅や店舗など168棟が自己資金と市補助金で外観を改修した経緯がある。
 21年度には市都市計画課が同整備事業を総括する一環として、住民向けワークショップを実施。二つのライトアップ事業が生まれるきっかけになった。
 印象の統一を望む声を踏まえ、同課は夜間景観計画策定を目指す。ただ「あくまでルール。守ってほしいが、条例とは違い、強い拘束力は持たせられない」とする。

© 株式会社長崎新聞社