カネミ油症 都内でシンポ開催 長崎の被害者も参加 次世代調査で「救済」期待 

 カネミ油症の次世代被害に関する調査結果が今月下旬に報告されるのを前に、シンポジウム「化学物質は世代を超える」が10日、東京都内であった。オンラインを含め本県被害者らが参加。長崎県諫早市の油症患者下田順子さん(61)は「(子どもらの)救済の道につながってほしい」と述べ、調査の成果や救済に向けた官民の対応に期待を寄せた。
 油症の主因ダイオキシン類は母親の胎盤や母乳を通じ、子に移行する可能性が指摘されている。全国油症治療研究班(事務局・九州大)は2021年、油症被害者の子や孫ら次世代に特化した健康影響調査を公的には初めて開始。救済に向けた医学的根拠を積み上げており、今月23日に被害者団体が出席する会合で調査結果を報告する。健康影響が把握されれば、国や原因企業は次世代被害者の救済策を問われることになる。
 シンポは、カネミ油症被害者関東連絡会とカネミ油症被害者支援センターが企画。下田さんは、長女が幼少期から複数の症状に悩まされているのに、ダイオキシン類の血中濃度を重視する診断基準の壁に阻まれ油症認定されていないと説明。「世代を超えていろんな苦しみがある。子どもたちが安心して医療を受けられるよう救済の道につながってほしい」と話した。
 同研究班は1月、アンケートに応じた全国の子や孫計約400人のうち、油症検診を受けたのは4割ほどと報告している。このためシンポでは、国や原因企業が「母体数が少ない」などとして次世代救済を回避しないかなど、危惧する声もあった。
 講演したNPO法人ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議代表理事の中下裕子弁護士は、ダイオキシンや環境ホルモンなど有害化学物質から人々を守るための規制が必要と訴えた。

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