【今週のサンモニ】支離滅裂でバカバカしいダブスタの畠山氏|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。今週はピースボート共同代表・畠山澄子氏の支離滅裂発言を斬る!

中国脅威論は一面的だ!

今週のサンモニでやらかしてしまったのは、ピースボート共同代表の畠山澄子氏でした。畠山氏は、なんと覇権主義で人権蹂躙国の中国を極めて無理やり一方的に擁護してしまったのです(笑)。

今週の番組セグメント「風をよむ」のテーマは「台湾有事の可能性は?」でした。畠山氏は次のようにコメントしています。

畠山澄子氏:こういう中米関係の話が出てくると、どうしても中米の対立になぞらえる形で、日中の関係も敵対するものであるとか、中国を脅威とみなすような論調というのがセットで高まることが凄くある。

ただ、私は、それは非常に一面的な見方だと思っていて、例えば、経済的な繋がりでは、中国は日本の最大の貿易相手国で、企業にいる人も物凄く実感していると思う。

私も生まれて物心ついた時から中国と日本の間では物や人が行きかっていて、中国の人達も身近に暮らしているし、中国政府も身近にある。内閣府が外交に関する世論調査をやっていて、世代別で見てみると、実は若い人で中国に親しみを覚えるという人は41%を超えていて他の世代より格段に高い。なので、中国と物理的距離も近い日本は、中米の対立に引っ張られる必要はない。

本当の意味での現実を踏まえた着実な外交をとにかく続けてほしいと言い続けたい

ピースボート共同代表の畠山澄子氏

「米中関係」という慣用的な言い回しを「中米関係」と言い換える畠山氏は、政治的な立場も米国よりは中国の立場に立っているようです。

中国に「親しみを感じる人」はわずか2.2%

まず日本が中国と政治的に対立しているのは、米国が中国と政治的に対立しているからではなく、日本の政治的価値観と中国の政治的価値観が明確に異なるからです。

日本は、他者の自由権を侵さない限り個人の自由権を行使できる【自由主義(リベラリズム)】と、統治者と非統治者が同一である【民主主義】を憲法の精神としています。

一方、中国は、国家が与える社会権のために個人の自由権を制限する【反自由主義】と統治者と非統治者が同一となりえない民主集中制という名の【権威主義】を国家の前提としています。

尖閣侵犯問題は勿論のこと、この中国の専制体制に関連して発生している人権問題であるウイグル問題・チベット問題・台湾問題等をめぐって日中が政治的に対立することは至極当然です。また、日本と同様の政治的価値観を共有する米国が同様に中国と対立するのも当然です。

一方、日本経済は【資本主義】、中国経済は【国家資本主義】の体制を取っていて、実際には不公平ではあるものの、日本が不利益を甘受することで日中には経済的関係が存在しています。

中国が日本最大の貿易相手国であることは間違いありません。しかしながら、今日の国際社会では、人権に直結する政治的価値観は経済的関係よりも優先されます。その代表的な例が、一方的にウクライナに侵攻したロシアに対する経済制裁です。畠山氏はこの国際社会の常識を完全に無視し、経済関係を根拠に、中国と政治的対立することを問題視しています。

中国と日本の間で物や人が行き来していることや中国の人たちが身近で暮らしていることを根拠にウイグル問題・チベット問題・台湾問題等の人権弾圧を見過ごすことも不合理です。

何よりも、「中国政府も身近にある」などという意識を大部分の日本国民が持っていないのは自明です。その証拠に、内閣府が毎年行っている『外交に関する世論調査(令和4年10月調査)』では、中国に「親しみを感じる人」はわずか2.2%、「どちらかといえば親しみを感じる人」でも15.6%に過ぎません。

『外交に関する世論調査(令和4年10月調査)』

「中国政府も身近にある」わけがない

また世代別では確かに若い人が親しみを持つ割合が最も高いと言えますが、畠山氏の言う「内閣府の外交に関する世論調査で若い人の41%が中国に親しみを持っている」という事実はこの調査結果には認められません。

「親しみを感じる人」が8%、「どちらかといえば親しみを感じる人」が20%で両者を足しても28%にしかなりません。それに対して「親しみを感じない」が39.3%、「どちらかといえば親しみを感じない人」が32.7%で両者を足すと62%が親しみを感じていないことになります。

客観的調査においてこんなに国民が親しみを感じていない中国に対して「中国政府も身近にある」などとするのは、テレビ放送を使った政治的宣伝、すなわち【ブラック・プロパガンダ】と言えます。勿論、主権国家と平和な外交を行うことは重要ですが、人権蹂躙国家に対して問題を指摘しないことは人権蹂躙に加担していることと同じです。

欧米各国ではLGBT差別禁止で狂暴なヘイトクライムが激化

なお、この日の放送で畠山氏はLGBT法整備について次のようにコメントしています。

畠山澄子氏:LGBT法案については、当事者団体などから「骨抜きだ」「むしろ後退してしまった」という批判や抗議の声が上がっている。当事者団体だけでなく、結構企業も批判している。

修正案で「すべての国民が安心して生活できるように留意する」という一文が修正案に入ってしまった。マイノリティである当事者がマジョリティ側にわきまえる形で理解増進法があるということは、むしろ当事者を萎縮させる方向になるし、この一文の影響で当事者差別に繋がる可能性があるのでとても危いと同時に当事者にとってはとても怖い法律になるだろう。

性的マイノリティが抑圧されている不平等不均衡が社会の中にある中で、これを軽視して全ての人々の安心に留意としてしまうのは、マイノリティの人たちの人権や尊厳は最終的にはマジョリティの人達が認める範囲でしか守られないというメッセージになってしまう。

そもそも、この法整備は一部の当事者と支援団体が主張したものであり、他の当事者が同じ主張を支持しているとは限りません。

LGBT法整備における最も深刻な懸念は、欧米各国ではLGBT差別禁止という【リーガル・モラリズム】に一部市民が反発し、殺人を含む狂暴なヘイトクライムを逆に激化させていることです。法整備によってこのような反発が発生することは、法整備の必要性を感じることなく静かに生活しているLGBTの当事者にとっては物凄く迷惑な話に他なりません。

畠山氏が、「すべての国民が安心して生活できるよう留意する」という一文が修正案に入ったことを非難するのは、マイノリティがマジョリティの権利を侵すことを正当化する危険思想です。マイノリティは、必ずしもリベラリズムの正義における最も不遇な弱者とは限りません。

セクシュアリティのパターンを考えた場合、【格差原理】による合理的配慮が必要となる最も不遇な弱者は、トランス女性ではなく、肉体的・生理的な弱さを持つシス女性です。このようなリベラリズムに関する浅はかな勘違いこそが社会に不平等を生むのです。

そして、極めつけの疑問は、マイノリティの権利を無批判に擁護する畠山氏が、マイノリティ民族の人権を蹂躙する世界最大のマジョリティである中国を無理やり擁護し、その脅威を指摘することを「一面的」と批判したことです。こんな支離滅裂でバカバカしいダブスタはありません。

同性婚に必要なのは憲法改正

同性婚訴訟における5つの裁判体の判決が出揃ったことを受けて弁護士の三輪記子氏は次のような主張を展開しました。

三輪記子氏:同性婚訴訟の5つの地裁のうち4つで違憲または違憲状態という判決が出たことは非常に重い判断だ。これは何を意味するかと言うと「速やかに国会が同性婚の実現をしなければいけない」という司法からのかなり強いメッセージが出たと受け取るべきだ。一刻も早く立法府が動くべきだ。

ここで注意する必要があるのは、これらの判決はあくまでも「同性婚を認めないことは憲法24条2項に対して違憲」とするものです。

しかしながら、もし同性婚を認めれば「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」とする憲法24条1項に対して違憲という判決が下されることは自明です。なぜなら、当時のソドミー法で同性愛が犯罪行為とされていた米国が主導した日本国憲法の「両性の同意」は、「男女の同意」という意味以外に考えられないからです。

もし、三輪氏が主張するように国会が同性婚を実現する法律を制定したら、それこそ明確な憲法遵守義務違反ということになります。

以上のことが何を意味するかと言うと「同性婚を認めないことは憲法24条2項に対して違憲である」と同時に「同性婚を認めることは憲法24条1項に対して違憲である」ということであり、憲法24条は明らかに矛盾しているということです。

つまり「国会が実現しなければいけない」のは、憲法24条の矛盾を解消するための憲法改正の発議であり、「同性婚の実現」ではありません。

実は、同性婚の最大の敵は政府でも自民党ではなく、護憲政党として憲法改正を認めない立憲共産党なのです。

藤原かずえ | Hanadaプラス

© 株式会社飛鳥新社