コルベットに轢かれ足を負傷も“強行出場”でクラス優勝「何が犠牲になっても勝ちたかった」とシェーラー

 6月10~11日、フランスのル・マンにあるサルト・サーキットでWEC世界耐久選手権第4戦ル・マン24時間レースの決勝が行われ、LMP2クラスはインターユーロポル・コンペティションの34号車オレカ07・ギブソン(ヤコブ・スミエコウスキー/アルベルト・コスタ/ファビオ・シェーラー組)が制した。

 波乱の幕開けとなったスタートを担当したシェーラーは、最初のピットストップでドライバー交代のためにマシンを降りた際、近くのピットボックスへ向けてマシンを寄せていたニッキー・キャツバーグがドライブする33号車シボレー・コルベットC8.R(コルベット・レーシング)と接触してしまった。

 シェーラーはこの時の状況について、「クルマから飛び降りてピットへ走ろうと思ったら、33号車コルベットに轢かれてしまった」とSportscar365に語った。

「彼(キャッツバーグ)は僕の左足を踏み越えていった。けれど、もしレーシングカーのスプリッター(空力パーツ)が足に当たっていたら、もう運転することは不可能だっただろうから、まだ運転できたことは不幸中の幸いだった」

 接触の際に33号車コルベットをドライブしていたキャツバーグは、このアクシデントの原因をふたりの『コミュニケーションの行き違い』にあると述べ、接触の状況を振り返る。

「僕がピットに入ってきたところで、彼は私のマシンにぶつかった」

「彼はマシンの前を走っていき、まさにそこに私は入っていったんだ。僕は自分たちのピットボックスに入ろうとしていたので、ほかにどこにも避けることはできなかった」

■アドレナリンが出て痛みを我慢できた

 シェーラーとチームは、スティントの間にアイシングとマッサージを行って痛みをコントロールし、ケガを負いながらもレースを続けることを選択した。

 ドライブへの影響については「通常は足先を使う操作を、脚全体で行うようにして対処した」という。

「足を休めるための時間を多く取るために、その後の走行プランを変更したが、どうにかうまくいったよ。マシンに乗って数周すると、アドレナリンが出てきて痛みもどうにか我慢できた」

「今週は優勝のチャンスがあるだろうとテストデーの時から分かっていたから、足の痛みも忘れてあきらめずに戦うことができたんだ」

 ケガにも耐えて得たル・マン24時間の優勝によって、チームは初めてWEC LMP2クラスのポイントランキング首位に浮上。シェーラーは熾烈な争いが繰り広げられる同クラスでの優勝を「なおさらいい香りがするよ」と語り、シリーズタイトルの争いへの期待を述べた。

「今のLMP2クラスは、ほとんどのライバルがファクトリーチームと言っていいレベルにあると思う」

「もちろん残りのラウンドも激しい競争になるだろうが、今は世界チャンピオンの争いを互角にできていると感じているよ。これからのシーズンがどうなるか、しっかりと見ていこう」

2023年WEC第4戦/第91回ル・マン24時間レース“100周年記念大会”を制したインターユーロポル・コンペティション(左からヤコブ・スミエコウスキー、ファビオ・シェーラー、アルベルト・コスタ)
2023年WEC第4戦/第91回ル・マン24時間レース インターユーロポル・コンペティション(ヤコブ・スミエコウスキー/アルベルト・コスタ/ファビオ・シェーラー)
2023年WEC第4戦/第91回ル・マン24時間レース インターユーロポル・コンペティション(ヤコブ・スミエコウスキー/アルベルト・コスタ/ファビオ・シェーラー)

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