【物流2024年問題】宅配便にも影響 解決策として期待「RORO船」は“救世主”になるか?(静岡県)

これまで通りに荷物が届かなくなる…。いま物流業界では危機感が広がっている。背景にあるのはドライバーの「働き方改革」だが、この問題の解決策として期待される静岡県内の取り組みを取材した。

6月12日、報道陣に向けて開かれたのは「RORO船」といわれる貨物専用船の説明会。これはトラックの荷台部分だけを運搬することができる船で物流業界が抱える問題の解決策の一つとして注目されている。

ネット通販の拡大などで、需要が増す物流業界。

国土交通省のデータによると、宅配便の取り扱い個数は右肩上がりで、2016年から2021年までの間に9億個以上増加している。一方で物流業界には「2024年問題」と呼ばれる危機が迫っている。その影響は、私たちの身近な生活にも…。

ヤマト運輸は4月から「宅急便」などの料金を値上げしていて、6月から一部エリアで翌日配達ができなくなると発表。

静岡県内から翌日配達ができなくなるのは浜松市や磐田市などから福岡県に運搬する荷物で、これまでは最速で「翌日14時以降」の「お届け指定」ができたが、これが「翌々日午前中以降」に変更となった。背景にあるのは2024年から始まるドライバーの働き方改革。

現在、トラックドライバーには時間外労働時間の上限がないが、それを2024年4月から『年間960時間』に制限することになる。これにより、1日に運べる荷物の量が減ってしまうなどの問題が指摘されているのだ。

野村総合研究所によると2025年には全国の荷物の28パーセントが、また2030年には35パーセントが運べなくなるという推計が出ている。

静岡県トラック協会の佐野会長も、この規制は「物流業界に大きな影響がある」と話す。

(静岡県トラック協会 佐野寛会長)

「長時間労働で輸送をこなしています。今まで何とか一往復できていたところが、途中で運行をストップしなくてはいけない。そういった意味でかなり影響が出てきます」

その解決策の一つとして注目されているのがRORO船だ。

RORO船はトラックの荷台部分だけを切り離して運ぶため、原則、船にドライバーは乗船しない。

港に着くと、荷台部分は別のトラックにつながれて、そのまま配達先へと運ばれる。そのため陸路で輸送するケースと比べ、ドライバーの労働時間を大幅に短縮することができる。

現在、清水港からは2つの船会社が大分県と北海道に向けて就航していて、トラック会社も期待している。

(鈴与カーゴネット静岡支店 米澤貴博 支店長)

「乗務員不足というところでは、RORO船はだいぶ効果的な手段・陸上輸送のトラックでは燃料費も高速代も乗務員の人件費もかかります。それと比較すればRORO船輸送はコスト面でもメリットがあります」

静岡県は今後、2030年代に専用ターミナルを拡張する計画で、RORO船の普及に力を入れる方針だ。

(静岡県清水港管理局 齋藤昌昭局長)

「袖師地区のRORO船専用ターミナルは現在は1隻がつけるような岸壁だが、それを3隻同時接岸できるような施設整備をする予定です。(2024年問題の)解決の一助を担うと考えているので、県としてもRORO船の就航拡大ついて積極的に取り組んでいきたいです」

来年に迫った「2024年問題」。新しい輸送方法の模索が静岡県内でも始まっている。

© 株式会社静岡第一テレビ