<社説>県が反撃能力配備反対 民意踏まえさらに行動を

 安保関連3文書の改定で政府が保有を決めた敵基地攻撃能力(反撃能力)を有するミサイルについて、玉城デニー知事が県内への配備を行わないよう求める要請書を政府に提出した。 都道府県が配備反対を伝えたのは初めてだ。沖縄の民意を踏まえた行動であり、さらなる行動と発信を求めたい。

 玉城知事は2021年12月、岸田文雄首相の敵基地攻撃能力保有を示唆した所信表明に対し、県議会で県内配備「断固反対」を表明した。昨年12月の3文書改定を受け、ただちに県として反対を伝達する方針だった。しかし、4月の宮古での陸上自衛隊ヘリコプター事故に配慮するなど、延期を繰り返してきた。

 その間、知事は2月に東京でのシンポジウムで「憲法の意思とは違うと明確に反対する」と述べた。3月には県議会が「『抑止力』向上ではなく、外交と対話による平和構築を求める」意見書を賛成多数で可決し、外務省、内閣官房に提出した。今回の県の政府要請は遅すぎた感もある。

 要請書は「抑止力の強化がかえって地域の緊張を高め、不測の事態が生ずることを懸念しており、ましてや米軍基地が集中していることに加え、自衛隊の急激な配備拡張により、沖縄が攻撃目標になることは、決してあってはならないと考えています」と訴えた。

 そして、敵基地攻撃能力ミサイル反対に加え(1)今後の自衛隊配備の予定・検討状況について地元の理解が得られるよう事前に丁寧に説明を行う(2)自衛隊の運用について速やかに県や関係市町村および住民に情報を提供し地元の意見表明ができるよう必要な協議を行う(3)自衛隊の配備は在沖米軍基地の整理縮小とあわせて検討する―ことを求めた。

 要請書は首相、官房長官、防衛相宛てだが、知事は防衛、外務の副大臣にしか会えなかった。県内外へのアピール効果を弱める狙いもあったと、自民党関係者は分析した。相変わらずの民意を軽視する政府の姿勢である。

 今回の要請で政府側は「南西地域への部隊配備は抑止力になり、攻撃される可能性を減らすものと考えている」と回答したという。これまでも繰り返されてきた見解だ。

 相手に攻撃を思いとどまらせるのが抑止力なら、どの程度なら十分なのか。結局、際限のない競争になり、偶発的に戦争になる危険が増すだけだ。戦争にならなくても、敵基地攻撃能力を持たなくても、基地の拡張、装備や訓練の強化が地域に負担となり、住民の不安を増大させる。

 県は4月に「地域外交室」を設置し、今月、照屋義実副知事が韓国を訪れ、中国と台湾を玉城知事が訪問することも計画している。交流による相互理解と信頼が「脅威」を小さくし、戦争を抑止する。軍拡競争の歯止めとなり、平和構築につながる沖縄県の自治体外交に期待する。

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