令和にヒットを飛ばし続ける森口博子!大人のためのアニソンカバーで不覚にも涙が…  6月13日は森口博子の誕生日。ガンダムだけじゃない!「ANISON COVERS」も必聴!

ひたむきに音楽に向き合ってきた森口博子

2019年から2022年に発表された3作のカバーアルバム・シリーズ『GUNDAM SONG COVERS』がすべてオリコンTOP3入り(平成までの最高位は10位)、また2022年のシングル「Ubugoe」(映画『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』主題歌)が29年ぶりのオリコンTOP10入りと、令和になって次々とヒットを飛ばしている森口博子。ひたむきに音楽に向き合ってきた彼女のキセキ(奇跡)的なキセキ(軌跡)は、シニア世代にとっても大いに励みになることだろう。

そんな森口博子が、2023年に『ANISON COVERS』を発表した。本作は、80年代から90年代のアニソンをカバーしたアルバムで、筆者などはヒットチャートの上位にならない限り、アニソンを聴く機会がないので、こうしたアルバムは意外な発見が多い。決して “食わず嫌い” というのではなく、知る機会がないのだ。おそらくテレビやラジオの音楽番組から好きな曲を見つけてきた昭和ポップス世代の多くが、そうなのではないだろうか。

音楽番組「Anison Days」などを通して見つけた魅力的なオリジナル曲

本作は、森口がMCをつとめる音楽番組『Anison Days』などを通して見つけた魅力的なオリジナル曲を、大人の音楽リスナーに届けるために様々なジャンルのアーティスト(DJ赤坂泰彦、押尾コータロー、酒井ミキオ、塩谷哲、武部聡志、寺井尚子、マーティ・フリードマン等)とコラボし、森口自身が新旧どちらの関係者にも敬意をこめてカバーしている。

様々な仕事をこなすなど、どうにかして、自身の歌を届けようとしてきた彼女だからこそ、どうにかして、このアニソンの素晴らしさを届けようとしているのが、作品自身は勿論、アートワークや自身による楽曲解説からも伝わってくる。なおかつ、仕事や家事に追われてじっくり聴くことの出来ない大人リスナーがサラリと聴いても楽しめる。この辺りのさじ加減も、彼女が長くお茶の間で活躍してきた秘訣なのだろう。

珠玉の全11曲の中から特におススメしたい5曲

既にメディアではリード曲となっている「悲しみよこんにちは / with 酒井ミキオ」(これもビッグバンド風の演奏がゴージャスで悲しみを受け止める器が深化していてオススメ)が話題となっているので、ここでは、珠玉の全11曲の中から、その他にも特におススメしたい5曲について触れてみたい。

2曲目 「そのままの君でいて / with 武部聡志」
『機動警察パトレイバー』オープニングテーマ
作詞:森由里子
作曲:羽田一郎
オリジナル歌唱:仁藤優子
オリコン最高位:52位
TOP100内累計売上:1.8万枚

「夢は君の武器のはずだよ」「自分に負けるよな 君は君じゃない」といったフレーズが胸に刺さるエールソング。しかし、サビで「So never cry いつも君を見つめてるよ」とあるように、作品全体では相手を全面的に信頼し応援している作風で、森口の励ます部分は力強く、全体には優美に、という緩急あるボーカルや、武部聡志によるピアノロックなアレンジで、大人のためのエールソングとして自然に心に浸透する。

3曲目「LOVE SONG」
『ガサラキ』エンディングテーマ
作詞:種ともこ
作曲:新居昭乃
オリジナル歌唱:種ともこ
オリコン最高位:89位
TOP100内累計売上:0.2万枚

個人的には、本作の中で最も衝撃が走った楽曲。「こわして 私の心を」といった内面を深く掘り下げた歌詞、太古からの流れを汲んだメロディー、なにより、“これ、誰が歌っているの!?” と分からなくなるほど、コブシを回しまくったり、感情のあまり声を裏返したり、デビューから38年目にして新境地を見せる森口のボーカルに驚かされる。今の彼女だからこそ歌える深遠な楽曲。

5曲目「風のノー・リプライ / with 寺井尚子」
『重戦機エルガイム』主題歌
作詞:売野雅勇
作曲:筒美京平
オリジナル歌唱:鮎川麻弥
オリコン最高位:17位
TOP100内累計売上9.7万枚

売野雅勇の美的な言葉、筒美京平の美メロ、鮎川麻弥の美声と、もともと完成度の高い流麗なアッパーチューンで、これをカバーするのは相当な勇気がいるのでは? と懸念したが、実際に聴いてみると、バンドの演奏と寺井によるバイオリンの音色、そして森口の適度に熟したボーカルが一体となって大人のポップスになっていて感心した。オリジナルに対抗したわけでも、奇をてらったわけでもなく、“どちらも有り” と思わせるのがお見事。

8曲目「GHOST SWEEPER / with マーティ・フリードマン」
『GS美神』主題歌
作詞:有森聡美
作曲:大森俊之
オリジナル歌唱:原田千栄
オリコンTOP100圏外

いわゆるアニソンを敬遠していそうな人が大喜びしそうなほど、クールかつセクシーなポップス。いや、『ルパン三世』や『カウボーイビバップ』などスリリングな劇伴が好きな人もいるので、それも一概に言えないが、これも、J-POPもアニソンも歌ってきた森口だからこそラブソングとしても聴こえる。声量も歌詞の理解力も必要とされる難曲が歌えるのも、彼女の努力の証。

9曲目「夢を信じて / with 塩谷哲」
『ドラゴンクエスト』主題歌
作詞:篠原仁志
作曲:徳永英明
オリジナル歌唱:徳永英明
オリコン最高位:3位
TOP100内累計売上39.7万枚

これは、オリジナルの徳永版も大ヒットしたし、森口自身が得意とするエールソング系だし、特に気負わず聴いていたのだが、不覚にも涙が出てしまった。「夢を信じて 生きていけばいいさ」よりも「破れた翼を 胸に抱きしめて」に力のこもった森口の歌唱に、彼女のこれまでのリアルなストーリーが見えてきそうだし、そっと寄り添うような塩谷哲のピアノ演奏も優しい。たとえ言葉や音数が少なくても、大切なものは伝わることを信じられる逸品。

人生の岐路に立った時、聞いてほしいカバーアルバム

この他にも、ボーナストラックとして収録された自身が歌っていた「サムライハート」のセルフカバー「サムライハート ~2022~」も、当時オリコン最高位88位、TOP100内売上0.2万枚とは思えないほどパワフルで引き込まれるし、全11曲どれも聴きどころが多い。

本作を聴いていれば、オリジナルやお手本に愛をこめた方が良いことや、当時知られていなくても、時が立てば評価されうること、そして長年努力し続けていれば、時にはご褒美として結果が伴うということなど、このカバーアルバム1作から学ぶことが非常に多い。人生の岐路に立った時、に軽い気持ちで聴いてみると、何かが変わるかもしれない。

カタリベ: 臼井孝

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