「アイドル選挙啓蒙ポスター」は効果なし? 識者が指摘する政策の問題点

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。6月2日(金)放送の「FLAG NEWS」のコーナーでは、女性アイドルを起用した“選挙啓蒙ポスター”について取り上げました。

◆選挙啓蒙ポスターにアイドルはあり?なし?

4月に行われた東京都・八王子市議選で選挙管理委員会は、女性アイドルが投票を呼びかけるポスターを掲示。これに対し、元市議会議員ら女性4人が「男女共同参画の推進に逆行する」としてポスターの撤去を求めていました。

6月1日には八王子市・苦情処理委員会が開かれ、今回の選挙啓蒙ポスターは「男女共同参画に逆行すると判断することはできず、撤去の必要はない」と意見をまとめた一方で、「選挙管理委員会に女性がいないことは問題であり、男女比をなるべく近づけるよう要望する」としています。

政治広告の代理店業務にも携わる株式会社POTETO Media代表取締役の古井康介さんは、今回のようなアイドルや女優が起用された選挙啓蒙ポスターについて「(以前から)これで本当に(人々が)投票に行くのかと思っていた」と率直な感想を述べます。その上で、「今回の選挙で何が決まるのか、投票すればどのような社会になっていくのかなど、そこをもっと押し出したほうがいい」と主張。

コラムニストの河崎環さんは「あのクリエイティブで何が伝わるかといえば、選挙が何日に行われるということだけ」と言い、「日本は政治におけるPRの手法が貧しい」と手厳しい意見が。

古井さんも「本当に貧しい」と同意し、「EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング/合理的根拠に基づく政策立案)などと言っているが、広報やマーケティング、カスタマーサクセスの観点がない。だから、政策がどれくらい届いたか、なぜこれが必要なのかというところがとても弱い」と指摘します。

キャスターの堀潤は、こうした手法で本当に投票率が上がるのか検証していないことや、マーケティングに基づいた上で講じているのかが見えてこないことを「とても残念に思う」と言及。

哲学者で津田塾大学教授の萱野稔人さんも「投票率を上げるための政策に関しては本当に検証が必要。これまでそういうことをやっていたのかと問いたい」と頷きます。

日本と若者の投票率が高い諸外国との違いについて、萱野さんは「根本的に、若者の投票率が高い国は若者が何も言わなくても投票したがっている。若者が自分で意見を言いたい国にするかどうか」と言及。そして、「本来、投票率が上がるとは思えないポスターでの呼びかけなど小手先のことが、検証なく惰性で行われている」と指摘します。

◆投票率の問題はテレビ報道にも一因が!?

一方で、伝える側の立場である堀からは「テレビの報道の責任も重たいと思う」との意見が。というのも、国民に選挙投票を促しながらも政策の細かいところまで伝えて切れているかというとそうではなく「スキャンダルは報じるが政策は語らない。政治を報じたとしても政治家の揚げ足取りばかり」と言い、「普段から、全方位的に関われるような論の立て方、アプローチがあるのではないか」と思いを語ります。

萱野さんは「例えば、日本では『若者に投票しろ』と言いながら、選挙の投票年齢をずっと下げてこなかった」とまた違った側面から問題を提起。「ヨーロッパは以前から投票年齢や成人年齢を下げて、若者が政治参加する、若者を一人前の大人として処遇してきたにも関わらず、日本はそのことに全く関心を示さず、投票率の数字だけを見ている。もっと若い人を大人として扱うべき」と訴え、高校を卒業した時点で大人と言えるような教育を設計するなど、教育現場の改善を望みます。

当番組では、Z世代のコメンテーターを交えてさまざまなテーマについて議論を重ねてきた背景もあり、堀は「選挙権だけでなく被選挙権、立候補できる年齢ももっと若い世代に渡していってもいいのではないか」と力を込めていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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