地主の「お茶をやめたい」がきっかけでした 耕作放棄地生まれの“生姜ジャム”【SDGs】

高齢化などを背景に増加する耕作放棄地。捨てられた土地を再利用しようと、産業廃棄物から生まれた肥料を使っての生姜作りが盛り上がりを見せています。付加価値のついた生姜はジャムに変身。まさにSDGsの詰め合わせです。

こだわりドリンクと手作りスイーツを楽しめる静岡市のカフェです。暑い夏にぴったりのこの時期限定のレモネードが販売されました。

<和田啓記者>

「すごく爽やかで、ほろ苦さと酸っぱさと甘みがベストマッチです」

<ゼダーバーグ コーヒーバー 杉山博啓マスター>

Q.こだわりポイントは?

「こちらのコンフィチュールをふんだんに使ってますので、美味しくて健康になれる魔法じゃないですけど、僕も実際使ってみて、体軽いですし、毎日いただいてます」

秘密は「生姜のコンフィチュール」。食感をより感じられるように仕上げた生姜のジャムです。原料の生姜を育てている畑は、SDGsの理念に基づいています。

<丸徳商事 松崎徹志社長>

「こちらが今年生姜を植えた畑になります」

静岡市内の企業が所有する畑です。立派な生姜が毎年たくさん採れますが、この場所、最初から畑だったわけではありません。

<和田啓記者>

「生姜の畑のすぐ隣、こちらなんですが、私の背丈をゆうに超える林のようになっているところがあります。こちら、実はもともと茶畑でした」

伸び放題になったお茶の葉。きれいな茶畑だった面影はありません。人の手が加わらず、生産性のないいわゆる耕作放棄地が静岡県内にはたくさんあります。

高齢化などを背景に耕作放棄地は増加傾向です。その数は、2020年に6668haに上り、広さは東京ドーム1400個以上にあたります。いま、生姜を栽培している畑ももともとは茶畑でしたが、地主からの「お茶をやめたい」との声を受けて、丸徳商事が立ち上がりました。素人でも栽培しやすい生姜ならと農業に挑戦したのですが、そこに立ちはだかったのが土壌の問題でした。

<丸徳商事 松崎徹志社長>

「お茶をやった後、畑に変えるって非常に難しいんですけど、pHの改質をして畑に仕上げたと」

この悩みを解決したのは、丸徳商事が本業とするSDGsな取り組みでした。

<丸徳商事 松崎徹志社長>

「こちらは8年ほど前から始めた肥料製造の施設となります」

Q.肥料を作っているんですね?

「はい、そうです」

丸徳商事の本業は産業廃棄物の処理事業です。食品工場などから出てくる廃棄物を1日あたり20トンほど受け入れていますが、これまではすべてを焼却してきました。

<丸徳商事 松崎徹志社長>

「ああやって湯気出るでしょ」

<和田啓記者>

「すごいですね」

このごみに特別な微生物を混ぜて、100℃以上の熱を発する超高温発酵を起こし、有機肥料に変身させたのです。この肥料で土壌改良に成功。耕作放棄地が生姜畑に生まれ変わりました。

<丸徳商事 松崎徹志社長>

「今まではエネルギーを使って焼却してきたものを肥料化にシフトすることで、少しでも環境にやさしい仕事ができるのではないかと」

そして、完成したのが生姜のジャム。たくさんのSDGsが詰めこまれた逸品です。いまや、耕作放棄地からとれた作物は付加価値のついた商品として、消費者の手元に届き始めています。

<丸徳商事 松崎徹志社長>

「我々一社だけでは、なかなかできないので、同じような考え方持っている事業者さんにはぜひ協力していただいて一緒になって地域を盛り上げていければと思っています」

こうしたSDGsの取り組みは広がりを見せています。静岡市清水区にある障がい者の就労継続支援を行う事業所では、廃棄物から生まれた肥料を譲り受け、野菜作りに活かしています。実はこの場所も、もともとは耕作放棄地。いまはたくさんの種類の野菜を植えて、大きくおいしく育ってほしいと障がい者のみなさんが丁寧に育てています。

さらに生姜ジャムの作り手にもなっていて、皮むきなどの下処理を障がい者が行いました。野菜作りや商品製造にかかわることで収入を得る、そして社会参加につなげるというこちらもSDGsな取り組みです。

© 静岡放送株式会社