[農家の特報班]無邪気な踏み跡、レンゲ畑の涙 相次ぐ〝無断侵入〟被害に農家困惑

人に踏み荒らされたレンゲ畑(神奈川県座間市で=座間ゆたか農園提供)

生育不良や病害虫リスク 「注意して管理、知って」

「レンゲ畑へどこかの幼稚園・保育園のバスが乗り付け勝手に園児を遊ばせていた」――。交流サイト(SNS)のツイッターで4月下旬、ある農家の投稿に注目が集まった。農業関係者からは農地への無断侵入として問題視する反応が相次ぐ一方、「入ってはいけないと認識していなかった」と驚く人もいた。農地は私有地なのに……。本紙

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が経緯を聞いた。 「認識薄く」謝罪 投稿したのは、神奈川県座間市の「座間ゆたか農園」の園主。レンゲソウは水稲の栽培後に緑肥作物として育てており、近隣住民からの報告で無断侵入を知った。「田畑は人の口に入る物を作る場所。細心の注意を払い管理していることを知ってほしい」と話す。

園主によると、過去にも子どもの無断侵入はあり、事故やけがの恐れもあるため、見つけると保護者を注意していた。今回は投稿の数日後、ある保育園が名乗り出て謝罪。田畑は私有地との認識が薄く、中に入ってしまったと説明があった。

この園に対し、事前に連絡があれば、見学や中で遊ぶのも可能だと伝えたという園主。「勝手に入ってはいけない場所だと、大人がちゃんと教えてほしい」と話す。 人に踏み荒らされたレンゲ畑(神奈川県座間市で=座間ゆたか農園提供) 相次ぐ侵入被害 花がきれいなレンゲは、作物として育てていると思われにくく、農地に侵入されやすいとみられる。ツイッターでは埼玉県の農家からも、保育施設による無断侵入の報告があった。一部は花が咲かなかったという。緑肥作物の種子を販売するカネコ種苗(前橋市)の担当者は、踏み荒らされると生育が抑えられ、「地力増進や土壌改良など、本来の効果が得られない可能性がある」と指摘する。

農水省は防疫の観点からも注意を促す。「土壌にいる病害虫は人の移動を通して広がる可能性がある」(植物防疫課)。ジャガイモシストセンチュウやサツマイモ基腐病なども、靴や衣服に付着し、人を介して広がった可能性があるとする。 看板や柵で対策 では、農地への無断侵入にはどう対処したらよいのか。同省は基本対策として、立ち入りを禁じる看板やのぼりの設置を勧める。境界が分かるようにロープや簡易な柵を設置すると、より防ぎやすいという。

それでも侵入が繰り返される場合はどうするか。刑事事件に詳しいプロスペクト法律事務所(千葉市)の坂口靖弁護士は「警察への通報も一つの手」と助言する。正当な理由なしに他人の田畑に入ることは軽犯罪法違反で、1日以上30日未満の拘留、または1000円以上1万円未満の科料を科すと定められている。

実際に刑罰を科されることは少ないが、「警察が対処することで抑止力が高まる」(坂口弁護士)。侵入を確認したらすぐに通報すると、対応してもらいやすいという。110番への通報に抵抗があれば、近隣の交番や警察署に連絡する。無断侵入に困っていることが警察に伝われば、定期的に巡回してくれる場合もあるという。 金子祥也

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