戻ってきて! 湖で自殺未遂の女性救う、さいたまの女性に感謝状 自らも湖の中へ 言語超え通じた思い

橋本昭文署長から感謝状を受け取った平野美佳子さん(左)=埼玉県警浦和署

 湖に入水しようとした女性を説得し命を救ったとして、埼玉県警浦和署は、さいたま市南区の会社員平野美佳子さん(58)に感謝状を贈った。

 平野さんや同署によると、平野さんは5月16日午後5時5分ごろ、同市南区堤外の荒川彩湖公園内をウオーキング中、湖岸にいる20代女性を目撃。最初は「何か大事なものを落としたのではないか」と思ったが、女性の様子が気になり振り返りながら歩いていたところ、湖に入っていく女性の姿を目撃したため引き返した。

 女性は、みるみるうちに首あたりまで入水。顔を見ると泣いていた。「自分のことは考えず、とにかく助けたい」との思いから周囲にいた人に110番を頼み、自身も湖に入り、脚まで水に漬かりながら背を向ける女性に「こっちを見て」「戻ってきて」と必死に声をかけ続けた。すると、説得に応じた女性は平野さんの元に戻ってきたため女性と一緒に岸に上がって無事だった。

 感謝状を受け取った平野さんは、後から女性がベトナムからきた技能実習生であることを知った。「あの時に言葉が通じていたかは分からない。でも思いが通じてほしいと必死で声をかけ続けた。自分のタオルをかけてあげながら、『戻ってきてくれてありがとう』と声をかけたら、うなずいてくれた。助かってよかった」と優しくほほ笑んだ。

 橋本昭文署長は「尊い命を救っていただき、感謝しています。自らも入水し、歩み寄りながら声をかけ続けてくれたその行動と勇気は市民のお手本」とたたえた。

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