<南風>沖縄ならでは

 毎年盛り上がる高校野球。移住した当初、沖縄の人からは、試合時は沖縄中が応援するため、街から人が消えると聞いていた。行きつけの居酒屋の大将は、ジュンク堂店内でラジオを流すといいさと言う。

 兵庫県出身の自分は子どもの頃、地元校を熱狂的に応援した覚えがあるのだが、いつからか、代表校がどこかも知らないうちに大会が終わっているようになり、そんな話も真に受けられずにほぼ聞き流していた。それから近くの喫茶店に入ると沖縄代表校の試合の真っ最中で、80代くらいの複数のおじい、おばあがテレビの前で声を出して熱い応援をしている! 地元では見たこともない光景で驚いた。その試合は負けてしまったが、その様子に感化され、店内でラジカセを用意し、同じようにみんなが応援するようになった。

 ある年に、その時の代表校、沖縄尚学を応援しに甲子園球場へ駆けつけた。アルプススタンドに入ると、沖縄の音楽に指笛、カチャーシー。沖縄の地元の言葉が飛び交う。子どもの頃から阪神ファンで、甲子園自体は身近な存在であったのだが、これまでにない、沖縄にいるような不思議な感覚。ものすごい一体感だ。

 お酒も飛ぶように売れている。前方の方にはずっと立って応援し、ほぼ回が変わる度にビールを注文し続けているつわものも。気になって売り子の女性に聞いてみると、なんと沖縄の試合では売り子の人数が倍に増員していると言うではないか。それも沖縄だけなのだとか。恐るべし。

 数年前のデータだが、人口当たりのお酒の消費量に関する都道府県ランキングでは東京都に次いで堂々の2位である。試合は勝ち、大盛り上がりであったが、こんなところまで沖縄ならではであった。数年後、地元兵庫との試合の時、複雑ながら、沖縄校を応援していた自分がいた。

(森本浩平、ジュンク堂那覇店 エグゼクティブ・プロデューサー)

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