患者や家族が語り合う「認知症カフェ」誕生 看護師らも同席、愚痴や息抜きの場に 姫路中央病院

地域住民の触れ合いの場となっている「オレンジカフェあおやま1号」=姫路市青山2

 姫路中央病院(兵庫県姫路市飾磨区三宅2)に今春、認知症患者や家族が悩みを話し合う「認知症カフェ」が誕生した。看護師や臨床心理士らも参加する市内初の試みで、日々の生活や介護の情報を交換したり、時には愚痴をこぼしたり、家族らの息抜きの場になっている。認知症患者は今後も増える見通しで、予防に重点を置いた「認知症サロン」のニーズも高まっている。(森下陽介)

 姫路中央病院では4月から、毎月第4金曜に院内の一室で「よつばカフェ」を開いている。手軽に専門職に相談できるため、県の「認知症疾患医療センター」に指定されている同病院に姫路市が委託し、患者と家族、専門家に限定したカフェを設置した。

 5月下旬、2回目のカフェには認知症患者の家族を中心に男女約15人が集まり、互いの経験を話し合った。

 テレビの消し方が分からない、財布を冷蔵庫に片付ける-。認知症患者と暮らす家族は具体的な悩みとともに、不安な気持ちを打ち明ける。認知症になった夫や妻、親の変化に戸惑う家族のイライラ、悲しさ、やるせなさ…。多くの参加者が「家族の変化を認められない」といい、ほかの参加者の言葉に問題解決のヒントを探していた。

 「外来の患者さんの家族も、他の人がどう対応しているか気になっている。当事者同士だからこそ共感できる部分も多いはず」。カフェの役割をそう分析するのは担当の女性看護師だ。

 姫路市内の認知症患者は、2020年時点で2万人以上と推定されている。国の試算では25年には全国の患者数は700万人を超え、高齢者の約5人に1人が認知症患者になるという。

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 市内では、認知症予防を目的に、地域住民が主体になって開催されるサロンの需要も高まっている。高齢者の交流が活動の中心で、市内100カ所近くで開かれている。

 姫路市青山の集会所では月1回、認知症サロン「オレンジカフェあおやま1号」を開催。民生委員・児童委員らでつくる「青山1000人会」などが主催し、09年からこれまで200回以上実施している。

 看護師など専門職が常駐し、体操や音楽を楽しむほか、地域の子どもたちが訪れることもある。毎回参加するという近くの女性(88)は「外出するきっかけの一つで、ここで友人に会えるとほっとする」と笑う。

 同会代表の岸岡孝昭さん(77)は「認知症の人も地域の高齢者も気軽に触れ合える内容。家にこもって孤独感を感じる人も減るはず」と期待している。

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