米粉専用米「あおもりっこ」膨らむ期待 青森・黒石市で実証栽培、商品化事業始まる

浅瀬石水稲生産組合が行った「あおもりっこ」の田植え
粉を使ったクッキー作りに取り組む長内さん
米粉だけを使って作ったパン。左が「あおもりっこ」、右が「まっしぐら」で、膨らみの違いが分かる(青森産技センター提供)

 青森県黒石市で本年度、県産の米粉専用米「あおもりっこ」の実証栽培と、パンや菓子などの商品へ応用するモデル事業が行われている。主食用米の消費量が減少する中で、黒石産の新たな需要を創造しようと、市、生産者、事業者が一体となって取り組み、米どころ黒石の新たな可能性を探る。

 ウクライナ情勢の影響で、小麦の価格高騰や供給不安が広がる中、米粉は代替品として全国的に注目が集まっている。

 「あおもりっこ」は、同市にある青森県産業技術センター農林総合研究所が開発した「青系211」の品種名。2008年に交配で誕生し、県が今年2月、品種名を公表した。本格的な一般の作付けは24年産からを予定している。

 出穂、成熟など生育の進行が「まっしぐら」とほぼ同様で、県内全域で作付けが可能。でんぷんの成分「アミロース」の含有率が高いため、パン生地にすると膨らみが良く、製麺では機械への付着が少ない。小麦粉を使った商品には、アレルギーを引き起こすことがあるグルテンが含まれるが、米粉は「グルテンフリー」なのもメリットだ。

 5月25日、同市の農事組合法人浅瀬石水稲生産組合が「あおもりっこ」の田植えを行い、青空に映える岩木山を望む水田約30アールで栽培が始まった。

 代表理事の佐藤功さん(71)は「私たちとしては、転作で麦や大豆など他の作目を栽培するよりは同じ技術で米を作りたい。栽培方法も他の水稲と特段変わらない」と話す。市内ではこのほか、大川原地区でも実証栽培が行われる。

 米粉専用米は、加工業者との結びつきなしには成り立たない品種。開発を担当した、同研究所水稲品種開発部の神田伸一郎部長は「加工業者には既に米粉のサンプルを出している。好評を得られれば、本格的な栽培に向けていい弾みになる」と期待を寄せる。

 既に応用を始めている事業者も。同市元町の「Bakery OSANAI」では、コッペパンやクッキーなどに米粉を入れている。昨年9月に同店を開店させた長内翼さん(33)は「パンなどにもっちりした感じが出せる」と利点を指摘。近所に住む利用客の工藤沙央里さん(33)は「小麦粉だけの焼き菓子よりサクサクした食感が強い」と喜ぶ。

 市は本年度収穫してできた米粉を市内のパンや菓子などの製造事業者に無償で配布。意見を集めて今後の用途や生産量などを検討するとともに販路開拓を進める。

 同市農林課の神健課長補佐は「米どころ黒石の現状を保つためにも、主食用米以外の作付け品種として活用し、事業者にアピールしながら消費拡大を目指していきたい」と意欲を見せている。

 同課は米粉を活用したい事業者を募集している。問い合わせは同課(電話0172-52-2111、内線652、653)へ。

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