壊れる信康と孤独な五徳、2人の子の試練にSNSはハラハラ【どうする家康】

松本潤が徳川家康を演じ、その厳しい選択だらけの人生を描きだす大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。6月11日放送の第22回『設楽原の戦い』では、この戦を通して家康の長男・信康と、その妻で信長の娘・五徳に大きな変化が訪れる様が描かれ、あまりの不穏なムードにSNSでは2人を案じる声があふれた(以下、ネタバレあり)。

『どうする家康』第22回より、怯える表情の五徳(久保史緒里)の顔を押さえ込む父・信長(岡田准一) (C)NHK

■ どうする家康、戦を境に変わる子ら

織田信長(岡田准一)に従って、父と設楽原の戦いに参戦した信康(細田佳央太)。3000丁もの銃によって、武田の兵士が虫けらのように殺されていく様を見て、大きな衝撃を受ける。一方、五徳(久保史緒里)は、父から「我らにとってもっとも恐るべき相手は徳川じゃ。この家の連中をよ~く見張れ。決して見逃すな」と言い聞かせられた。

設楽原の戦いを境に、戦の前線に積極的に打って出るようになる信康。その働きぶりに喜ぶ家康とは逆に、母・瀬名(有村架純)は、息子の変化に戸惑いを隠せない。その裏で、夜は戦の悪夢にさいなまれるようになっていた信康。ついに瀬名は、信康が深夜の築山の庭で、死んだムカデを眺めながら涙を流している姿を目撃してしまう・・・。

『どうする家康』第22回より、心配して信康(左、細田佳央太)を見つめる母・瀬名(有村架純)(C)NHK

■ 信康、ショック療法的な行動から破滅へ

「父をしのぐほどの勇将だった」という評価もあれば「手のつけられない暴君」という悪評もある家康の長男・松平信康。しかしこの『どう家』の信康は、虫も殺せないほどやさしくて妹思いの、どこからどう見ても「温厚」としか思えない青年だ。しかし、そこから従来の信康像にグッと近づいたのが、この第22回だった。

実際に設楽原の戦い以降から、記録に残るような軍功を上げていった信康。しかしそれが、設楽原の武田軍ジェノサイドぶりを見た、そのトラウマと心のバランスを保つためにみずから危険に飛び込むようになったから、というショック療法的な行動の結果だったとは、思いがけない破滅のルートだと言えるだろう。

『どうする家康』第22回より、築山の庭で涙を流す信康(細田佳央太) (C)NHK

SNSでも、「本来ハードワークに向かないタイプが、変な自己啓発書に感化されて意識高い系に突っ走って、ポジティブ! アグレッシブ! に突き進んで、メンタル壊す子みたいになっちゃった」「好青年だった信康はこうして闇堕ちしてゆくのか・・・」「戦のせいで性格変わってしまうの悲しい」など、心配の声が多数上がっていた。

■ どこにも身の置き場のない女の子、五徳

ただ、心配してくれる瀬名のような身内がいるだけ、信康ははるかに恵まれているようだ。最初は信長の娘であることを盾に取る、高慢ちきな姫だと思われていた五徳。しかし実は、父からスパイの役目を体罰一歩手前で強いられた、どこにも身の置き場のない女の子だった・・・ということが、今回で判明したのだ。

SNSでも、「単純に親の威を笠に着た姫ではなく、尊敬する父上に精神的に支配されて、どうしようもない気の毒な娘にしか見えなかった」「父のことを深く敬愛する娘が、本質的には父に支配されて怯えきった娘でした、なのはキツすぎる」「一回白兎(家康)と腹を割ってパパの可愛がりについて語り合った方がいい。意気投合する」など、同情の声が上がった。

信長(岡田准一)、秀吉(ムロツヨシ)、佐久間信盛(立川談春)の会話をおとなしく聞く五徳(久保史緒里) (C)NHK

そして五徳が父から「よく見張れ」と命じられたことが、あの悲劇を生むんやな・・・と気づいたところで、次回のタイトルが『瀬名、覚醒』。予告の「ただのたおやかな妻」という家康の言葉から考えると、おそらく家康の考える瀬名像と、実際の瀬名との間に大きなギャップが生まれて、それが何かの引き金になるのでは、と考えてしまう。脚本家・古沢が得意とする伏線使いが、どういう形で「覚醒」につながるか、恐れながらも期待しよう。

『どうする家康』はNHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアムは夕方6時、BS4Kは昼12時15分からの放送。6月18日の第23回『瀬名、覚醒』では、瀬名と武田の忍び・千代(古川琴音)の関係が事件を呼び込むとともに、新たに側室となる於愛(広瀬アリス)が初登場する。

文/吉永美和子

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