得意のソノマで躍動。トヨタ陣営マーティン・トゥルーエクスJr.が今季2勝目を獲得/NASCAR第16戦

 ひさびさのロードコース戦となったソノマ・レースウェイでのNASCARカップシリーズ第16戦『トヨタ/セーブマート350』は、予選よりデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が同地での初ポールを獲得し、決勝ではレース距離の約半分にあたる51周をリードしたマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が、得意のトラックで今季2勝目をマーク。トヨタ陣営のNext-Genカムリが圧巻のパフォーマンスを披露した。

 同じ週末のフランスでは、トヨタ陣営の23XIレーシングから小林可夢偉の初参戦がアナウンスされ、今季8月のインディアナポリスでのカップデビューが決定。シリーズの雄であるヘンドリック・モータースポーツはジミー・ジョンソン、マイク・ロッケンフェラー、そしてジェンソン・バトンの豪華トリオを擁し、24時間耐久仕様のシボレー・カマロZL1で世界的ビッグイベントを戦った。そんな話題満載のレースウイークに、カリフォルニア州を代表するロードコースでは2023年カップシリーズ中盤の一戦が催された。

 導入2年目を迎えたNext-Genカップカーの安全対策に更新の手を加え続けているNASCARは、すでに先月シャーロットで開催された『コカ・コーラ600』を前に、右ドア内蔵のサイドバーやフロントの構造を補強するVブレースの削除を実行。さらに来月初めに開催されるアトランタでの第19戦に向け「追加の安全性アップデートを実装する」と通知した。

 変更の要点は、前回同様に衝突時のショック吸収許容量を増加させることを目的としており、前面衝突時にドライバーのいる車両センター部分が受けるG(重力加速度)を軽減するための施策として、アーム類の簡素化やソフト化を中心に、車両全体で多岐に渡る変更が施される。

 こうして始まった週末は、公式練習こそカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)がトップタイムを記録したものの、予選ではトヨタ陣営が躍動。JGRの盟主ハムリンが今季2回目、キャリア通算38回目のポールウイナーを獲得し、フロントロウには自身の“ラブコール”で招き入れたタイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)が続くグリッドに。

 さらに3番手のマイケル・マクドウェル(フロントロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)を挟んで、4番手にもクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が続くなど、決勝の展開を予感させる結果となった。

 迎えた日曜はポールシッターのハムリンが33周をリードし、順当にステージ1を制覇したものの、最終的に完走できなかった唯一のドライバーとなってしまい、残り19周の時点で姿勢を乱しホームストレートイン側のウォールにヒット。その衝撃で反対側のウォールにも激突し、ここでレースを終えてしまう。

好調ライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)は最終決戦でトップ5に加わるも、3WAYバトルで弾かれ万事休す
予選ではデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が同地での初ポールを獲得した
そのままステージ1を制覇したハムリンだったが、最後はまさかのクラッシュでレースを終える

■リードを奪ったトゥルーエクスJr.キャリア通算33勝目を手にする

 これでリードを引き継いだソノマ3勝のトゥルーエクスJr.に対し、終盤で立ちはだかったのが前戦勝者カイル・ブッシュ(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)と“出場停止明け”のチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)で、残り15周でリスタートを迎える際にエリオットはステイアウト、ステージ2勝者ブッシュとコーションの瞬間に首位だったトゥルーエクスJr.の2台は、コールを受けピットへと向かう。

 これで4番手からの再開を迎えた19号車のカムリは、背後につけた元僚友ブッシュの追撃も退けると、好調ライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)やレディックを早々に仕留め、すぐさま首位エリオットの背後に迫る。

 ここで躊躇せず、ミドルセクターでインを奪ったトゥルーエクスJr.がリードを奪還し、そのままフィニッシュ。ソノマ4勝目、キャリア通算33勝目を手にする結果となった。

「パートナーやファンのみんながいなければ、これを達成することはできなかった。ああ……こんな素敵な一日を過ごし、あれだけの走りを可能にし、僕の周囲にいるような完璧なチームを持つことができて、本当に信じられない気分だ! 彼らは今、あらゆることをやっているし、これほどのクルマをドライブするのはとても楽しいよ。全部、彼らのおかげだ!」と、喜びを語った2017年のカップ王者。

「トヨタ、TRD、JGRの全員が、オフシーズンの再設計に多大な労力を費やした。我々はNASCARと協力し、いくつかの要素を再設計する必要があったんだ」と続けたトゥルーエクスJr.。「誰もがそこで良い仕事をした。僕のチーム……全員に脱帽だよ。昨季はここでひどい成績を収めたのに、戻ってきて基本的に同じクルマでこの戦績を達成できるなんて、本当に信じられないことだ。ただただ、彼らを誇りに思っている」

 同じくソノマで併催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第14戦『ドアダッシュ250』は、ポール獲得のカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)や、ロードコースの名手A.J.アルメンディンガー(カウリグ・レーシング/シボレー・カマロ)を仕留めたアリック・アルミローラ(RSSレーシング/フォード・マスタング)が、シリーズ4勝目を記録。チームにエクスフィニティでの初勝利をプレゼントする結果となった。

ソノマ・レースウェイでの『トヨタ/セーブマート350』にて、トヨタ勢は予選2列目までに3台のカムリを送り込んだ
「パートナーやファンのみんながいなければ、これを達成することはできなかった」と、ソノマ4勝目を飾ったマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)
NASCARエクスフィニティ・シリーズを制したアリック・アルミローラ(RSSレーシング/フォード・マスタング)は、娘のアビーちゃんから祝福を受けた

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