広がる「オープンイノベーション」 ビジネス交流拠点「アンカー神戸」開設2年 地元企業の連携、地域に好影響

開設から2年となったアンカー神戸。学生の交流会なども開かれた=神戸市中央区加納町4

 神戸・三宮に神戸市が開設したビジネス交流拠点「アンカー神戸」で、地元企業同士の連携を促し新たな価値の創造につなげる「オープンイノベーション」が広がっている。企業や人を結び付けて地域経済の活性化につなげる取り組みは、全国的にも珍しい。2021年4月の開設から2年が過ぎて、各企業のつながり方がどのように変化したのかを探った。

 

■自社の魅力に気付く

 「内にこもっていてはだめですね」

 神戸電鉄(神戸市兵庫区)の西口耕平さん(39)が振り返る。沿線の高齢化や人口減少が課題の同社は、20~30代の若手社員8人で「沿線モヨウガエプロジェクト」を始めた。西口さんはこのプロジェクトをまとめ、アンカー神戸でこれまでに300社以上と接点を持ってきた。

 沿線の活気が薄れ、社内には「うちの会社なんて」との声もある。メンバーの1人は「多様な方々と交流して、なんて魅力の多い会社なんだと気付いた」と話す。高校生と駅でコーヒーショップを開いたり、新築した駅舎で新たなビジネスを模索したりと、挑戦を続けている。

 

■新規事業を開発

 新規事業の開発でアンカー神戸を活用したのは神戸ポートピアホテル(神戸市中央区)。ホテルの資産やノウハウを生かし、若年層の人口流出が続く神戸の課題解決にもつなげようと、関西のホテルで初めて結婚相談所事業を立ち上げた。

 昨年9月末の開設以降、特に親世代の関心を集めて会員を獲得。結婚に至ったケースもある。プロジェクトを担当した同ホテルの藤村朋代さんは「新事業は不安だらけだったが、社内への説明方法から相談ごとまで、アンカー神戸のメンター(指導役)には精神面も含めて伴走してもらえた」と感謝する。

 

■会員間交流で新事業

 会員の交流の中から新商品も生まれた。食品メーカーのオイシス(伊丹市)は、神戸ポートピアホテルのシェフが監修したレシピでチーズケーキを製造。昨年11月、総合スーパー大手イオンの近畿地区にある店舗で発売した。

 同ホテルの中内仁社長は「企業で新規事業をやりたい人や、スタートアップ(新興企業)の起業家が集う場ができたことが重要。互いに刺激を与えている」と評価する。

 その上で、企業家や投資家が身近にいて、起業意識が旺盛な米カリフォルニア州のスタンフォード大学周辺を例に挙げ、「アンカー神戸でも起業の成功例など具体的な情報を共有してほしい。大学と企業の交流もさらに必要だ」と、活動の強化を求めた。(高見雄樹、広岡磨璃)

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