源氏は心休まる女性を求めて、麗景殿女御と三の宮を訪ねる!平安時代の天皇の皇妃の位とは?【図解 源氏物語】

静かに暮らす姉妹(花散里)

右大臣方の圧力が強まる中、源氏は亡き桐壺院を懐かしみ、心休まる女性を求めて、ひっそりと暮らす麗景殿女御(れいけいでんのにょうご)とその妹の三の宮を訪ねようと思い立ちます。麗景殿女御は桐壺院の後宮(こうきゅう)にいた女性で、その妹の三の宮は、かつて宮中で源氏とほのかな関係があった、のちに「花散里」と呼ばれる女性です。子どもにも恵まれなかった姉妹は、桐壺院が亡くなってからは、よりいっそう気の毒な様子となり、源氏の庇護(ひご)だけを頼りに暮らしていました。五月雨(梅雨の時期の続く雨)の空が珍しく晴れた日に姉妹を訪ねることにしました。

姉妹を訪ねる途中、中川付近の小さな家が目に留まり、源氏は訪れたことがある家だと思い出します。懐かしい思いを込めた和歌を贈りますが、源氏と知ってのことかどうかもわからない、空とぼけたような返歌が来たので、それ以上は深追いせずに引き下がりました。お目当ての麗景殿女御姉妹が住む邸は、ひっそりした静かな佇まいで、ホトトギスが鳴き、橘が咲いていました。源氏は、久しぶりに会った麗景殿女御を見て、年は取っているものの、心遣いが行き届き、品があってかわいらしく見えると感じます。桐壺帝時代のことなどを懐かしく思い出しながら、和歌を詠み交わします。

桐壺院亡きあと、めまぐるしく変わる世の中で、麗景殿女御の変わらぬ様子に安堵と感動を覚えた源氏は涙を落とすのでした。夜が更けるまで姉の妹の麗景殿女御と語り合ったのち、源氏は妹の花散里の部屋を訪ねます。花散里とも、さらに懐かしく語り合い、一夜をともにしました。

後宮・・・帝の妻たちや東宮などが住む七殿五舎の総称。または帝の妻たち。
中川・・・京都市上京区、鴨川と桂川の間にある川。
ホトトギス・・・死者の国と現世を往復する鳥とされる。
橘・・・常緑であることから、変わりないことを象徴する花とされる。

平安時代の天皇の皇妃の位

平安中期の天皇の正妻は皇后で、中宮とも呼ばれた。その下に女御、更衣が続いた。更衣以下の位の女性も天皇の子を宿すことがあったが、だからといってその女性が中宮になることはあり得なかった。この他にも役人として中宮に使える女官もいた。

太皇太后(たいこうたいごう)・・・先々代の天皇の后。または皇后から皇太后、さらに太皇太后へとのぼった后のこと。
皇太后(こうたいごう)・・・前天皇の皇后、あるいは現天皇の生母。
皇后・・・天皇の正妻。立后(冊立)の儀式を経て皇后となる。奈良時代に定められた大宝律令(たいほうりつりょう)では、皇后には四品以上の内親王にのみ資格があるとされた。内親王とは天皇の娘か姉妹。四品とは、新王(天皇の息子)と内親王に与えられる位のこと。しかし、のちに皇族以外からも皇后に立てられる例もでてきた。
中宮・・・元々は太皇太后、皇太后、皇后の住まいを「中宮」と呼んでいたが、やがて皇后の別称となった。皇后と並立する場合は、皇后とは同格の扱い。
女御・・・後宮に入り天皇の寝所に侍した皇妃の位。皇后・中宮に次ぎ、更衣の上に位した。女御になられるのは従二位以上の家柄の娘だけ。平安中期以後は皇后(中宮)に立てられる者も出た。
更衣・・・天皇の皇妃の位。天皇の着替えに奉仕したことに由来する。女御の次位にあって天皇の御寝に侍し、四、五位に叙された。更衣の家柄は正三位以下。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』高木上別症

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』
高木 和子 監修

平安時代に紫式部によって著された長編小説、日本古典文学の最高傑作といわれる『源氏物語』は、千年の時を超え、今でも読み継がれる大ベストセラー。光源氏、紫の上、桐壺、末摘花、薫の君、匂宮————古文の授業で興味を持った人も、慣れない古文と全54巻という大長編に途中挫折した人も多いはず。本書は、登場人物、巻ごとのあらすじ、ストーリーと名場面を中心に解説。平安時代当時の風俗や暮らし、衣装やアイテム、ものの考え方も紹介。また、理解を助けるための名シーンの原文と現代語訳も解説。『源氏物語』の魅力をまるごと図解した、初心者でもその内容と全体がすっきり楽しくわかる便利でお得な一冊!2024年NHK大河ドラマも作者・紫式部を描くことに決まり、話題、人気必至の名作を先取りして楽しめる。

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