【第2回WUBS】山﨑一渉をアメリカに呼んだ指揮官ダリス・ニコルズ「WUBSは皆に世界を知ってもらう機会」 - ラドフォード大(アメリカ)オンライン会見での一問一答

8月10日(木)から13日(日)に国立代々木競技場第二体育館で開催されるWUBS(Sun Chlorella presents World University Basketball Series=ワールド・ユニバーシティー・バスケットボール・シリーズ)に出場するラドフォード大(NCAAディビジョン1ビッグサウス・カンファレンス)が、6月8日にオンライン会見で日本のメディアと交流した。

ここではラドフォード大のヘッドコーチを務めるダリス・ニコルズが日本メディアを前に話した内容を紹介する。言うまでもなく、山﨑のタレントに注目し、チャンスを与え、成長を後押ししている人物であり、ある意味で日本のバスケットボール界の将来にも影響を及ぼす存在だ。

ニコルズHCは自身の故郷にあるラドフォード大を2022-23シーズンから率いている。ヘッドコーチのキャリアはラドフォード大での2年間のみ。しかし、苦戦した初シーズンの11勝18敗(カンファレンス7勝9敗)から2シーズン目には21勝15敗(同12勝6敗)と一気に成績を上げ、ポストシーズンのビッグトーナメントの一つ、CBI(College Basketball Invitational)の4強入りを果たすまでに飛躍を遂げた。兄シェーンもアシスタントを務めており、まさしく家族的な雰囲気で、チーム作りに取り組んでいるニコルズHCは、NCAAディビジョン1のバスケットボールでミッドメジャーと称される数々の大学を率いるコーチの中で最もホットな人材の一人でもある。

ラドフォード大ヘッドコーチ ダリス・ニコルズ(写真/©Radford University Athletics)

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――自己紹介とWUBS出場への抱負

皆さんこんにちは、ラドフォード大の男子バスケットボールでヘッドコーチをしているダリス・ニコルズです。ラドフォード大でヘッドコーチとして3年目を迎えるところです。

ラドフォード大は私が生まれ育った故郷にある大学です。ここに戻ってきてヘッドコーチとして世界中を旅し、故郷と日本の大学を代表することは私にとって特別なことです。お招きありがとうございます。日本に飛んでラドフォード大の一員としてこの大会に出場できることを楽しみにしています。ありがとうございます。

――WUBSと来日で楽しみにしていること

まず、バスケットボールのゲームを通じて世界を見せられるのが素晴らしいですね。ウチの若者たちがそれをできるのがうれしいです。チームとして団結し、人としてお互いについて学びながら異なる文化についても学ぶことを通じて、我々は一つになれると思います。

去年はさまざまな国から様々な背景を持つプレーヤーが集まっていました。だからお互いに質問しあうことで絆ができ、それがコートで実を結んだと思います。今回の遠征で経験を積み、世界レベルの対戦をすることは、私たちにとっても助けになります。それが楽しみですね。バスケットボールのゲームを通じて世界を見る機会ですよ。

――東京滞在中に試合以外で楽しみにしていること

コート外では、イブの助けなしに皆が知らない世界でいろんな体験をしようと工夫する姿に期待しています。私はイブに、みんなを助けないように指示するつもりなんですよ。彼がアメリカに来たときには、日本語を話す人があまりいないところでたくさんの新しいことを学ばなければならなかったじゃないですか。日本には英語を話せる人が少なからずいるというのを知っているので、最初の数日はイブの助けなしで頑張ってくれたらいいと思っています。どれだけ自力で物事を解決できるか楽しみです。

――WUBSでバスケットボール的な観点から期待していること

今回はNCAAのルールよりも短い24秒 のショットクロックでプレーすることがわかっているので、底が面白いところです。次のシーズンは昨シーズンよりも少し速くプレーすることを目指しているので、この部分は来シーズンの準備に役立ちそうです。違うプレースタイルになりそうで、ワクワクしていますよ。

これは状況判断の向上に役立つでしょう。スタイルとしてはオフェンスで特にガードに多くの自由を与えます。KG(2年生ガードのケニオン・ジャイルズ)、イブ、ダクアン(最上級生ガードのダクアン・スミス)にたくさんゴールを狙ってもらいたいですね。特に彼らが乗ってきたときにはそうしたいです。ディフェンス面では、我々は常にリーグでトップレベルの一つでありたいです。ここは譲れません。

ラドフォード大は8月11日(金)の高麗大戦が最初の試合となっている(©WUBS)

――NCAAディビジョン1でのプレーを目指す人々への助言

イブはアメリカに来たときからしっかり準備ができていたと思いますし、それはコーチの功績でもあるでしょう。日本には才能のあるプレーヤーがたくさんいますが、渡米実績のあるプレーヤーを輩出した学校を考えるのは一つですし、アメリカでは学校ごとにそれぞれに必要なテストの点数がありますから、英語にはぜひ取り組み続けるべきですね。

また、彼は規律の面でよく準備できていたと思います。それは日本の文化で大事にされてきたことですよね。多くのプレーヤーが非常に規律正しいです。イブも最初にここにきたときから、その点で非常に際立っていました。彼はとても規律正しく、向上しようという真剣な思いを持ってここにやってきていました。

やはり実績のある人にあたるのが一番です。イブが八村 塁選手につながっていたようにね。

――山﨑一渉加入によりコーチングが変化したかどうか

対応しなければならなかったのはイブについてだけではなく、どちらかというとトランスファー・ポータル(他のチームへの転入を望むプレーヤーが名前を登録して勧誘を受ける可能性を大きくするためにNCAAが2018年に取り入れたデータベース事業)の方がより大変だったと思います。

毎年新しいプレーヤーが加わることを考えると、使われる用語を短くして多くのことを一言で伝えられるようにする必要があります。ウチのボールスクリーン・ディフェンスの指示の多くは一言だけです。これは意図的にしていることで、このチームに6ヵ月間しかいないプレーヤーばかりになるような時代には、新しい用語やそれに準じるものを深く掘り下げるのが難しくなるからです。

おかげで私は助かったと思いますし、実はイブを指導するのにも役立っています。もはや4-5年と一緒にプレーするプレーヤーが少なくなってきているため、物事を簡素化する必要があったんです。

――会見で日本人の記者に囲まれた感想

こう言っておきましょう。私は世界中でプレーする機会がありました。私は台湾に行ってジョーンズカップでプレーたことがあり、ハンガリーのプロチームでもプレーしました。バスケットボールはグローバルなゲームで、それもここまでグローバルなスポーツもなかなかありません。だからどんな言語を話すとしても、そこでその言語を話せなくても、お互いが結びつけられると思うんです。

それはこのスポーツの素晴らしいところですよね。それが世界的なゲームであるということです。ですから、バスケットボールを通じてこうして今回ここで皆さんと一緒に語り合えるというのは特別なことです。

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――言葉の壁

正直なところ、(言葉の壁を乗り越えるのは)人が思うほど難しくはなかったと思います。最近はよりそう思います。これはイブがどうなのかということを言っているのではないんです。彼にとってはおそらく、コート外の生活がコート内よりもずっと難しかったでしょう。コート上に入れば、バスケットボールはとてもペースの速いゲームなので、長々と話すことがないので、たぶんその意味では気楽にしていられるんじゃないでしょうか。我々は一つ二つの簡単な言葉で意思の疎通を図っていますから。

タイムアウトはちょっと違うかもしれないですが、それにしたって他のプレーヤーとタイムアウト後に話し合ってしっかりわかってくれていることを確認できていたと思っています。

コート外だとそれがもっと難しかったと思います。でも相手がどんな状況にあるかを知れば、思いやりを持つはずですよ。

もしも私が国外にいて、これを理解しなければならないとしたら私にも難しいでしょう。でもハンガリーでプレーした私には、彼が何を経験しているかが少なからずわかるんです。

――山﨑一渉のバスケットボールに向き合う姿勢、日ごろの態度、ボディ・ランゲージ

彼のボディ・ランゲージはいい感じです。あなたが状況にあるとき、特に新入生だと、いつどれだけ出場時間を得られるかわからないでしょう。彼がそんな状況にうまく対応しました。それは彼の人柄で、しっかり育てられたことがわかるというものです。彼は感情を表に出さないので、どれほど負けず嫌いかがわからないことがあると思います。KGがトラッシュトークをしても彼は乗っていかないんですが、実は内心燃えている。そういうところがありがたいですね。非常に規律正しく、プレーで相手を黙らせるタイプなんですよ。

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