神の島の原生林、ナラ枯れから守れ アース製薬が協力、武器は「かしながホイホイ」 赤穂・坂越の国天然記念物「生島」

「かしながホイホイ」を木に取り付けるアース製薬の社員ら=赤穂市坂越

 兵庫県赤穂市の坂越(さこし)湾に浮かぶ国の天然記念物・生島(いきしま)で、手つかずの原生林が「ナラ枯れ」の危機にさらされている。病原菌を媒介するカシノナガキクイムシ(カシナガ)から樹林を守ろうと、専門家らが本格的な調査を開始した。市内に主力の2工場を置くアース製薬も協力する。武器はカシナガを逃がさない「かしながホイホイ」だ。(小谷千穂)

 生島は対岸にある大避(おおさけ)神社の神地で周囲1.6キロ、面積は8.1ヘクタール。同神社の御旅所があるが、人は住んでおらず、訪れる人も限られている。信仰により、昔から樹木の伐採や島への立ち入りが恐れられ、島のほぼ全域がアラカシやスダジイなどの照葉樹林になっている。

 同神社の生浪島尭(いなみじまたかし)宮司(79)が昨年12月、対岸から樹木の一部の葉が変色しているのに気付いた。植物の生態に詳しい県立大の服部保名誉教授が現地を訪れ、木にカシナガが開けたとみられる穴を確認した。

 ナラ枯れは、カシナガなどが媒介する病原菌でナラやシイ、カシなどの樹木が集団枯死する伝染病だ。

 今年3月、赤穂市などが現地を訪れ、大きい木を中心に105本を調べたところ、3割近い29本でカシナガが開けたとみられる直径約2ミリの穴が見つかった。穴の数は全ての木で50個以下だったため、ナラ枯れとは判断せず、すぐにカシナガを駆除するほどではなかったという。

     ◇

 ナラ枯れは全国的に2000年ごろから増え始め、県内では05年以降、日本海側から拡大。ひょうご森林林業協同組合連合会(神戸市兵庫区)によると、5年前から播磨地域にも広がり、赤穂市内でも確認されるようになった。海を挟んだ生島の対岸近くでも被害が出ている。

 5月17日にあった1回目の調査では、赤穂市文化財課と同連合会、大避神社の依頼で参加したアース製薬の社員ら11人が生島に上陸。地図を広げ、カシナガの穴が確認された木を探した。

 同社は、ゴキブリを捕獲する商品「ごきぶりホイホイ」を応用し、調査用に販売している「かしながホイホイ」を用意。横約1メートル、縦約30センチの巨大な粘着シートで、穴から脱出するカシナガを捕まえて数えようと、10本の木には粘着面を内側にして巻き付けた。飛来してきた数を調べるため15本は外向きに貼った。

 6月13日に回収を終え、今後、カシナガの数を確認する。その後も継続して状況を記録していくという。

 「大きな木が欠けると、風の通りがよくなって地面に雑草が生え、どんどん環境が変わる。ナラ枯れを招かないように早急に対処したい」と市文化財課の担当者。生浪島宮司は「坂越の一番のシンボルである生島を、今の形のまま残し続けたい」と見守る。

© 株式会社神戸新聞社