涙の後には虹が出る。不退転の決意で『G1』に清宮海斗が殴り込み

新日本全日本NOAHのプロレス3団体が一丸となった「ALL TOGETHER AGAIN 元気があれば何でもできる!」(6月9日、東京・両国国技館)大会が大きな話題となった。

最後を締めたのはオカダ・カズチカ。天国の猪木さんに向けて「1、2、3 ダーッ!」と音頭を取り、ファン、レスラーの大合唱を呼び込んだ。現在の“ミスタープロレス”であることを改めて満天下に知らしめた。

大団円だったが、一人、弓を引いた男がいた。NOAHの若き旗頭・清宮海斗である。棚橋弘至、宮原健斗とエーストリオを結成し、オカダ、青柳優馬、拳王組と対峙したが、清宮の目にはオカダしか映っていなかった。

NOAH2・21東京ドーム大会。時のGHC王者としてホームリングで、当時IWGP王座を保持していたオカダを迎え撃ったものの敗退。ノンタイトル戦だったとはいえ、王者対決で敗れ去った衝撃は大きかった。

その後、清宮は全日本からNOAHに乗り込んできたジェイク・リーにベルトを奪われた。NOAHの若きリーダーの威信はまさに地に落ちてしまった。

子ども扱いされたオカダにリベンジするしかない。誰よりも清宮自身が身に染みていた。6・9決戦に意気込んで臨んだのに、オカダにすかされてしまった。オカダが前回のALL TOGETHERを締めくくった棚橋に、引導を渡すのを見守るしかなかった。

出場全選手がリングに集まってくる中、背を向けた清宮は控室に引き揚げていく。オカダのマイクアピールを皆と一緒になってバックアップするのは、さすがに耐えきれなかった。

「オカダ、逃げてんじゃないぞ」といつもと違うトーンで叫んでいたが、チャンスは意外に早くやって来た。

新日本のG1CLIMAX33へ殴り込むことになった。NOAHのN1-VICTORYを欠場してのこと。「NOAHを休んで新日本に乗り込むことが、清宮海斗とNOAHを広める手段。N-1を休んでG1。優勝して戻って来る」と決意を固めている。

「気持ちも切り替わった」と冷静さも装っているが、オカダへの燃えたぎる想いがそうは簡単に収まるはずもない。

勝負のG1は4ブロック制で、オカダはBブロックにエントリー。清宮はAブロックで、オカダからIWGPベルトを奪ったSANADAに、次代を担う海野翔太、成田蓮、辻陽太らと、決勝トーナメントに進める上位2名の枠を争う。

オカダと対戦するためにはAブロック突破が最低条件だが、夏は清宮のコンディションが最も充実する季節。夏野菜のトマトが大好きで、G1の時期はトマトパワーが最もアップする。「トマトが赤くなれば医者が青くなる」「トマトで医者いらず」と言われるほど、栄養価が高い。毎年、トマトで夏バテ知らず。真っ赤に熟したトマトパワーで気持ちも上向きになる。

これまで涙を浮かべることがあった。「泣き虫」は気の強さの裏返し。強気でならす選手が「清宮クンは初対面の挨拶のとき、睨みつけてきた。礼儀正しかったけど、ずっと目を見たまま。視線を全く外さない。怖かった」と証言する。

今まではファイトスタイルの違いから、かみ合わなかった試合もある。気持ちが先走りしてしまったこともあった。G1でそれまでの借りを、利子をつけてきっちりと返すつもりだ。

オカダへのリベンジ、そしてG1制覇。新夏男・清宮海斗の誕生で日本プロレス界の構図が一変する。見逃せない。

<特別寄稿 柴田惣一>

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