警察の「通訳」ニーズ、在留外国人増で高まる 青森県内

研修会で、中国人観光客がパスポートを紛失したという想定で、通訳の様子を実演する部内通訳要員(右)=13日、青森市の東奥日報新町ビル

 技能実習生をはじめ、青森県内で暮らす外国人の増加に伴い、外国人が関係する事件・事故の捜査に対応する警察官の「部内通訳要員」と、県警に登録した「民間通訳人」のニーズが高まっている。県警刑事企画課によると、部内通訳要員と民間通訳人への出動依頼件数は、2020年度43件、21年度46件、22年度70件と年々増加している。通訳者は言葉の壁を越えて警察の捜査を支える重要な役割を担っており、県警は定期的な研修などを通じて技能向上を進めている。

 県観光国際交流機構によると、県内の在留外国人は22年6月末現在で、6306人(前年比613人増)。10年前と比べると、2376人増えている。国籍別ではベトナムが2097人と最多。次いで中国919人、フィリピン752人、韓国694人などと続く。

 同課によると、県警の部内通訳要員は英語や中国語、韓国語など6言語23人で、民間通訳人は8言語29人が登録している。出動内容は事件・事故の取り調べや事情聴取、各種相談への対応などが多い。

 県内の外国人の摘発件数は20年が31件、21年が81件、22年が42件と「増加傾向にはない」(同課)ものの、相談事案の増加や複数の外国人が関与する事件なども発生し、通訳者の出動機会は増えている。また、近年は国籍や使用言語が多様化しており、希少言語を扱う通訳者の需要は特に高いという。

 県警は本年度、新たに2人を英語とカンボジア語の部内通訳要員に指定。13日は、青森市の東奥日報新町ビルで研修会を開催し、外国人観光客がパスポートを紛失した-などの想定で通訳の様子を実演したり、取り調べの訓練を行った。

 中国語を扱う刑事企画課の太田直城・渉外官(44)は「外国語も若者言葉が生まれたりと日々進化しており、SNS(交流サイト)やドラマで勉強し、語学力をブラッシュアップしている。言葉が通じない土地で事件・事故に遭遇すると、外国人は不安に感じるはず。正確な通訳だけでなく、メンタルケアも心がけている」と話した。

 同課の沼上孝一次長は「通訳要員は語学力はもちろんのこと、国の文化などへの理解が必要。特に取り調べでは、捜査員の意図をくんだ通訳や相手の言葉を引き出す力が求められるので、通訳要員の技術向上に努めていく」と語った。

 県警は現在、タガログ語、ベトナム語、ポルトガル語、カンボジア語などの民間通訳人を募集している。必要な資格などはないが、県内在住で日本語と外国語に精通している人材が求められる。

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