杉本寺は、天平6年(734年)に創建された鎌倉最古の寺。十一面観音様がご本尊様で苔寺としても有名。苔むした風情がある階段は必見です。
澤村
杉本寺の3つのポイント
- 苔の階段と十一面観音様
- 坂東三十三観音などのお遍路の拠点
- 11日と18日は秘仏本尊が拝める
※本文に出てくるお守りや御朱印などの写真は許可を得て撮影しています。通常は撮影不可です。
創建のルーツ
734年、奈良時代のお話しです。当時の杉本寺は、天皇陛下〈聖武天皇〉の妻である光明皇后の指示を受けた、藤原房前と行基によって建立されました。
行基は、「仏教信仰を広めるな。」という国側の主張に耳を傾けずに、どんどん仏教を布教していったすごいお坊さんです。
この行基が、現在の杉本寺がある場所に自作の十一面観音様を安置したことが、創建のルーツとされています。
杉本寺のご利益
杉本寺は十一面観音様をご本尊様とし、毘沙門天様や不動明王様、弁財天様が祀られていて様々なご利益があります。
十一面観音様
十種勝利
- 病気にかからない
- 一切の如来に受け入れられる
- 金銀財宝・食物に不自由しない
- 怨敵から害を受けない
- 国王や王子が王宮で慰労してくれる
- 病気でも症状が悪化しない
- 凶器で害を受けない
- 溺死しない
- 焼死しない
- 不慮の事故で死なない
四種功徳
- 臨終の際に如来とまみえる
- 地獄・餓鬼・畜生に生まれ変わらない
- 早死にしない
- 今生の後に極楽浄土に生まれ変わる
毘沙門天様
- 金運
- 開運
- 商売繁盛
- 合格祈願
- 健康長寿
- 厄除け
不動明王様
- 厄除け
- 病気平癒
- 疫病退散
- 身体健全
- 家内安全
- 国家安泰
大蔵弁財天堂様
- 子育て
- 水子供養
お遍路
- 開運
- 健康
- 厄除け
- 所願成就
杉本寺の見どころと歴史
苔の階段
仁王門を通ると苔むした石の階段があります。杉本寺の石段は柔らかいことがポイントで、苔が生息しやすい環境です。
仁王門
杉本寺でまず目をひくのが仁王門です。仁王門には通り抜ける部分の両側に、口を開けている仁王と口を閉じている仁王がそれぞれ建立されているのですが、双方とも怒りを表現しています。
口を開けている仁王は声にして怒りをあらわにし、口を閉じている仁王は胸の内に怒りを秘めていることを表現しているのです。
また、口を開けている仁王を阿形像〈あぎょうぞう〉、口を閉じている仁王を吽形像〈うんぎょうぞう〉と呼びますが、お互いの意思疎通が成っていることから阿吽の呼吸と表現されます。デザインは、800年前の仏師である運慶です。
観音堂
1678年に建立された本堂は茅葺き屋根が目をひきます。屋根面が4方向に傾斜する寄棟造〈よせむねづくり〉です。本堂内は1段高くなったところに仏像が設けられてますが、さらに1段高くなったところに4体の十一面観音様が設けられています。
関東大震災で鎌倉のほとんどの寺社仏閣が倒壊してしまったが杉本寺は倒壊せず、重要文化財となっています。境内の歴史を感じる石は全て鎌倉石で、創建当時のまま残されています。
正面
- 御前立十一面観音様〈運慶〉
- 秘仏本尊十一面観音様〈行基菩薩〉
- 秘仏本尊十一面観音様〈慈覚大師〉
- 秘仏本尊十一面観音様〈恵心憎都〉
向かって左の4体
- おびんづる様〈不明〉
- 地蔵菩薩様〈運慶〉
- 地蔵菩薩様〈安阿弥〉
- 新十一面観音様〈慈海僧正〉
向かって右の3体
- 毘沙門天様〈宅間法眼〉
- 不動明王様〈不明〉
- 観音三十三身様〈運慶〉
澤村境内は撮影できますが、観音堂は秘仏本尊なので撮影NGです!### 十一面観音様
正面に運慶がつくった十一面観音様があるのですが、この後ろに十一面観音様が秘仏として3体設けてあります。
普段は拝観できませんが、毎月11日と18日の13時30分から14時30分に護摩法要が行われ、 この2日間のみ秘仏本尊を拝むことができます。
秘仏として扱われる十一面観音様ですが、行基がつくった仏像にまつわるちょっとしたエピソードがあります。
〝杉本寺に面している道路を金沢街道といいます。当時、金沢街道を馬で通ると落馬する者が絶えなかったそうです。そこで秘仏として扱われている十一面観音様のうち、行基がつくった仏像に建長寺を建立した大覚禅師が袈裟(けさ)を被せると落馬事故がなくなった〟
このことから、「覆面観音」・「下馬観音」とも呼ばれるそうです。
このほかにも、杉本寺の由来といわれているエピソードがあります。1189年、寺が火事になり、観音像自身が杉の木の下〈杉元〉に避難したことから、杉本といわれているそうです。
鐘楼堂
杉本寺には立派な鐘が設けられている鐘楼堂があるのですが、12月31日の大みそかには、除夜の鐘をつくことができます。先着108名で、25時閉門です。
熊野権現堂・白山権現堂
和歌山県の白山と熊野三山に祀られる神様が、仏の姿でお迎えできるように用意したお堂です。日本は元来、神を信仰の対象としていましたが、仏教が輸入されたことで神と仏が混同しがちな文化でした。権現の「権」とは、「仮の」という意味なので、「仮に表す」ということになります。
大蔵弁財天堂
財の神様である弁天様をお祀りしているお堂です。仁王門を通り正面に苔の階段を眺めた右手側にあります。紅一点の七福神です。お堂の隣にある小さな池も神秘的です。
七地蔵尊様
庭に7体のお地蔵さまをお祀りしています。向かって右の1体だけサイズが大きいことがわかりますが「身代わり地蔵」です。こちらの身代わり地蔵にもエピソードがあります。
〝杉本寺は、もともと杉本城でした。築城したのが杉本太郎義宗という平安時代の武将ですが、三浦一族〈杉本太郎義宗は、三浦義明の長男〉による内部抗争で、杉本太郎義宗に放たれた矢を、7地蔵の内1体が身代わりとなった〟このことから「身代わり地蔵」と呼ばれるようになりました。
五輪塔
地蔵尊のとなりには供養塔があります。杉本太郎義宗により築城された杉本城ですが、北畠顕家〈きたばたけあきいえ〉により落城されます。北畠家による鎌倉攻めにより亡くなった方々の供養塔です。
杉本寺に咲く季節の花
杉本寺で咲く四季折々の花をまとめました。
- 春:桜・菖蒲・椿・ツツジ
- 夏:紫陽花・百日紅・イワタバコ・ホタルブクロ
- 秋:銀杏・紅葉・酔芙蓉・彼岸花
- 冬:梅・山茶花・千両・水仙
【2023年】杉本寺のイベント
杉本寺では様々なイベントがおこなわれます。なかでもビッグイベントといえるのが「四万六千日祭」です。8月10日に参拝することで、46000日分の参拝をしたご利益があるそうです。
なかには「坂東三十三観音巡りの初日を四万六千日祭に合わせる」という猛者もいます。坂東三十三観音巡りのスタート地点が「杉本寺」なので、時間がある方はチャレンジしてみてもいいのでは?
- 【1/1】新年大護摩供 00:00~
- 【1/18】初観音大護摩供 13:30~
- 【2/3】節分会大護摩供 13:30~
- 【4/8】灌仏会
- 【8/10】四万六千日祭 10:00~
- 【12/31】除夜の鐘
坂東三十三観音のスタート地点
坂東三十三観音とは、関東エリアをめぐるお遍路のことです。杉本寺は拠点であると同時に、スタート地点でもあります。
そもそもお遍路とは、願いをかなえるための修行のこと。1つの願いを想い描き、その願いとともに拠点をめぐることで、願いがかなうとされています。
お遍路の拠点となっている杉本寺ではお遍路グッズも用意しているので、参拝時にはお目にかけてみてください。
鎌倉二十四地蔵尊の4番目と6番目の拠点
鎌倉二十四地蔵尊は、鎌倉市内に安置されているお地蔵さんをめぐるお遍路のことです。杉本寺は、4番目と6番目が拠点となっています。
坂東三十三観音をはじめ、お遍路の拠点となっている杉本寺では、御朱印の種類もお遍路ごとに用意されているのでかなり豊富。
1ヶ所を除いて鎌倉市内にあることから、ビギナーさんでも参加しやすいお遍路です。
杉本寺のお守り・御朱印・御朱印帳
杉本寺のおみくじとお守り
何かをはじめるならとりあえず持っておきたい「発願成就守」をはじめ、愛らしい表情の「身代わり地蔵お守り」、坂東三十三観音のスタート地点にふさわしい「わらじ守り」などユーモアでかわいいアイテムも。
一番人気は杉本寺の絵が入った肌守りです。おみくじや絵馬もあります。
- お守り6種
- 熊手1種
- 鉛筆1種
- 絵馬2種
杉本寺の御朱印帳は全5種類!
杉本寺で購入できる御朱印帳は全5種類あるのですが、全て「坂東三十三観音霊場納境帳」として用意されています。通常の御朱印もいただけますが、「坂東三十三観音」にも対応している唯一の御朱印帳なので、ご参拝の機会がある方はぜひ。
- 金襴
- 朱
- 紺
- 茶
- 緑
杉本寺の御朱印は全6種類
杉本寺では社務所にて御朱印をいただけます。初穂料は500円で、営業時間は8:30~16:30でとなっていますので、御朱印は営業時間内に授かりに行きましょう!
1. 通常の御朱印
2. 坂東三十三観音〈第1番〉
「たのみある しるべなりけり 杉本の ちかいはすえの 世にもかわらじ」
3. 鎌倉二十四地蔵尊〈第4番〉
4. 鎌倉二十四地蔵尊〈第6番〉
5. 鎌倉三十三観音霊場〈第1番〉
6. 弘法大師相模二十一ヶ所霊場〈第2番〉
※鎌倉33観音霊場・坂東33観音霊場 第1番なので、「発願印」を貰うことができます。
杉本寺のアクセス方法・拝観料・営業時間
住所鎌倉市二階堂903電話番号0467-22-3463拝観時間午前9時~午後16時まで
※正月初頭は参拝時間を延長
12/31 - 11:00~25:00
1/1~1/3 - 8:00~16:00拝観料大人:300円、中学生:200円、小学生:100円定休日なし公式ホームページHP### 杉本寺へのアクセス方法
鎌倉駅からバスでのアクセス
1. JR鎌倉駅・東口5番のバス停で待機 2. 鎌23・鎌24・鎌36のバスに乗車 3. 「杉本観音」で下車 4. 徒歩数分で「杉本寺」に到着
鎌倉駅からは徒歩だと30分程度ですので、バスがおすすめです。
車でのアクセス
駐車場はありません。「鎌倉宮」付近に市営駐車場があります。徒歩数分程度のところです。
自転車でアクセス
鎌倉駅東口を右折すると、スタバと線路の間に鎌倉レンタサイクル駅前店があります。
杉本寺から報告寺までのアクセス
杉本寺から竹林で有名な報告寺までは徒歩5分程度です。金沢街道を横浜側(鎌倉駅を背に左)に進むと報告寺入り口の交差点が見えてくるので、右に入ると見えてきます。