古民家を宿に再生 「古座川の家」プロジェクト始動、和歌山県古座川町

古民家をゲストハウスに再生している岩倉昂史さん(右)と田堀穣也さん=和歌山県古座川町長追で

 和歌山県古座川町で古民家をゲストハウスに再生する「古座川の家」プロジェクトが動き出している。町には多くの観光客が訪れるが、宿泊施設は少ない。一方で空き家は増え続けている。宿泊施設に活用することで、二つの課題を同時に解消する。

 手がけているのは、いずれも同町在住でデザイン会社社長の岩倉昂史さん(29)と「道の駅 一枚岩」を運営する田堀穣也さん(36)。岩倉さんが経営プランを立て、田堀さんが管理、運営などを担当している。受け付け業務は「道の駅」が担う。

 京都府からIターンした岩倉さんは「地元の友達が子ども連れで遊びに来てくれても、泊まってもらう場所がなかなかない」と感じていた。カヌーやアユ釣りで古座川町を訪れる人に調査すると、串本町や那智勝浦町だけでなく、車で1時間以上離れた白浜町に宿泊している人も多いという。

 そこで目を付けたのが、町内各地区にある空き家だった。田堀さんは「使っていない古民家がごろごろある。中にはもったいない物件も多い」と指摘する。所有者と交渉して借り受け、水回りなどを改修して宿にしている。最初は交渉が一番の難関と考えていたが、プロジェクトが動き出すと「うちも活用してほしい」と要望も出てきた。

 ゲストハウス「古座川の家」は1棟貸し。現在、長追と高瀬に1軒ずつある。いずれも昔ながらの和風の建物。付近に商店や飲食店はないが、施設には冷蔵庫や調理器具、食器などを備え付けている。バーベキューセットの貸し出しも予定している。

 川に近く、レジャーの拠点となるだけでなく、長追の施設はネット環境も備えている。立地や建物の条件に合わせ個性を持たせ、10軒に増やしたいという。

 岩倉さんは「長期滞在して、古座川のほとりを歩いてほしい。車で通り過ぎるだけでは気付かない自然の魅力が味わえる」、田堀さんは「管理には手間がかかる。主婦や高齢者のパート、副業したい若者に担ってもらい、地域の雇用につなげたい。観光客だけでなく、地元にも喜ばれる『家』にしたい」と話している。

古民家を改修したゲストハウス室内

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