最近増えている電気自動車はどんな仕組みで走行している?【すごい物理の話】

電気自動車の面白い仕組み

自動車の燃料は、ガソリンや軽油から、ガソリンと電気を合わせたハイブリッド、EV、燃料電池(水素)、バイオ燃料、合成燃料など脱炭素にシフトしつつあります。中でも電気自動車EV(Electric Vehicle)が一歩先んじたトレンドのようです。そこで、EVはどんな仕組みで走るのかを考えてみましょう。

EVとは、ガソリンエンジンをモーターに、燃料をバッテリーに、燃料噴射コントロールを電流制御に、給油システムを充電システムに変えたものとなります。ただし、車の根本原理に違いはありません。自動車の仕組みそのものに違いはありませんが、ガソリンエンジン車ではピストンシリンダでつくり出す運動が往復運動なので、それを回転運動に変換する機構が必要となります。また、燃焼をコントロールする機構はかなり複雑なため、車全体の構成部品点数は約3万点になるほどです。

これに対し、EVでは動力を生み出すのはモーターなので、もともと回転運動をつくり出します。モーターは磁界の中で電線に電流を流すと「フレミングの左手の法則」で知られる力を回転力として使います。モーターのトルクは回転半径にその力を掛けたものですからトルクは回転半径、磁界の強さ(磁束密度:単位はテスラ)と電流に比例します。

また、EVはプラモデル車と同様に部品点数が簡略化できる利点があります。モーターの回転数を変化させるのは、電子回路で行なうので全体の構成部品は約2万点と少なくでき、走行システムもプラモデル同様シンプルなものとなります。問題はバッテリーです。充電にかかる時間と1回の充電でどのくらい距離を走れるか、充電のインフラ整備など、運用していくうえで解決しなければならないことが多くあります。もともと電気をつくるのは発電所ですが、SDGsの時代、自然への負荷を減らしつつ電気使用量に対して十分な発電量を確保しなければなりません。電力問題は、EVを普及させるための開発自体より、なお深刻かと思われます。開発されたものには、すべて「光と陰」がつきまとっているので、そうした面にも視点を向けておきたいものです。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』著/望月修

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』
著:望月修

物理学は、物質の本質と物の理(ことわり)を追究する学問です。文明発展の根底には物理学の考えが息づいています。私たちの生活の周辺を見渡しただけでも、明かりが部屋を照らし、移動するために電車のモーターが稼働し、スマートフォンの基板には半導体が使われ、私たちが過ごす家やビルも台風や地震にも倒れないように設計されています。これらすべてのことが物理学によって見出された法則に従って成り立ち、物理学は工学をはじめ、生命科学、生物学、情報科学といった、さまざまな分野と連携しています。……料理、キッチン、トイレ、通勤電車、自動車、飛行機、ロケット、スポーツ、建築物、地震、火山噴火、温暖化、自然、宇宙まで、生活に活かされているもの、また人類と科学技術の進歩に直結するような「物理」を取り上げて、わかりやすく図解で紹介。興味深い、役立つ物理の話が満載の一冊。あらゆる物事の原理やしくみが基本から応用(実用)まで理解できます!

© 株式会社日本文芸社