新幹線「おでこ」に職人技 ハンマー1本で生む流線形

山下工業所が手がける新幹線車両の先頭部分=2014年4月、山口県下松市(同社提供)

 新幹線の「おでこ」と呼ばれる車両の先頭部分。美しい流線形の多くは、職人の手仕事によって生み出される。アルミ板をハンマー1本でたたく「打ち出し板金」で、山口県下松市にはこの技術を持つ職人を抱える会社がある。60年前の創業時から約350両を手がけたベテランや、背中を追う若きリーダーら約30人が、機械化の波を感じつつ、日々腕を磨く。

 職人がハンマーでアルミ板をリズム良く打つと、周囲に鋭い金属音が響く。板を回しながら続けるうちに、徐々に膨らみ、丸みを帯びていく。下松市にある「山下工業所」の風景だ。

 東海道新幹線開通前年の1963年創業。鉄道関連の中小企業が軒を連ねる下松で、初代の「0系」に始まり、北陸新幹線を走る「E7系」まで、新幹線の先頭部分を数多く世に送り出した。

 ほとんどに関わったのが藤井洋征さん(78)。板をたたく「打数」が他の職人より少ないのに、狙ったとおりに曲げられる高度な技術を身につけた。2010年には「現代の名工」に選ばれ、今も週2、3回足を運んでは若手に助言し相談に乗っている。

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