北海道・砂川発の化粧品メーカー「SHIRO」新工場に宿泊施設も

今回の特集は、化粧品メーカー「SHIRO」。北海道・砂川発祥で、国内外に29店舗を展開。売り上げを伸ばし続けている。

【創業の地に工場を新設 こだわりは“開かれた工場”】

SHIROが、創業の地砂川にことし4月にオープンしたのが「みんなの工場」。砂川にもともとあった工場の機能を移転、約14億円を投じて新築した。増え続ける需要に対応するため、生産能力はこれまでの4倍、毎月最大80万個が製造可能に。2900平方メートルほどの施設内には、化粧品を作る工場と見学や買物を楽しむことができる一般の人たち向けのスペースが併設されている。

香りづくりを体験できるブレンダーラボは、オープン直後には3時間待ちの行列ができた大人気の体験コーナーだ。オリジナルの化粧品を工場と同じ製法で作ることができる。選べる香りは8種類。定番のものや季節限定のものの中からひとつを選んで自分好みの一品を作ることができる。

工場内は全面ガラス張り。単に製造能力を増やしただけでなく、製品を手作業で作る様子が間近に見られるようになっている。

特徴的なのが、その原料。原料はガゴメ昆布にラワンブキ。取り組むのは、食品由来の化粧品づくりだ。

みんなの工場のコンセプトは「居心地の良い場所」。併設のカフェはゆったりとした雰囲気を演出し、地域の食材で作った料理を提供。ゆくゆくは自社農園で作った食材も出してくという。

【成長のきっかけは“違和感” 素材へのこだわりへ】

SHIROの前身は、1989年設立のローレル。土産物の製造卸を手掛けていた。1990年代の終わり頃から依頼を受けて他社の化粧品を作るOEM=受託製造を手掛けるようになった。SHIROのものづくりの原点は、この頃に芽生えた。

2001年に経営を引き継いだ今井会長。「OEMをやっていると、すごく大きいタンクに『表示のために』スポイト一滴でいいから成分を入れてくれと言われることがあった。そこに違和感があった」と振り返る。その違和感から有効成分をたっぷりと含んだ化粧品づくりを目指すに至った。

原料に選んだのは、フキ。有効成分を後から加える作り方ではなく、成分を丸ごとい生かすことができる化粧品づくりに舵を切った。今につながる「素材」重視のものづくりの原点だ。そのほかにもガゴメ昆布を使った化粧品も製造。廃棄されてしまう酒粕も有効活用している。

【化粧品の枠を飛び出す 共通点は“素材へのこだわり”】

長沼町のマオイ地区で4月に行われた地鎮祭。SHIROがこの地で建設する宿泊施設「メゾンシロ」の工事の安全を願い、関係者が集まった。

施設は木造2階建て、200平方メートルほど。天然の湧き水で植物を蒸溜できる設備やサウナを備え、果物やハーブを収穫できる庭園も備える。4人まで宿泊可能。オープンは来年春の予定だ。

使用する木材は、一般的には建築に適さないとされる細くて小さな間伐材ばかり。化粧品づくりで培った素材重視の方針を、建築の分野でも体現しようという試みだ。

使っているのは去年の秋に北海道で伐採された間伐材。設計や工事を行う会社と共同で細く小さな間伐材ばかりを使った施設づくりに挑戦する。

SHIROのこれからの目標は、本来は廃棄される素材を使った施設づくりと、施設を核とした地域振興。施設づくりと化粧品づくりの原点は同じだというのが今井会長の考え方だ。

素材へのこだわり、環境への配慮、ものづくりへのこだわり。これらを全て実現させているからこそ企業の成長にもつながっている。今後の展開にも期待したい。
(2023年6月17日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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